あるいは未来のトロツキー
中飛めぐみ
性別:♀
社会評価:×
年齢:十五才
職業:歌手
「はじめまして。MEGUMIです」
回転翼の風圧に髪を流されながら、MEGUMIちゃんは私にお辞儀をする。
「いったい、彼等に何をしたんです?」
「えっと~」
MEGUMIちゃんは顎に人差し指の先っぽを付け、三十度上を向いた状態になる。
「脳、の、ハッキング? をしたんです。それで、気を失っちゃったっていうか、意識を奪ったっていうか、その~……」
「なるほど」
「あ、わかりました? 良かった~」
胸を撫で下ろす彼女の後ろから、一人の男が姿を見せた。
(金色の長髪、ロリカ様の髪とよく似ている)
それが私の彼に対する第一印象だ。
梅原影人
性別:♂
社会評価:C
年齢:二十一才
職業:プロデューサー
「二人、殺したな。なぜ殺した?」
彼は唐突に言及した。
「彼等はサイボーグだった。生身の人間と違い、簡単に動きを止めることはできない。あの時は、ああするしかなかったんです……」
何を血迷ったのか、彼はいきなり鉄砲を取り出し、私の膝に向けて発射した。その衝撃で私は体勢を崩す。
「何をする!?」
「今のがゴム弾でなければ、お前は歩行できなくなっている。覚えておけ。サイボーグの足を封じられるただ一つの点だ。無益な殺生だったな」
The man with long blond hair turned his back on me.
「影人さん……。ごめんなさい、えっとぉ、サイボーグのお兄さん」
MEGUMIちゃんはおでこが膝頭にごっつんこするんじゃないかというくらい深々とお辞儀をしてから、ヘリコプターに戻ろうとする。
(彼女もナチュラルか)
「一つ、聞いていいかな? トップ・アイドルであるMEGUMIちゃんが、どうしてこんな所へ?」
この質問には、梅原影人なる男が答えた。
「決まってるだろ。ライブだよ」
そうして、二人は空高く上昇していった。
不思議と、梅原影人対して、怒りが湧かなかった。寧ろ、私の感情は自分自身に向いていた。正当防衛だと思っていた自分の行為が単なる人殺しであった事に気づかされ、私はひどい吐き気に襲われたのだ。
その後、警察と米蔵が到着した。
米蔵とは、各州において経済力を保持する集団であり、ここの首脳こそが芸津である。「米蔵」という名前の由来はマイクロソフトの「マイクロ」らしい。
《《《――「聞こえるか? 在都君。私とロリカは脱出できた。君は無事か?」――》》》
ダンテ様からの通信だ。
「はい。ご無事でなによりです」
《《《――「君もな。私は、今日のところは娘の家で過ごし、明朝、東京へ帰ることにした。君もそうしてくれ」――》》》
「そうさせていただきます」




