スライムドラゴン 酒で倒す
なにげにでっかいネタばれ感
「あれか・・・」
僕らの目の前には、これぞドラゴンと言った感じのドラゴンの姿をしたスライムが眠っていた。
「あれが目当ての『スライムドラゴン』ですね」
以前、ゲソタッコン騒動の時に空中のゲソタッコンを焼き尽くしたドラゴンに比べると、小さいがそれでもかなりの体格である。鼻提灯出して寝ているのがどこか残念感があるな。
ドラゴンのように見えるが、それでもスライム。
体がやや半透明で透けて見えるのだ。
「スライムの倒し方の一つに核を攻撃するってのがあるけど、防御力が高すぎてできないんだよな・・・」
「そこで、酒で酔わせるってわけですけど・・・・少し疑問に思ったんですが」
「ん?何か疑問あるの?」
「スライムドラゴンの倒し方って酒を飲ませるってありますよね」
「うん」
「それ一番最初に知った人って何をしていたんでしようか?」
・・・確かに、なんか気になる。
冒険者って酒飲む人はいるけど、こういう討伐に酒を持ち込むのってないような気がするんだけど。
酒で倒せるってあることは、持ち込んで気が付いたってことだよね。
考えていると物凄いツッコミを入れたくなったので、切り替えまして。
「酒をセット」
スライムドラゴンが起きる前に、酒樽をその目の前に置く。
倒れないようにそこの部分をハクロの粘着性の高い糸で固定。
あとは隠れて・・・
「ルミナス・・」
「わかっているわよ」
パチン
鼻提灯をルミナスの矢で割る。
「グリリュウウウウ・・・」
「目を覚ましたね」
すぐにスライムドラゴンが起きる。
「ハクロ」
「了解です」
酒樽のふたを、糸で引っ張って開封。酒のにおいが立ち込める。
「グリュウウウウウ・・・・グボッツ!?」
・・・飲ませなくてもいいのか。
酒の匂いを嗅ぎつけて飲むかと思ったけど、臭いだけでKOしちゃったよ。
そのままスライムドラゴンはぶっ倒れて、鱗などはそのままで中身が溶けていく。
「軽くグロいね・・」
夢に見そうでなんか嫌だな。例えで言うなら・・・やめておこう。
何はともあれ、これで討伐完了なので残った鱗などを回収する。
ハクロに即席で風呂敷を作ってもらいその中に入れる。
意外に鱗自体は細かく軽いので楽だな。
「しかし・・・酒に弱いにもほどがあるような」
「臭いだけでKOでしたからね」
「・・・確か、酒に弱ければ弱いほど若いらしい」
「つまり、まだ子供みたいなものだったというわけね」
とりあえず、これでギルドに戻れば依頼達成かな。
「酒樽どうします?まだ残っていますけど」
「そうだね・・・結局飲まなかったし、宿でいつものお礼としてあげようかな?」
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一方、ライたちがその会話をしている頃、ギルドでは・・・
「『ババ草』、『ジジ草』確かに依頼通りです。達成ですね」
「いよっしゃぁぁぁ!!次だ次!!」
「『眼球草』本数通りですが、品質がやや劣化していますね・・・・まあ、このぐらいなら達成だよ」
「ふっぉぉぉぉぉっつ!!」
「『笑いダケ』じゃなくてこれ『鼻毛ダケ』ですよ!?」
「ふごごふほご(どおりで鼻毛が)!!」
「・・・軽く混雑というか、混戦状態デス」
「あははははは・・・予想はしていたけど、それ以上だよ」
ギルドの執務室にて、ワゼは現在の受付の状況をギルドマスターに報告していた。
書類整理をしているようだが、その量は他の職員よりも多い。
ギルドマスターだから・・・という理由もあるのだが、この状況を引き起こした原因であるギルドマスターに他のギルド職員が仕事をバレない範囲で押し付けているのである。
ま、ワゼとしてはそこはどうでもいいので別にいうつもりもないが。
というか、以前ワゼがライたちに加わる際に、モッサンさんに胸を揉まれて不快感を感じ、その人がその場にいたのはこのギルドマスターが原因だと聞いているので少々ギルドマスターを嫌っているのが主な理由だが。
魔道具でも、所有者以外の方からそういう行為をされるのは不快感があるのだ。
体は生体部品で出来ている部部があるのだが、ワゼ自身は魔道具に過ぎない。
けど、嫌なものは嫌なのである。
魔道具に自我があるというのは変な話だが、少なくともワゼは自身が魔道具だけど心はあると思えているのだ。
何はともあれ、今こうしてここに来た目的を思い出した。
「そういう事を報告しに来たのではないのでしタ」
「何か問題があったのかい?」
「既に問題だらけなような気がしますが・・・・依頼達成をする人が多くて、受付が混雑してスムーズにできまセン。解決してほしいという要望を言いに来たのデス」
なにせ、このままだとご主人様にも影響が出てしまうので何とかしてほしいのだ。
「とはいっても、受付口を増やすのは現状厳しいかな」
まあ、簡単に動かないかもしれないとういうのはワゼにとってはすでに予想済みである。
なので、素早く動いてもらえるように・・・
「・・・タンスの裏、2番目の引き出し」
「ん?」
「ベッドの下、机の裏・・・」
「え?・・・まさか」
「仮眠室の枕元・・・若い頃に自分で考えた二つ名表の場所ですヨネ?」
「な!?」
いわゆる、黒歴史というやつである。ギルドマスターのアーガレスト・・・・若い頃はいわゆる「厨二病」というものだったらしいというのをワゼはすでにその情報を入手していた。
そして、現在の彼はそのことを物凄く恥ずかしく思っているということも。
「な、何でそれを・・」
「さあ?私はただ適当に言っただけですヨ」
メイド・・・それは、ある意味恐ろしい存在だとアーガレストは身をもって学んだのであった。
なお、この都市の領主のバンブルはアーガレストのその時のことを知ってはいたが、その証拠品の場所までは知らなかったようである。
黒歴史というのは、誰もが持っているものなんですよ・・・・




