入学式
書いていたら間違って消えてしまって・・・・
落ち込んでいて今ちょっと遅く投稿した。
「・・・時間良し、身だしなみ良し」
「それでは、入学式会場と向かいましょうか」
4日経って、やっと入学式の日となった。一応今日はきちんと寝坊せずに起きれた。
入学式初日からの遅刻なんてしたくないもんね。・・・・ハクロを起こすのにちょっとかかったけど。
服装は制服であるのだが、ハクロが少し細工して自分の糸を編み込んであるので、普通よりも丈夫な物になっていた。
アラクネの糸はかなり丈夫らしいからね。
入学式会場は、冒険者用学校の校庭である。
行ってみると、学科別に分かれて並んでいるのだが、様々な学科の生徒の違いがわかりやすかった。
「戦士科」の人たちは剣や斧を持っている。中にはいかにも高そうな鎧を着た人がいるけど・・・貴族の子かな?
「魔法使い科」の人たちは杖を持っていたり、眼鏡をかけている人が多いけど・・・ちょっと近寄りがたい怪しい雰囲気が。
「癒し科」 の人たちはなんか全員清楚な感じだな・・・・女子が多いけど、なんか一人だけものすごく場違いそうなほど太った男子がいるな。悪い感じはしないけど、物凄く目立つ。
「魔物使い科」・・・僕らが入る学科である。
「スライムとか連れている人も多いな」
「スライムはなぜか魔物使いの一番最初の従魔になることが多いそうですよ」
スライムを手に持っていたりする人がいる中、僕とハクロはうしっろの方に整列した。
・・・・というか、ハクロの身長がこの中で一番高いせいかこれはこれで目立つような。
「おい、あいつの連れている従魔・・・アラクネだよな?」
「蜘蛛の身体を持っているから間違いないだろうけど・・・図鑑とかに乗っているのとずいぶん違うな」
「きれいな女性にしか見えない・・・」
「大きいな・・・・私よりも」
「一瞬保護者のように見えたぞ」
なんかハクロについて言われているけど・・・ハクロよりもあっちの癒し科の人の方が目立つよね?
ハクロは注目を集めてしまていることに気が付いたのか、なんか恥ずかしそうにもじもじしているんだけど・・・可愛い。
「あーーーーーーーーーーっ!!聞いているかい新入生諸君!!」
いきなり大きな声が響き、全員耳を抑えた。
声の方を見ると、いつの間にか校庭の前にある壇上に誰かが立っていた。
シルクハットをかぶり、白と黒で半分づつ色がついた笑っているような仮面をかぶっている大きな・・・・人?
何かふよふよと浮いているようにしか見えない怪しさ100%の男か女かわからない人が立って・・・浮いていた。
声からして高いからたぶん女性。
「わたぁしぃは!!この冒険者用学校の校長でっす!!」
「あれが本当にこの学校の校長か?」
「校長らしいけど・・・ものすごく怪しいな」
全員その姿に疑問を抱いているようである。
「ライ様、あれ何ですかね・・?」
「校長って言っているけど・・」
ハクロも僕もちょっと戸惑う。怪しさ満点なのは同感だけど。
「わたぁしぃの名前はドッセンですぅのでぃ!!諸君らはドッセン校長とぅ呼んでえくだぁさぃ!!」
いちいちアクセント付けているけど・・・物凄くハイテンションな人だな。
全員あっけに取られているままである。
「それでぃわぁ!!これにて入学式の挨拶終了!!」
「「「「「早っ!?」」」」」
全員の叫びが一致した。
壇上からドッセン校長が下りた後、今度はまともそうな印象が薄そうな人が壇上に立った。
「副校長のラジです。えー、ドッセン校長に関してはもはや例年通りなので気にしなくてもいいです。嵐が過ぎ去ったとでも考えてください」
そんな認識でいいんですか。
嵐のようだったというのは全員一致した印象であったが。
