表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オルガンコード  作者: 木葉 音疏
未来からやって来たのはマーティではなくビフでした。
17/37

ゲンガーさん家は大家族。

 しばらくして米蔵が到着した。洪庵殿がダンテ様に通報したらしい。

「事後処理は我々にお任せを。それよりも、芸津がチャット・ルームを用意していますから、そちらに繋いで下さい」

 言われた通り、私達はダンテ様をホストとするチャット・ルームにアクセスした。

チャット・ルームはインターネット上に創られる仮想現実バーチャル・リアリティーの一種である。

「昨日に続きとんだ災難だな、在都君」

「まったくです。映画になりそうなレベルですよ」

「にしても、拳銃でハウプトマンに立ち向かうとは、無茶をする」

「街の人に危害を加えられたら大変ですから。動きを封じて、洪庵殿に解析してもらうつもりだったんですが、自爆されてしまいました」

「怪我は?」

「わしは無事だが、彼はー……」

「腹部に一発やられました。後で病院に行きます」

「そうか。無茶はしないでくれよ」

「肝に銘じておきます」

「さて、君達を襲ったのは、地球国軍のC級量産型対人用人型戦闘ロボット『ハウプトマン』だ」

「私は軍に目を付けられるような覚えはないんですがね」

「まあこれを見てくれ」

 映像が現れる。

「これは、わしの研究所じゃないか」

 タイム・マシンのある部屋だ。時刻は今から一時間前。

 すると、タイム・マシンにデロリアン・ゲートが発現した。中から出て来たのは――、

「そんな!?」

「なんということだ……」

 三体の、ハウプトマン。

「彼等は三十分間、この部屋に居続ける。そして三十分後、」

 三体の殺人兵器は部屋を出る。ここで映像が切り替わって、三体の歩く廊下が映される。そこで、彼等は研究所で留守番をしていた一体のヒューマノイドと遭遇する。

「あなた達は、何者ですか……?」

 ヒューマノイドと言ってもほとんど女の人である。

「ヴェルヌ……」

 映像ビデオを見ながら洪庵殿が呟く。きっとあのヒューマノイドの名前だろう。

「銃を下ろしてください」

 ヴェルヌがハウプトマンに近づこうとしたその時、一体のハウプトマンがプラズマ・ガンで彼女の全身をハチの巣にした。

「その後、三体は研究所を出た」

「私達を襲ったのは、そのうちの一体というわけですか」

 私は渋面する洪庵殿を横目で見ながら、ダンテ様と意思疎通コミュニケーションを行う。

「ああ、彼等の目的を探るために泳がせていたんだが、まさか二人を襲うとはな。これは私の責任だ。本当に申し訳ない」

「そんなことより、民間人に被害が出たらどうするんです!?」

「それなんだがねぇ……。これを見てくれ」

 二枚の写真が表示される。それぞれ一体ずつ、ハウプトマンが撮影されている。ハウプトマンの周りには、数人の一般人が。

「一分前の写真だ。今のところ、ハウプトマンが襲ったのは、ヴェルヌと君達だけだ。街の人々にはいっさい手を出していない」

 ハウプトマンがヴェルヌを攻撃したのは、ヴェルヌから自分達への敵意を感じ取ったからだろう。

「つまり、彼等の標的は、私か洪庵殿のどちらか、もしくはその両方、ということですか?」

「そのようだ。しかし念のため、いつ暴れても早急な対応ができるように、各個体に傭兵をつけた」

「傭兵ですか?」

「知っての通り、タイム・マシンの研究は、大統領の許可を得てのことであるが、極秘事項だ。総統殿ですら知らないはずだ」

 大統領は世界政府の首脳トップ、即ちこの星で最も権力を有する者だ。

 総統とは、各州を統治する役職である。

「警察や軍の協力は得られないと? それなのに、傭兵なんか雇っていいんですか?」

「彼等にはただ、ハウプトマンが暴れたら始末するよう依頼しただけだ。タイム・マシンのことは何も教えないさ」

「でも、これで未来から私が来た理由が判明しました。ハウプトマンがタイム・マシンを使ってやって来る。それを知らせるために、未来から私が来た。そういうことでしょう」

「しかし、なぜハウプトマンに狙われるのか、という新たな謎が生まれた」

「研究所のセキュリティーが作動しなかったということは、彼等はわし等のうちの誰かのパーソナル・データを持っているということだ」

 研究所には火器を伴う厳重な防犯セキュリティーが敷かれていて、登録された者以外が無断で立ち入ると発砲されてしまうのだ。

「まさに。三体は何れも、在都君のパーソナル・データを持っていた」

「このこと、中央政府には?」

「まだ報告していない。現状で、一番怪しいのは大統領だからな」

 タイム・マシンの存在を認知しているのは、私と洪庵殿、そして米蔵の一部の職員と、大統領、及びその近辺の人物だけだ。よって、タイム・マシンでハウプトマンを送ったのも、このうちの誰かである可能性が高いのだが、私と洪庵殿はもちろんのこと、ダンテ様が私達を襲うなどあり得ない。加えて、ダンテ様の部下はダンテ様に忠実なので、ダンテ様の意志を無視して事を起こすとは考えにくい。となると、残るのは大統領なのだ。

「これから、ハウプトマンをどうするんですか?」

「しばらく泳がせておこうと思う。もしかしたら、奴等がここへ来た理由は、他にもあるかもしれないからな。無論、誰かに危険が及ぶようであれば、速やかに始末するが」

「とはいえ、狙われる身である以上、ボディーガードを続けることはできませんね……」

「しばしの休暇だ。在都君にはセキュリティーを備えた場所を用意する。洪庵殿には、できるだけ研究所から出ないようにしていただきたい」

 かくして、私は取手市郊外で過ごすことになった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