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俺が英雄なら世界の片隅でそっと笑うのが似合っている  作者: 銀とーゆ
第1章:空から降って来た男
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プロローグ〜異世界転移は突然に〜

モチベが続けば定期的に更新します。なお、ギリシア神話を参考にしますが、神話の筋に合わない内容も含まれることをご了承ください。

  誰しもが一度は経験したことがあるだろう。自分だけの世界を頭の中で構築し、自分がその世界の主人公として生きるといった妄想は、小、中学校の子供、特に少年には定番だった。


 実際俺も中学の時は、自分が勇者になって悪い魔物をやっつけたり、竜に乗って空を飛んだりする妄想で時間をつぶしたものだった。魔法を使い、技を叫び、その世界で自分は英雄になり・・・。


  まぁ、現実はそんなこと有り得ないのだが。あるとしたらゲームの中くらいだ。だからと言って俺、今野内人はゲーマーになったわけではない。高校2年になる今まで、平凡な現実を退屈に過ごさないようにするために俺は色々と努力したと思う。「基本どんな運動種目も人並み以上にこなせるし、勉学もそこそこ、顔も少し強面だが整っていると自負している。」


「みたいなナルシストな考えを浮かべている顔してるけど、あんた学校遅刻するよー。」


「いやそこまで思ってない。それに俺はやばくなったら走るタイプだ」


 と強がってみせる相手は、幼馴染の二階堂明だ。こいつは毎日チャリで登校して来るから、余裕を持って俺に勝ち誇った微笑を浮かべて去っていく。全く、俺が遅刻したのは1回しかないというのに・・・。


「・・・走るか。」


 平日の朝は毎日こんな感じだ。


「よぉ、またギリギリかよ!お前基本真面目だけどそこはかわんねぇよな・・・。」


「なに、俺はあえてギリギリで来てんだ。1人くらいその役を買って出てこそ高校生活だろ。」


「いやその理屈意味わかんないし」


 と呆れた顔でツッコミを入れて来るのはこいつも幼馴染の赤西勇気だ。こいつは俺と対照的でいつもヘラヘラしているが、機転が利いて頼りになるやつだ。ついでに俺にそのつもりはないが妙にボケツッコミの関係が成り立ってしまう。


「とにかくもうセンコー来るからさ、早く荷物おいてこいよ」


 とまぁこんな感じでいつも通りの一日が始まり、また明日も同じように過ごす・・・。


 はずだった。


 

  「今日の体育まじでしんどかったーいきなり3キロ持久走とかないだろ〜!!」


  「お前は運動神経悪いわけじゃないんだからもう少しトレーニングしろよ、少しは楽になるぞ。」


  「それよりなんか運動部に入ればいいのに、2人とも。毎日こんな早く帰ってすることあるの??」


  「ただでさえあかりちゃんと帰れる日が週3なのに俺が部活入ったらもっと減っちゃうじゃんかぁ!あ、俺があかりちゃんと同じ吹奏楽部に入ればいい??」


  「ハイ却下、部員は十分足りております。」


 はっきりと断られてしょげてる勇気の横で、俺はなんとなく空を見た。いつも通りの変わらない青空。群れをなして飛ぶ鳥。次に右を見るとそこは見慣れた公園。子供の笑い声。そのお母様方による井戸端会議。公園の隅には真っ黒な空間がポカンと・・・。


  「・・・!!!」


 いやおかしい、明らかにおかしいのが一つある。なんだこの穴みたいな空間は。


「なぁ内人ー聞いてんのかよー。」


 全く違う方を向いている内人に痺れを切らして勇気が声をかけるも、反応を示さない内人を見て、2人は内人と同じ方向に視線を向ける。


「な・・・なに、あれ・・?」


「ちょ、ちょっとヤバイ感じのもの見えるんだけど、内人さん」


 どうやら2人も見えているようだ、その「穴」はしばらくの間俺たちの目を釘付けにしていた。そのうちに少し、ほんの少し「穴」が歪んだように見えた瞬間


 ただ1人、今野内人は穴に吸い込まれていた。



  その女の子は夜空を見上げていた。星はこんなにたくさんあって、私たちはこんなにちっぽけな存在で、きっとどこかの星では誰かが私たちの星を見ているのだろう。いや、宇宙自体一つとは限らないし、もしかすると他の宇宙で私と同じような子が元気に走り回っているかもしれない。そう考えると女の子はワクワクした。もし誰かが住む星が、宇宙が、どこかにあるのなら、きっと行こう。無理じゃ無いはずだ、思い続ければ願いは叶うとおじいちゃんが言っていたのだから。


 ふと流れ星を見つけて思わず瞬きをする。その次の瞬間、流れ星はだんだん大きくなって来る・・・いや、それが流れ星のはずは無い。あくまで宇宙に漂うチリなのだから。じゃああれは一体・・・。


  「アイサイト!」


 魔法を使いまだ遠くにあるそれを拡大して見る。それは人のような形をしていた。否、人そのものだ。それに自ら飛んでいるにしては体制がおかしい。まるで気絶しているかのようにぐったりとしている。


「たいへん!!」


 女の子はすぐさま広いところへ出て、言葉を唱え始める。


「12神の1人、アルテミスよ、我に力を授け、あの空を飛ぶ人を助けたまえ!!」


 そう叫んで持ち出した矢を放つ。矢は光の線を残しながらまっすぐその人のもとへと飛んでいき、横を通り過ぎるかと思いきや、その人の周りでカーブし、光の線がその人に巻き付いた、女の子はそれを引っ張り、地上まで引き寄せた。


 その人は少年、いや少年というには強面だから青年だった。ただ年は自分とあまり変わらないように見え、余計に空を飛んでいた理由を知りたくなったが、気絶していたので聞きようも無い。


「うーん、転がしておくわけにもいかないしなあ・・・」


 結局、その青年は女の子の家に連れて帰ることにした。



  経験は無いが、まるで洗濯機の中に入れられているかのように揺れ、もはや上下左右の感覚はとうの昔に失われており、それでもまだ内人は意識を保っていた。辺りが真っ暗なまま、もう4時間位は洗濯機に回されている気がする。


「・・・死ぬ・・・のか・・・?」


 あの変な穴に入れられて、回されて、体の感覚がおかしくなってきて、それでも意識を失わないのは、内人の体と心が丈夫なだけではなく、一度意識を失ったらそのまま死ぬと頭が理解していたからだった。意識があれば生存のチャンスが見いだせるかもしれない。ただこのまま無残にも死ぬわけにはいかないと、自らの意地でほとんど保っているようなものだった。


 そうしているうちに、突然視界が開け、今度は夜の空を飛んでいた。飛んでいたと言っても、星を見る余裕もなければ、体の向きを変えることすらできない。自分がどの体制でいるのかもわからなかった。


 そのまま五分ほど飛んでいると、光の線が飛んできて、自分に巻き付いた。そのまま急激に引っ張られ、落下する感覚を味わった。遂に、死ぬのか。そう理解した途端、気を失った。



今野内人:主人公。180cm、70kg。運動もできるし器用だが時折抜けた所を見せる。性格は基本真面目で、言葉は若干堅い。好物は魚の干物。


二階堂明、赤西勇気:内人の幼馴染。正直本人達はしばらく本編に出てこないが・・・。


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