「校長は先ほど通りハイテンションな人ですが・・・元は冒険者として名をはせていたことがある人です。ただ、仮面をつけているのは趣味とかではなくあがり症な本性を隠すための物です。そういうわけで、気にしないでいただけるよう我々教職員一同から皆さんにお願い申し上げます」
自分の顔を隠して、大勢の前に出ることであのテンションを維持しているという。
いや、あがり症とかいうけどあの格好の方がものすごく恥ずかしいと思うんですけど。
そのあとは、副校長による学校の説明などが行われ、後ろの方で校長が何やらちょこまか動いているのが全員気になった。
「~~~~と言うわけで、これから卒業できるまで皆さん頑張りましょう」
説明が終わり、先に教室に各学科ごとに集まることとなった。
「・・・校長のインパクトが強くて、もう副校長の姿を忘れたよ」
「同感ですよ。モンスターといってもいぐらいの奇人ですよあれ」
あれ扱いなのはひどいと思うが、まあそんな感じだし間違っていないと思う。
とにもかくにも、指定された教室へ僕らは向かった。
「ここだな」
教室に入り少し経つと、他の魔物使い科の生徒たちが入ってきた。
スライム、ゴブリン、なんかモフモフしたモンスター。
様々な従魔を連れた生徒が集まった。
「いっぱいいるな~」
「お前のスライム、でかいな」
「ゴブ助、ちょっとそこでおとなしくして」
「ふわふわ~」
「もこもこだぁ~」
ちょっと各自他の人の従魔を観察及び触らせてもらっていた。
従魔が入り混じってちょっとしたカオス空間と化しているような感じである。
「お前ら各従魔を連れて席に着け―!!」
「セキニツケ―!」
担任と思わしき教師が入ってきた。男性で、少し背が不育い印象を持ち、この人も魔物使いなのかでっかい鳥を肩に載せていた。この人の声真似をして鳥も言う。
とりあえず、指示に従って僕らは席に着いた。
「よーし、全員そろったな?わたしはこの今年度のお前ら魔物使い科を受け持つバッバンノだ!!そして、わたしの持つこの従魔は『ヤマビコインコ』というモンスターのヤマちゃんだ!!」
「ヤマチャンダ!!」
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「ヤマビコインコ」
人の声真似をするのが好きな鳥のようなモンスター。音を巧みに真似し、人が唱えた呪文も魔力が十分あるなら真似して魔法を発動させることができる。また、超音波をも発することができ、暗闇の中飛ぶこともできる。基本人を襲わない無害なモンスターである。
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「お前らは魔物使いの冒険者としてこの学校に入学したが・・・・まず、ここで質問させてもらおう」
「モラオウ」
まだみんなの自己紹介などをしていないのに、いきなりなので全員ざわめいた。
「魔物使いはモンスターを従魔にして戦わせるが・・・従魔とはどうやってできるのか」
「デキルノカー」
従魔ができる要因か・・・ハクロが従魔になったのは4歳の時だったけど、そういえばどうやって従魔ってできるんだろうか?
「はい!!」
「ボムスライムを従魔にしたやつか。では、質問に答えろ」
「コタエロー」
「モンスターと仲良くなってできます!!」
おおーと声が上がる。まあ、これが正解なような気がする。
「正解・・・と言いたいが、若干違う」
「チガウ」
え?と全員の疑問の声が上がった。
「他に正確にわかるやつはいないのか!!」
「ナイノカ!!」
「はい」
と、ハクロが手を挙げた。
「アラクネか・・・モンスターが人の言葉を理解して話すのは少し珍しいのだが、答えられるのなら問題ない。では、質問に答えろ」
「コタエロー」
この先生、ハクロに少しは驚いたけどほとんど動じていなかった・・・すごい人かもしれない。
というか、ハクロ答えられるの?
