第38話
二度、三度と放たれた閃光が押し寄せる魔王軍をあっという間に切り崩していく。
四度目の神罰を食らわせたころには、もうほとんど戦場で動く魔物はいなくなっていた。
残った奴らは、敗走して戦場からいなくなってしまったらしい。
「ざまぁ、みやがれ……!」
『聖女出力低下。身体構成組織の摩耗を検知。強制シャットダウン開始』
例の声の後ろでは、けたたましい音が鳴っている。
さて、アタシの身体がどうしたって?
ひどく疲れたのは確かだけど。
「セイラ!」
倒れそうになるアタシをエルムスが抱き止める。
「勝った……!」
「勝ったぞー!」
「聖女万歳!」
周囲から歓声が上がる中、心配そうなエルムスに笑ってやる。
「ちょっと疲れちまったよ」
「あれだけの神威を顕わせばそうもなりますよ。お疲れさまでした」
エルムスがアタシの頬を撫でる。
戦場のど真ん中だっていうのに、いまにもキスしてきそうだ。
「……セイラ殿!」
おっと、お邪魔虫め。
もう少し気を遣ってゆっくりに来てくれないか?
「ご無事でしたか!」
「おう。アタシは間に合ったか?」
「はい。多くの兵が命が命を拾いました」
そりゃよかった。
ここまで来た意味があったってものだ。
「四天王をも退けるとは……!」
「ありゃ、エルムスがやったんだ」
「アルフィンドール卿が……? 噂は本当だったのですね」
「噂?」
そう聞き返すが、モールデン伯爵は口をつぐむ。
ふと見ると、隣でエルムスが口に指を立てていた。
「エルムス……。アタシに隠してることがあるね?」
「もちろん。いっぺんに僕の事を語るのは無理って話です」
「なら、噂ってのは?」
「僕の出自に関することですよ。あまりいいものではないです」
エルムスの出自?
家名にまつわるものなら貴族のいざこざか?
「いずれ、酒の肴にでもお話しますよ」
「……わーったよ。約束だからな?」
そうアタシが苦笑した瞬間、脳内で例の声がけたたましい音を発生させた。




