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魔物の保育園

作者: のりまき あなご

「だいぶ、人族に力を貸しているようですが?。」


フェニックスは厳しい質問に一瞬で火力が縮まった。


「それは誤解です。不老不死だの生き返りだの人族に有らぬ噂が広まってしまい迷惑しているのは、ワタシどもの方なのです。人族への尽力はあくまでもパートタイム召還との考えでした。子供を抱え時間的制約で他のお仕事の選択を選べなかったのです。」


ふむふむと頷く園長。


「あなたの本意ではなかった?。」


「勿論です。私は魔物として生まれました。主人のイフリート共々、人族の召還にも応じたことは有りますが、あくまで生活のため。主人も常々子供達の為、生活の為だと申しておりました。」


フェニックスママはイフリートパパへのホローも忘れず言葉を繰り出す。人族の聖獣ではないとの主張だった。

「末娘の『イブフェニックス』は2016才になります。まだまだオムヒパンツもとれない幼さです。此方のお助けがない限りワタシは家庭を離れられません。今後も生活のためパートタイム召還にも応じざるおえないかもません。」

脅しとも取れる言葉に園長も苦笑する。


フェニックスママは自らの言葉に興奮して再び火力を強めた羽を振るわせた。


魔神建立魔物保育園の2期生募集面接の一場面である。



魔族の数的不利が叫ばれて久しい。

人族はその圧倒的繁殖力と10億人に一人生まれる勇者の一族の力で魔族を世界から駆逐しつつあった。

この危機に至って引責辞任した前魔神から政権を受け継いだ新魔神と5族の魔王を中心とする魔族執行部は「臣民総戦力」を唱え、魔族の再結集を共同声明として呼び掛けた。

同時に魔王選挙制、執行部合議制への移行、魔族生命の尊重、臣民主権、女族参政権などこれまでの魔族の常識を打ち破る政策が次々と発表された。

これらの新魔神による魔族革命近代化に伴って設立されたのが『魔神建立魔物保育園』である。

魔族魔物には男女雄雌などない、力こそ総てなどという戯れ言は現実には則さず、女族の社会参加と子供達への教育こそ魔族の未来を救うとの新魔神の理念の具象化でもあった。



ませきかがやく♪ばくはつで~♪

たくさん♪ふっとばす♪

おも~いやりと、たすけあい~♪

みんななかよーーく♪たたかって♪

♪やっつけろ~♪

ともだち、われらマジンノコ~♪

まもの、まも~の、まものほいくえん~♪


「皆さん、お上手に歌えましたね。」

「「「あい!」」」


子供達の元気なお返事が園舎にこだまする。


「来週はいよいよお遊戯発表会です。おうちのかたがたにも皆さんのお歌を聞いてもらいましょう。今日の練習はこれでおしまいです。おむかえのじかんまで園庭で遊びましょう。月組、星組のお部屋に戻った後、園庭に集合~。」


メデューササ先生の元気なかけ声に子供達がそれぞれの教室に散っていく。


「メデューササ先生、キマイラビーちゃんの鼻水はとまったようですね。」


「ソウデスね、迷黒騎士サバン副園長。ただ一応おうちのかたにはお迎えの時、風邪気味だと伝えておきます。」


サバン副園長先生は園舎のホールの高い高い天井を見上げている。なにかに気づいてメデューササ先生も天井を見上げる。その前を子供達が列になってゾロゾロ歩いて教室に向かう。


「はいれるかしら?親御さん達。」


このホールで来週末、お遊戯発表会が行われる。


「去年は入れましたけど、今年はどうでしょう。一番大きなレッドドラゴンパパさんには魔法で縮んでもらうのもありかもしれません。」


「うーん、ま、奥さんには事前に相談してみましょう。」


先生方の心配の種は尽きることがない。



「オオネズミ217番、219番、220番ちゃんはミルクをよく飲んでますが、オオネズミ218番ちゃんは食欲がありませんでした。お熱でお休みしたオオネズミ221番ちゃんの感染性胃腸炎がうつっているかもしれません。」


「あら、どうしましょう。うちは小さな子がおおいから子供みんなにうつっては大変だわ~。」


オオネズミの奥さんは子育てのエキスパート。実はそれほど心配は、していない。


「ここの保育園ができるまではまあ、子育てで戦争のような忙しさだったわ。」が口癖である。

今はひさしぶりに魔都ダンジョン低層警備隊長の御主人と夫婦で働きに出ている。


赤ちゃん朝組のアモンカモン先生の良き相談相手でもある。


「園長先生さよおなら~。ま~たあした~。」

空中から子供の声がして園長先生は真上を見回して大きく手を振った。火の粉を飛び散らしてフェニックス母娘が帰って行く。

夕日が園長先生もみんなも保育園もオレンジに染めている。


明日も晴れそうだ。

保育園のおむかえは続いている。

園長先生はもとの世界とかわらない空につぶやいた。


「みなさん、さようなら。また、あした。」



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