「私たちモンスターは基本的に人を襲います。ですが、魔物使いの才能を持つ者に惹かれる場合があり、その時にモンスターの方から認めていたり、心を許したりしている場合に『名前』を与えられることによって従魔となります。この際に、魔法陣が浮かび上がりますが、これが出るということによって従魔契約が完了したという事です」
・・・珍しくまじめにハクロがしゃべったな。ちょっと驚いた。
「正解だ・・・・しかしお前ら、モンスターが正解を答えられたのに、お前らが答えられないのは情けないぞ!!」
「ナサケナイゾ!!」
全員に対し、バッバンノ先生が叫ぶ。うん、熱血系教師だこの人。
「にしても、よくここまですらすら答えられたな・・・このアラクネの主はお前か」
「オマエカー」
「あ、はい」
いきなり指ししめられたので少しびくっとしてしまった。
「相当な賢いモンスターだと思うから、せっかく従魔にしたんだし大切にしておけ!!」
「オケ!!」
「はい」
相当な賢い・・・・うん、ちょっと微妙かもしれない。ハクロの常日頃の様子からそうとはおもえないような。
若干もやっとしつつ、その後は簡単な自己紹介をしたのち、それぞれの従魔の紹介、従魔にした経緯などを話した後、明日からが授業なので、解散となった。
にしても、あのヤマちゃんとかいう従魔、いちいち先生の真似をしていたな・・・。
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バッバンノは教室から出た後、従魔のヤマちゃんを肩に乗せたまま、職員室へと戻った。
「やれやれ、今年度の魔物使いは少し不安だな。基礎からたたき込まないと冒険者になた時が不安だぜ」
「フアンダゼー」
ヤマちゃんは相変わらずバッバンノの声真似をして言っている。
長根の彼の相棒であり、話し相手でもあるのだ。
「おやおや、相変わらず血の気が多いですねバッバンノ先生」
「うっせーよ、マッスラン先生」
「センセー」
バッバンノはマッスランという戦士科担当の教員に乱暴に返事した。マッスランはもと戦士冒険者で、バッバンノと組んでいたことがある。
彼も自分担当のところが終了したので、職員室に戻ってきたのであった。
穏やかな性格をしており、この学校の「安らぎの戦士」とまで呼ばれているが、現役時代は「血みどろの戦士」とまで呼ばれるほどあれていた。加齢により丸くなっただけである。
「今年の魔物使いたちはどうですかね?」
「少し才能があるやつはいるようだが、鍛えなきゃ錆びた剣と変わらんよ」
「カワランヨー」
「厳しい評価ですな。こちらは、今年度は希望ありですかな」
「けっ、恵まれているようでいいぜ全く」
「マッタクー」
バッバンノは乱暴に足を組んで座る。一方で、マッスランは正座して座っていた。
他の科目担当の先生方の方はまだ終わっていないようで、今この1年時の担当の先生はこの場にはこの二人しかいなかった。
「・・・にしても、珍しい従魔を連れているやつが入ってきたぜ」
「キタゼー」
「ほう、あのアラクネを連れている少年ですか」
寮にすでに住んでいるので、ライたちのことはすでに広まっていた。
アラクネのハクロの美しさに驚く生徒は多く、貴族のボンボンからこの学校に入ってきたやつの中には力づくでモノにしてやろうとか考えるやつもいたのだが、アラクネについて調べて止めたやつが多かったのであった。
「アラクネは糸などの武器も扱うけど、見た目に反して怪力らしいからやめたって話が多いぜ」
「オオイゼー」
「はっはっは。賢明な判断をする学生も多いようだし、今年はおもしろそうですなぁ」
その情報はすでに先生方にも入っており、何かトラブルがないかと思われていたのだが無事に入学式が終わったのでほっとしていた。
「それに、あのアラクネ・・・相当な物知りの様だぜ。例年なら質問に困るやつが多く出るのに、慌てず落ち着いて答えやがった」
「ヤガッター」
「見た目が美しく、それなりに知識があるアラクネですか。いいことではないですか」
「まぁな。あのアラクネを従えた少年には才能がありそうだが、いかんせんまだ新入生だ。鍛えてやらないとな」
「ヤラナイトナー」
「はっはっはっは、お手柔らかにしてやりなさい」
にやりと面白そうなものを見つけたような笑みを浮かべたバッバンノに対し、マッスランは笑ったのであった。
他残りの先生もいづれは登場します。
にしても・・・・珍しくハクロが答えられたな。いったいどこで知っているんだろうか・・・?