ゲンガー家の終末
「おはようございます、カナさん」
ある朝、私はカナさんに電話をかけた。
《《《――「おはようございます、在都さん。また厄介事に巻き込まれてしまったそうですね」――》》》
カナさんは苦笑いする。
「巻き込まれたのか、巻き起こしたのか、今の私には判然としませんが。ところで、今、お時間は大丈夫ですか?」
《《《――「ええ、ちょうど一段落したところです」――》》》
「カナさんには、お礼と謝罪をしなければなりません。何れもコートの件ですが。修繕して下さり、ありがとうございました。そちらを発った時は、バタバタしていて感謝の言葉もろくに言えず、ごめんなさい」
《《《――「仕方ありませんよ。急な予定変更でしたから」――》》》
「そう言って下さると助かります。それでは」
私がこの場所での生活を始めてから、五日が過ぎだ。
ハウプトマンはひたすら捜索を続けるばかりで、このまま奴等を泳がせておいても収穫がなさそうだから、ダンテ様は傭兵に標的の破壊命令をお出しになるそうだ。あの鉄人共がいなくなったら、私がここにいる必要もなくなるので、元の営みに回帰しなければならない。それ故、執筆の捗るここでの暮らしとも、もうじきお別れだ。
おやつの時間に差しかかろうとしている時分に、ダンテ様の部下から通信が入った。
《《《――「在都さん。そこから五百㍍離れた所で、傭兵がハウプトマン一体と交戦中。応援願えますか?」――》》》
「了解しました。すぐ行きます」
私は南部大型自動拳銃甲型を片手に外へ飛び出した。