〈プロローグ〉
新しく書いてみました!!
はじめましての方も、はじめましてじゃない方も、読んでくれると幸いです!!
4つの大陸の中で1番大きいウール大陸の中心部には、“魔樹の森”と呼ばれる大きな森が存在している。“魔樹の森”は、大陸の中では1番小さいウェルコ大陸より一回り程大きく、多くの魔物が住んでいる“魔物の森”の1つだ。強力な魔物が住み着き、大きいが故に何処の国にも属さず、だからこそ訪れる人は少なく、魔物たちにとっては楽園のような場所だった。
その“魔樹の森”の奥深くに、一対の狼の番がいた。狼と言っても、普通のウルフと違って、大きさは5メートルを超えている。1匹、いや1頭と言ったほうがいいだろうか。夜を切り取ったかのような真っ黒な毛並みに、血のように赤い鋭い眼。伝説の獣、ケルベロスである。そのケルベロスに寄り添うようにして、ケルベロスより少し小さい狼が歩いている。月の光のような銀毛と、氷のような透き通った水色の瞳の狼だ。こちらも伝説の獣、フェンリルだ。
この2頭は、長い間森を彷徨い歩いていた。そしてようやく居座ったのは、1つの洞窟だった。奥深くまで続いていて、そこには多くの種類の生き物が住み着いていた。その洞窟の使われていない一角に居を据えたのだ。
住むことを決めて、すぐにケルベロスは行動に移った。森中から藁や柔らかい枯れ葉を集め、巣に持って帰っては寝床を作った。寝床を作り終わっても、多くの枯れ葉を持ち帰り、隅に山にした。
その間フェンリルはと言うと、洞窟の中に倒れ込んでいた。寝床ができてからはそこを満足のいくまで一心不乱に整え、終わったらそこにどっしりとまるで主のように伏せた。そんなフェンリルのもとに、ケルベロスは毎日毎日、餌となる魔獣を捕えては、巣へ持ち帰っていた。肉を消化に言いように噛み砕き、懸命にフェンリルの世話をやいた。
ある日のことだった。フェンリルは急にのそりと立ち上がり、ハッハッと息荒く、寝床をグルグルと回り始めた。洞窟中のものたちが、フェンリルのいる巣穴へとかけていく。
獲物を取りに行っていたケルベロスも異変を感じ取り、走って洞窟へと帰ってきた。巣穴の前は洞窟に住む獣たちに覆い尽くされていたが、ケルベロスが帰ってきたのに気づいて、道を開けていく。フェンリルは鼻を鳴らしてケルベロスを迎え、また寝床を回りだす。ケルベロスは枯れ葉の山の前に座って鼻を鳴らすが、何もしないでその場で足踏みをするに留めた。
どれくらい経っただろうか。フェンリルの動きが速くなり、鳴き声を上げ出した。フェンリルの息が荒くなる。そして―――
キュンキュン
フェンリルの足元から小さな鳴き声が聞こえてきた。すると、巣穴の前にいた獣たちの中から、1匹の猿が出てきた。グレートフォレストモンキーだ。別名“森の賢者”とも呼ばれるその猿の手は大きな木の実の殻を持ち、中には水が入っている。グレートフォレストモンキーは、フェンリルの足元からサッと赤ん坊狼を取り上げ、水で洗って寝床とは別に枯れ葉を新しく敷き詰め、その上へと置いた。
それから数時間も経たないうちにまた1匹赤ん坊狼が生まれ、同じようにグレートフォレストモンキーに取り上げられて枯れ葉の上に置かれた。
そして朝日が昇る頃。またフェンリルの息が荒くなる。しかし、いくら経っても生まれない。ケルベロスも思わず喉から声が漏れる。グレートフォレストモンキーはフェンリルに近づくと、手を差し入れ、懸命に赤ん坊狼を取り上げようとする。
朝日がすでに登り終わり、あと数時間もしないうちに昼になるというとき。ようやく赤ん坊狼が生み落とされた。グレートフォレストモンキーは急いで被っていた膜を取るが、赤ん坊狼からは鳴き声が聞こえない。洞窟内に緊張が走る。グレートフォレストモンキーは水で汚れを落とし、お尻を叩くが、鳴く気配はない。喉に指を突っ込み、息ができるように喉を広げる。すると、小さく咳き込み声が聞こえて、口から液体が吐き出される。洞窟内にたくさんの歓声が響きわたる。必死に足を踏ん張り、赤ん坊狼を見守っていたフェンリルも、気が抜けたのか、寝床に倒れ込む。
生まれたのは、3匹の赤ん坊狼だった。グレートフォレストモンキーに抱かれ、赤ん坊狼はフェンリルの側に降ろされた。赤ん坊狼たちは、元気にフェンリルに母乳をねだる。その間に、血や羊水などで汚れた寝床を、洞窟の獣たちが協力して新しく枯れ葉を敷き詰めてくれた。
獣たちが自分の巣に戻ると、ケルベロスはようやくフェンリルのもとへと向かった。フェンリルと鼻を擦り合わせ、赤ん坊狼たちを見やる。1匹、押し出された赤ん坊狼がいたため、鼻で押してやる。そして、また母乳を求める赤ん坊狼の姿を見て、フェンリルとケルベロスは優しく瞳を細めた。
次回からは主人公視点で書く予定です。
主人公は一体誰でしょう?