あんたの職業・・・考えろよ
問題を起こす人は・・・大抵決まっている。
「指名依頼って・・・またですか?」
現在、僕らはギルドの執務室に呼ばれてきていた。
なお、念のためにモッサンさんをハクロが縛り上げて天井につるしあげている。
王国の考古学者で、実はそれなりに権力も持っているらしいけど・・・ギルドの女性全員の意見で決められているのである。
見た目は幼い少女、中身はおっさんとはこういう人か。
ギルドマスターも許可していたし。
「指名依頼とは言っても・・・今回はお使いとか護衛とかそういう物ではない」
「討伐系ですか?」
「いや!!捕獲だよ!!」
天井からつるし上げられているモッサンさんが言った。
「捕獲?」
「そう、とあるモンスターの捕獲でね、何とか従魔にできればなぁ・・・と思って」
「モッサンさんって考古学者ですよね?魔物使いの才能とかあるんですか?」
モンスターを従魔にするには、魔物使いの才能がなければならないはずだけど・・・
「ない!!だが、出来るだけ傍らにいてくれればいいなぁと思えたんだよ!!」
「・・・なんとなく読めた。多分、私たちのような人の姿に近いモンスターの事ですよね」
ヤタが言うと、どうやら図星の様であった。
モッサンさん・・・ある意味不純物の塊だからねぇ・・・
「それって、私たちのような人の姿に近いモンスターかつ、モンスターを傍らに置きたいということは・・・絶対胸とか胸とか胸とかに関係してますよね」
「なにその言い方!?君たちってわたしをいったい何だと認識しているのだ!!」
「変態ロリババァエルフ」
「胸ばかり変態」
「・・・変態エルフ」
「色欲まみれの変態さんかしら」
「アホゥ」
ロウまで言うからには相当なものであった。
というか、見た目の年齢からロウとあまり変わらないので、どうやら物凄く堪えたようでずーんとモッサンさんは落ち込んだ。
落ち込むぐらいなら、性癖を治せばいいのに・・・。
とりあえず、気を取り直して指名依頼の内容を聞くことにした。
「なるほど、港町でのモンスターを釣り上げての捕獲か」
「そこにとあるモンスターが出てな・・・近隣住民や漁業関係者が困っているんだよね」
どことなく歯切れが悪そうなモッサンさん。
何かろくでもないような・・
「そのモンスターってのは?釣り上げるってことは魚のような感じだと思うんだけど・・」
まさかクラーケンとかじゃないよね?巨大イカのモンスターだしあれは無理。
「モンスターは大体・・・通常種、進化種、上位種、希少種、超希少種、幻獣種、神獣種などあるのは知っているよね」
「ええ、まあ」
条件的には、ハクロはアラクネなのに美しい見た目をしているから希少種か超希少種。ヤタは超希少種のクイーンハーピーなのは確定。ロウは・・・どうなんだろう?希少種のスライムにあたるのかな?
「でだ、今回のその困らせているモンスター・・本来なら冒険者たちが討伐すべき物なんだろうけど・・・海中では無敵、陸上でも魔法を使用して討伐が難しいモンスターなんだよ」
「モンスターが魔法を?メイジ○○とかそういう感じのですか?」
「1体だけなら何とかなりそうですけど・・・それに、陸上に出てくるなら釣り上げる必要がないのでは?」
それもそうだよね。というか、討伐すべきと言われているようなものをモッサンさんが捕獲したいというわけもわからん。いや、モッサンさんの事だからなんかわかったような・・・
「2体だ。それぞれ種族も違うし、知性が人と変わらない・・・ハクロたちの様な感じだ」
あ、これどう考えてもものすごい厄介ごとだよね。
「話によるとな・・モッサンさんが食いついてきたのもわかるが、それぞれ『スキュラ』『水龍』の・・・多分、希少種か超希少種だ。モッサンさんが食いついたのはスキュラの方だな」
「とんでもない奴なんですけど!?」
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『スキュラ』
人の身体を持ち、タコかイカの足を持ったモンスター。オスとメスで外見が異なるが、オスの方が派手な装飾が多い。別名「海の魔女」とも呼ばれ、様々な薬品づくりに長けていたりなどしている。モンスターにしては友好的で人に危害を加えることはほとんどないが、物凄い悪戯好き。一応人に近い見た目を持っているので羞恥心も人並みにあり、魔法で作り出した衣服を着用している。水魔法と回復魔法を得意としているのだが、希少種になると幻術系の魔法も使用可能になる。
泳ぎが得意で、水中では物凄い脅威となる。ただ、陸上では少しばかり動きが鈍い。しかし、魔法でその分補っているようである。
『水龍』
ドラゴンの中では体が細長い蛇のような見た目を持っているモンスター。その鱗は透き通るような透明さを持っているのだが、なぜか体色は美しい清らかな水色に見える。海や川、湖など様々な水場に生息しており、浄化能力を持っているので住んでいる場所は物凄いきれいな水場となる。「古代竜」クラスまでになると、人型になることも可能。
ドラゴン系統のモンスター故、自然災害クラスの力を持っているので津波を引き起こしたりできる。
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「どっちにしてもとんでもないですよ!?」
「・・・というか、スキュラはまだいいとして、水龍はシャレにならない」
モッサンさん・・・こいつらを釣り上げたいのかよ。
「ん?でもなんでその2体が一緒にいるんですか?」
「そうですよね・・・希少種とか言う以前にどちらも強力なモンスターですので、縄張り争いとかありそうですよね?」
「それが・・・どうやらまるで姉妹のように仲が良いらしくてな。しかも、どちらも悪戯好きで気が合ってしまたというか・・・」
「というか下手に手を出すと両方ともとんでもないからな」
「って、そんな依頼を受けさせようとしたんですか!」
命がいくつあっても足りないじゃん!!
ん?でもよくよく考えたらこの依頼をモッサンさんが持ってきたということは・・・・
「モッサンさん・・・もしかして・・・」
ジトッとした目でモッサンさんを僕らは見た。全員同様の考えに至ったらしい。
「いやぁ・・スキュラのほうの胸も揉んでみたくて・・・」
「「「「「やっぱりかよ!!」」」」」
その命知らずな度胸にむしろ感嘆するよ!
というか、それなら自分で捕りに行けばいいような。