ギルドにて
数日経過!!
・・・・辺境都市ザストでの防衛戦から数日、飲み過ぎて倒れていた冒険者たちは復活していた。
ここに集められていた王国の兵士たちは、また帝国軍との戦闘のために次の拠点へ向かってすでにこの都市から出て行っていた。
ただ、ここから出ていくまでにハクロたちの隠れファンとなっていたが。
何せ、見た目が美しい女性たちだから・・・・むさくるしい男たちに比べると本当に華があるのである。
ちなみに、ロウはその中でも小さな子ども扱いで可愛がられていた。
子供好きが多かったの原因だが、ロウのような小さな少女の笑顔を守ろうと全員決心したからである。
・・・・ロウって一応スライムなのだが・・・・見た目が幼い少女だから意外に紳士が多い王国軍の兵士たちには受けたようであった。
この幼げな見た目から兵士たちを虜にできているロウ・・・成長して大人の姿になったらある意味恐ろしそうであった。
(データでは将来的な可能性はありますけどネ)
ワゼはそう思ったが、黙っていた。
ワゼの前の・・・そのワゼのメモリには似たような記録がある。ただ、なぜかロックがかかっていて詳細が引き出せないので言わないことにしたのであった。
今日はライたちは依頼でスライムの森に出かけており、ワゼはいつも通りライたちが帰ってくるまでギルドに勤めていた。
今は受付の方の仕事をしており、その前には列で並んでいる冒険者たちがずらりといる。
「この依頼ですが、薬草の指定本数以下になっていますヨ」
「そこをどうにか頼みます!!薬草系の依頼を狙っているやつが多くて手にはいりにくいんです!」
「またですカ・・・」
はあっ・・・と魔道具でもあるのに溜息を吐くワゼ。
最近、そういった簡単そうな以来の競争率が上がっており、似たようなことが多い。
・・・原因は明らかであるが。
数日前の防衛戦の際に、ハクロたちの人気は露呈していた。
それで、ここのギルドマスターがふと思いついてこのギルドに出入りする冒険者たちに伝令したのである。
『今月、依頼達成数が一番多かった冒険者の方には、お好きなギルドの正式職員と一日デートができるよ』
その知らせを聞いた途端、あっという間の冒険者たちが殺到した。
「依頼達成数が多い人」とあるので、簡単そうな依頼を受ける人が多く出て、そのせいで薬草系などが乱獲されてしまい、依頼を受けても入手ができなくなったらいしているのだ。
ただ、「正式」と書かれているので「臨時」であるワゼは対象外である。
それでも、なぜ殺到したのか。
「もう・・・だいたい私たちが目当てよね」
「受付の方々に狙いを定めている人が90%ですネ」
「残りの10%は?」
冒険者たちがデートしたいと思っているのは、このギルドの受付嬢たちである。
なにせ、出来るだけ容姿端麗な人が多いので・・・・
そのため、受付嬢たちのファンが殺到したのであった。
なお、ワゼ調べでは残りはギルドマスターや、他男性職員目当ての女性冒険者たちである。
男性が多い中で、女性も参加・・・・相当なものである。
人の欲望を見事に利用するギルドマスターに、ワゼはそのしたたかさに感嘆した。
・・・というか、人の欲望って物凄く単純ですネ。ご主人様がこういう人でなくて良かったですヨ。
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「はっくしょん!!」
「ライ様、風邪ですか?」
「いや、ちょっと今なんか噂されたような」
誰か噂話でもしたのかな?
現在、僕らは依頼のためにスライムの森に来ていた。
薬草系の依頼が大半の人に取られていたから、こういうので稼ぐしかないもん。
「『スライムドラゴンの討伐と、それから取れる鱗採取』が今回の依頼だしね」
「ドラゴンコッチ―」
ロウがいるので、何処に何のスライムがいるのかがわかっていいよね。
「というか、スライムドラゴンってドラゴンなの?スライムなの?」
「スライムって種類が多いですからね・・・年々新種が発見されてしますしわかりませんよ」
「・・・100,200、いや300以上はすでに確認されている」
「確か1万ぐらいはいっていたわよね」
どれだけ種類方法なんだろう・・・・・
想像すると、途方もないのであきらめることにした。
「スライムドラゴンは、確かドラゴンの姿のスライムですよね」
「学校で習ったやつだっけ」
「・・・・でも、ブレスを吐かないドラゴンもどき」
討伐は簡単そうだけど、問題なのはその防御力らしい。
聞いただけでも、切断不可能、魔法無効、打撃無効・・・・スライムなのに強いんですけど。
ぶっちゃけ、強さは本物のドラゴンクラス。
だが、討伐方法は非常に簡単だとか。
「討伐方法が酒を飲ませるだけか・・」
「物凄い下戸らしいわよ。それで一発KOらしいわ」
そんなモンスターの討伐方法あっていいんかい。
モンスターの中には普通に戦って討伐できるモノ以外にも特殊な討伐方法が必要なモンスターがいるそうな。
だが、その分なかなか遭遇できないという問題があるが、スライムの森でなら別だ。
「コッチ―」
ロウがいるからね。この子、スライムの森内のスライムの居場所がわかるからすごいよ。
なお、このスライムの森は先日の防衛戦でも誰も近寄らなかったので特に荒れ果てていない。
帝国軍もこの森の近くに行くのはためらわれたのであろう。
服とか溶かすスライムも多いから、裸鎧になる事態は避けたかったんでしょう。
「ハクロの糸が編み込まれているこの服がなければ僕らも来なかっただろうしね・・・」
「私の糸って今さらですけど結句便利ですよね」
「自分で言っちゃうの?」
なお、スライムドラゴン討伐の際に使用する酒はハクロが背負っている。
酒樽1つ分だからね。この大きさのもの持てるのハクロだけだし。
「この酒って物凄く安いものですけど・・・効くんですかね?」
「どんな酒でもいいらしいし、たぶん大丈夫だろう」
一応、今回の依頼が達成した際の報酬からこの酒の代金引いても充分黒字になることは確認済み。
そんなわけで僕らは森の奥に向かうのであった。
ちなみに、ヤタも足でつかんで運べるのだが、森の中なのでハクロが適任だったのでこうなった。
ケンタロスとかそういった種族がいたら便利だけどな。