入寮
本日2話目
のんびりのんびり進んでいくよ
3日間の野宿を終え、僕らはやっと入寮が可能になった。
寮の自分に割り振られた部屋の鍵は、手続きの際についでで貰っているのである。
「家で過ごしていた時が懐かしく感じる・・・」
「まあ、安全でしたからね」
ハクロの糸を利用してぶら下がったりなどして木の上で寝たからな・・・食料とかは狩りをしたりしてなんとかなったし。
とにもかくにも、寮へ向かうことにした。
「結構大きいな」
「それだけ人が多いのですかね?」
冒険者用学校から徒歩15分、馬車の発着所近くのところに寮があった。
・・・遅刻しそうになったらハクロに乗って走ればなんとかなる距離かな?
「ライ様、今なにか思いませんでしたか?」
「なんでもないよ」
ハクロがなにか疑わしそうな目をしてきたけど、心の中読まれたかな。
「あ、今年度の入学式に出る前に入寮したいやつらか?」
寮の敷地に入ろうとしたら、誰かに呼び止められた。体が大きく見える男性のようである。
「はい、そうですが」
「俺は今年度のこの寮の室長、フーリンだ。よろしく」
さわやかそうな笑顔で言うけど、室長と言うことは先輩にあたるんだよね?
「モンスターを連れているところを見ると、君は魔物使い科希望の生徒かい?」
「はい、ライという名前です。こっちのアラクネは僕の従魔のハクロです」
「ライ様の紹介もありましたが、ハクロです」
二人でとりあえず挨拶を返した。
「もう少しで入学式だが、その前にこの寮に入ることはできる。だけどね、モンスターを連れているってことは、君は魔物使い科志望の子だろう?」
「はい」
「モンスターは専用の宿舎があるんだけど、そっちの方にいれないのかい?」
なんでも、従魔用の寮もあるらしく、部屋のスペースとかを気にする人はそっちの方に入れるらしいが・・・。
「一応一緒に過ごしますので大丈夫です」
「昔から一緒ですからね」
一応同じ部屋で過ごすつもりである。
「そうかそうか、従魔と常日頃一緒の方が良いという話もあるから別にいいと思うよ。入れるも入れないも自由さ」
どうやら別に問題はないらしい。
「だけどね、一応男子寮、女子寮と別れているからね・・・見た目がきれいなそのアラクネを連れていたら男子の嫉妬の的になるよ?俺は魔物使いでないけど、彼女を作っただけでかなりの嫉妬を喰らったし・・・」
「そうなんですか?」
一応ハクロはモンスターなんだけど・・・あ、村でも確か人気があったっけ。
というか、この人彼女いるんだ・・・・。
まあ、とりあえず世間話的な藻をした後に、ついでと言うことで寮にはいるついでに案内と説明もしてもらった。
「寮とは言っても、内部は幾つかの施設がある」
「そうなんですか?」
「そうだよ。まず、朝食・夕食をとれる食堂。昼食は学校内の食堂でとれるけど、基本的には食事はそこになるんだ」
一応毎日メニューが決まっているらしいが、味は今一つらしい。
まあ、この学校自体無料で入学ができるからそのあたりのは仕方がないと言えるけど・・・。
「次にお風呂。この男子寮・女子寮の間にある施設だが、一応男湯と女湯に分かれている。ただし、覗きなどをしようとしても無理だぞ」
・・・・この口ぶりからするに、この先輩したことがあるな。
聞いてみたら案の定したことがあるらしいが、バレた瞬間にその風呂場にいた女子全員にフルボッコにされたそうである。
しかも、決まって新入生がやるそうで今年は行って来る新入生の誰が身をもってほかの生徒に教えるのかと言う賭けもしているそうな。
「ライ様ならまだしも、他の人に見られるのは・・・・罠でも仕掛けましょうかね?」
ハクロの入浴を覗く人はいないと思うよ。アラクネの説明に「怪力」ってあったから殴られたらどうなるのか知っている人が多そうだし。・・・普段の様子を見る限り怪力って見えないけどね。
「そして最後に紹介するのが、図書室だ」
「図書室?」
本来は学校側にあったらしい。
だけど、蔵書の量が増えすぎたために地下の方に新たに設立されたらしい。
「ここで、いろいろと呼んだりできるから利用してくれ」
とにもかくにも説明が終わり、僕らはフーリン先輩にお礼を言って別れた後、自分たちに充てられた部屋へと向かった。
「ここが今日から僕らが過ごす部屋か・・・」
「案外いい感じですよね」
ベッドと机と本棚だけが家具としておかれている以外は何にもないけど、結構いい感じだと思う。
「ハクロは天井からハンモックをかけて寝るんだよね」
「ええ、中々体の大きさ的にもゆったりしていて大丈夫そうです」
ハクロが蜘蛛の部分から糸を出し、天井に張り付けた。
そこから手から出す糸でいろいろやって・・・
「できました!」
あっという間にハンモックができた。これでハクロの寝床兼住みかとなるのである。
だらりんとこれに乗って力を抜いてリラックスするのが一番のお気に入りらしいけど、確かにこのハンモックは結構居心地が良い。
とにもかくにも、やっと寝床を確保できたような気分になったのであった。
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「にしても、あれが今年の新入生の魔物使い科の一人か・・・」
寮の外にて、別の新しくここに入ってくる生徒を観察しているフーリン。
ライに寮内を案内したのは室長としての仕事みたいなことでもあったが、実は冒険者たちの科目ごとの人を見て、今年の傾向を見るという仕事をこの学校の校長から言い渡されて行っているのであった。
彼自身としては、めんどくさいかもと思いながらも一応校長からの仕事だったので請け負った。
と言うか、報酬として彼女と遊びに行くための首都内各店料金70%OFFとなる1日限定クーポンをもらえるときいてすぐにうなずいたのだが。
彼自身は戦士科で、彼女は魔法使い科で別々なのだが、仲睦まじい熱々のカップルと言うのは今年は行って来る新入生以外はすでに名物として知れ渡っているのである。
「魔物使い科は『期待大』という評価でいいかな」
彼はここに在学してすでに7年。ベテランの域でもあるのであった。
本当ならもうとっくの前に卒業できるはずなのだが、彼女が卒業できるようになるまでは自分も卒業しないという信念のもと、今も在学をしているのである。
「取りあえず、これで大体済んだかな?あと残っているのは・・・・」
手元に持ったメモに、書き込んでいくフーリン。
そんな彼の後ろには、いつの間にか彼の彼女が微笑みながら彼をいとおしそうに見ているのであった。
冒険者用学校の科目・・・細かく分けられるけど、大まかに分けるとこの4つ
「戦士科」・・・剣や斧、もしくは肉弾戦などをする冒険者用科目。脳筋馬鹿と呼ばれる人が多いようだが、中には冷静に考える人もいる。
「魔法使いもしくは魔導士科(分かれている理由は、この世界の地方によっては呼び方が違うからである)」・・・魔法を扱う冒険者用の科目、もしくは魔道具を制作してそれで冒険者として活躍しようとする人用科目。変人、奇人が多い科目とも言われている。
「癒し科」・・・回復魔法などを重点的に学びたい冒険者用科目。上記の魔法使い科と違う点としては、あまり先頭向きでない人が入り、なおかつ常識人が多い。
「魔物使い科」・・・モンスターを従魔にする魔物使い冒険者用科目。モンスター専用宿舎などがあるが、常に自分の身の周りに置いておくことが多いので、最近はその宿舎をなくそうかとも検討されている。
卒業後、冒険者となったときにはこの科目から1名づつ組んでグループとして活動する人も多い。