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俺が英雄なら世界の片隅でそっと笑うのが似合っている  作者: 銀とーゆ
第1章:空から降って来た男
2/3

女の子

絶賛追い込み執筆中

そこは一面ソロツメクサで覆われた白と緑の絨毯の上だった。内人は1人、そこに立っていた。5年前、自分が小学校6年生だった時はよくこの絨毯の上で寝たものだった。内人は寝転がり、過去の思い出に浸ることにした。


ふと顔を上げると、薄黄色のワンピースを来た少女が遠くにいる。内人はぼんやりとその少女を見つめた。だんだん近づいてくるその人を見て、内人は目を疑った。


「り、りん・・・?」


信じられないが、そこにいたのは3年前に亡くなった「りん」こと蓮野鈴華だった。茶色くて背中の真ん中あたりまで伸びる神をわずかにたなびかせ、微笑を浮かべたままこっちに近づいてくる。


「ナイト・・・。」


「なんでりんがここに・・・。」


思わず目をそらして頰をつねるが、夢にしてはどこか生々しいのは理解していた。だが現実にしては状況が唐突すぎるし、ましてや自分は・・・


「ん?俺は確か飛んでいたような??」


現実でもありえない経験をしたのを思い出し、頭が混乱してくる。そしてもう一度りんの方を向くと、りんは戸惑った顔をこちらに向ける。


「ナイト、どうしたの?」


「・・・いや、なんでもないよ。」


あるいは自分は死んだから、こうして再開できたのではないだろうか。だとしたら神様だかなんだかに感謝しなければならない。こうして再びりんに会えただけでも、もう満足だし、このまま成仏しても納得できる。


「会いたかったよ、りん」


「・・・久しぶりだね。」


お互いがお互いに微笑を向ける。りんの前では強面の顔が優しい青年の顔になる内人は、久しぶりの再開で胸の中が喜びに満たされる。と、りんの鼻から赤いものが垂れてくる。


「・・・りん、鼻血出てるぞ」


「え・・・?」


りんは言われて鼻血が出ていることを自覚したらしい。手で軽くこするが、なかなか止まらない。そして次の瞬間、りんは前のめりに倒れていく。


「お、おいりん!!」


反射的にその人を倒れる体を支えて、仰向けに寝かす。どうやら鼻血はそれ以降出ていないらしく、鼻の周りだけ真っ赤に染まっていた。


「どうした、どうしたんだよ、りん!り・・・」


ここで、りんの目が開きっぱなしなことに気がつく。虚ろな目でどこを見ているのかわからない。完全に我を失い、まるで人形のように固まっている。いや、というよりも・・・


「し、死んでる・・・。」


明らかにそこにりんはいなかった。あるのはりんの体のみ。感動の再会は、5分と経たないうちに悲劇に変わった。


「おい、何とか言ってくれよ、りん!!」


何度も揺さぶるうちに、軽くカクンと音を鳴らし、りんの首が傾く。それは、もうりんではなかった。あの日川に流され、遺体も見つからないまま海に流されたりんの体が大きくなっただけのものに過ぎない。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


最愛の少女が死んだ衝撃から叫びだした内人は、突然世界が暗転する感覚を味わった。




「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


「へいぇ!!!びびっくりしたぁ・・・」


可愛らしい少女の声にも気づかず、内人はガバッと上半身を起こしたまま呆然としている。少しずつ頭が起動し始め、自分がベッドに寝ていたことと、さっきまでのは夢だったことを理解する。


「ゆめ・・・か・・・。」


「夢みてたのはいいけど、わたしの存在にもそろそろ気づいてほしいかなぁ。」


と何か左から聞こえたので向くと、声の主、背が少し低くて可愛らしい少女が、少し困った顔でこちらに笑みを向けている。


「ここは・・・?」


「私の家よ。あなた、空を気を失ったまま、飛んでたのよ。」


「そうか、俺は確か穴に」


「確か本で読んだんだけどね、お星様を眺めていたらある日突然王子様が降ってきて、独り身の女性をもらっていくんだって!でね!なんかそんな話を思い出してね、あ!別にあなたがその王子様ってわけではないのよ!私もまだ16だし、まだお嫁に行くのは早いもの。でもいつかロマンチックな恋をしたいとは思っているのよ、私にもいつか王子様が現れてほしいなぁってお星様を見上げるのが習慣になって・・・ううん、習慣って言っても週2、いや週1よ!良いお年にもなって毎日そんなこと思ってるわけではないわ、ただちょっと、見上げるたびにそんなこと思ったり思わなかったり思っちゃったり」


突然饒舌になって顔を赤らめたり両手で顔を覆ったりしてそのうち王子様とお姫様の一人芝居に夢中になっている少女から目をそらし、内人は部屋を見渡した。あまり生活感はなく、どうやら客室のようだ。右には鏡があり、いつも通りの自分の姿がある。どうやら姿形が変わったわけはないようだ。改めてよろしくと普段は思わないことをふと思う。


平静を取り戻した今、自分は今どういう状況にあるのかを理解しようと頭をフル回転した。まず穴に吸い込まれて洗濯機に回されてから、空を飛んでいた。そのあと急に光の線が体に巻きつき、急に引っ張られて気を失ったのだ。その直前、確か引っ張られる先に人を見たような・・・


「ってことは、お前が俺を引っ張ってここに連れてきたのか?」


「わたし、お姫様らしいところ全然ないもの、あなたがわたしを見てくれるのは嬉しいけど、わたしはあなたにはふさわしくないわ。いや、君は僕が一目見て気づいた。この枯れた世界に光り咲く一輪の花だ。いや、わたしはそんな・・・。君しかいない。これは運命だ。運命だなんて・・・。」


絶賛頭の中お花畑の少女は、どうやら内人の言葉は全く耳に入っていないようだ。できればもう少し話を聞いてくれそうな人に来てほしいのだが。


「さっき声が聞こえたがぁぁ!強面青年は起きたのかぁぁ!!!」


バンと扉を開けて出て来たのは、内人よりも背のたかそうな、屈強な体つきの大男だった。人を強面と言っておきながら、本人は顔に傷があり、海賊の船長かと突っ込みたくなるような顔をしている癖に、それに似合わない白衣を着ていて、さらにそれに似合わない怒鳴り声で入ってきた。


「んあ!なんかスーが乙女モードになってるがぁ!お前何か誘惑するようなこと言ったのかぁ!」


そう言って内人の元までドタドタと駆け込み、その強面の顔を近づける。近くで見ると余計に怖くて普段何かに怖がったりすることのない内人ですらビビって全身が硬直する。もはやこっちから色々と聞き出すことは叶わなそうだ。


ともかく・・・どうやらあまり良い助っ人ではないようであることだけはわかった。



新たな登場人物は次回紹介

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