防衛戦2
本日2話目
別に主人公たちは完全に参戦しないとは言っていない。
出るつもりがないといっているだけで、「つもり」ができたのである。
「ぐっ!戦況が不利ではないか!!」
陣地にて、戦況を見ていたグッヒュリーヨは怒声を挙げた。
開戦するまでは余裕があったが、いざ戦ってみると、相手はとんでもない統率力・・・いや、団結力がある。
何が原因かはわからないのだが、ともかく気合負けして帝国軍全体が総崩れしてきた。
「このままでは確実に負けてしまう!!何とか盛り返せ!!」
だが。戦況は明らかに帝国軍に不利だった。
驚異の団結力を相手にして、戦うまで余裕ムードだった帝国軍にはなすすべがない。
徐々に帝国軍の数が減っていく。
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その戦場の上空から見ている者がいた。
「・・・上空に誰も気が付いていない」
ヤタである。
護衛されているような状況がうっとおしくなり、この際ライたちは参戦することにしたのである。
だけど、戦場が混線しているので、まずは上空からということでヤタの出番となった。
「・・・終わったら、頭をなでてもらえる」
ちょっと頬を赤らめて、ライから約束されたことを思い出して行動を開始した。
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「おい!!あれを見ろ!!」
「うそっつ!?」
「ヤタさん!?」
都市側の冒険者たちが何か叫び始めた。
「なんだ?」
その声が聞こえてきたので、グッヒュリーヨは上を見上げた。
何かが急降下してきている。
黒い翼を持ち、足の爪を兵士に向け・・・・
ドガッツ!!
「・・・一応これで手加減」
蹴られた兵士が吹っ飛ばされた。
「「「「「はぁっつ!?」」」」」
帝国軍の兵士たちは全員驚いた。
いきなりの上空からの襲撃者・・・・見ると、美しい容姿をした女・・・・だが、両手が翼。
「は、ハーピーか!?」
「いや、大人の身体ということはクイーンハーピーだぞ!!」
驚く中、ヤタは翼を羽ばたかせて帝国軍に向ける。
バサッツ バサッツ バサッツ
「どわっつ!?」
物凄い強風が起き、吹き飛ばされていく。
一応、ライから「できるだけ気絶にとどめるように」と言われている。
人殺しをさせたくないのが本音だが、敵の戦力を減らす目的である。
気絶とか怪我ならば、運んで移動させる人がでる。
無駄に殺すよりも、そっちの方が相手の戦力を減らせることができるのだ。
「お前らぁァァッツ!!ヤタさんが頑張っているうちに俺らもやるぞぅつ!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっつ!!」」」」」
(・・・ちょっと加減しているから、頑張っているんじゃないよ)
ツッコミを言おうかとヤタは思ったが、こういうのは我が君が適任だったと思い直して黙った。
まあ、そんなヤタの内心の事情は分かるはずもなく、ヤタが舞い降りたことによって王国側がよりヒートアップしたのだが。
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「なんだあのモンスターは!!」
グッヒュリーヨは叫ぶ。
まさか戦場にあのようなモンスターが出てくるのは予想できなかったのだ。
いや、別にモンスターが戦場に出てこないわけではないのはわかっている。
野生のや、魔物使いが引き連れているようなそういった類が出てくる可能性もあるからだ。
だが・・・
「綺麗な女性の見た目のなんて・・・予想できるか!!」
((((その通りだよな))))
グッヒュリーヨの叫びに、その場にいた一同は同意を示した。
クイーンハーピー・・・ハーピーの超希少種であり、大人の女性の姿をしているモンスターであるのは知っている。
だが、実際に見て見っると確かに美しくて、モノにしたくなるのだが・・・明らかな実力差で兵士たちの方が負けていた。
そして、冒険者たちの盛り上がり方から見て。
「あのモンスターがやつらの士気の高さの原因か?いや、他にいるな」
あと数人は同じようなのがる可能性が高い。
こういった辺境には美人が隠れているという話は聞いたことがあるが・・・予想外すぎる。
「ん?」
気が付くと、戦場の別の一角でも動きが見えた。
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「フィンガーネット!!」
「うぁぁぁぁぁっつ!?」
「網だと!?」
手から出た糸が素早く網に作り替えられて、帝国軍兵士を捕らえる。
「どうですか!!罠を作っているうちについには網を素早く作れるようになったこの実力は!!」
網につかまった兵士たちは、その状態で周囲の冒険者たちにぼっこぼこにされた。
網を切り離し、ハクロは素早くまた新しい網を投擲し、帝国軍兵士を次々ととらえていく。
その蜘蛛の部分の背中には、ライが乗っていた。安全のために、ハクロの糸で頑丈なのを服に編み込まれてである。
「ハクロ、糸は容量あるの?」
なんとなくそこが心配なんだよね・・・糸を出し続けるのとかこういう場面では初めてだし。
「大丈夫です!!」
ハクロはぐっと親指を立て、
「ぎゃぁぁっぁあっつ!!」
「あ・・・・網と間違えてナイフを投げてしまいました・・・」
一応接近戦用に持ってきた護身用のナイフを敵兵士に投げてしまっていた。
こういったうっかりしているところは相変わらずである。
「ハクロちゃんが出てきているんだ!!俺達だって負けるかぁ!!」
「なんで私は『ちゃん』付けですか!!ヤタは『さん』なのに!!」
(・・・ちょっとヤタより精神年齢がね)
内心思ったけど、黙っておこう。
本当ならこういった戦場に出る気はなかったけど、さすがにじっとしているのもなんだったし、冒険者グループ「快進撃」の全員で出来るだけサポートに徹しますか。
なお、ワゼは宿にてまだ防御壁を張った状態である。
・・・にしても、フィンガーネットってどこかで聞いたことがある技名だよなそれ。
どこでかな・・・本来なら網で捕まえた後、ぶん回すって感じだったような。ハクロの腕力でも可能だけど、今回は敵兵士の妨害をするだけに徹底しているからね。
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「なっつ!?兵士たちが捕らえられていっているだと!!」
その様子をみて、グッヒュリーヨは叫ぶ。
モンスターのアラクネのようだが、あのような美しい見た目のは見たことがない。
モノにしたくなる感じだが、先ほどからのクイーンハーピーといい・・・
「どうやら、どちらも同じ魔物使いの従魔の様です。魔物使い本人を殺せばいいかと」
「だが、アラクネの背中に乗って守られていて、手出しができん!!」
モンスターの強さは知っている。
その中でも、アラクネなんかも強いモンスターであるのはわかっているのだ。
帝国軍内に、敗戦の兆しが出始める。
こっそりと陣地から出て逃げようとするものなどが出始め、あれよあれよという間にだんだん追い詰められてきた。
スライムによって兵士が飲み込まれて裸にされてキモイ風景になる、ダークエルフのような女が出てきて無茶苦茶な精霊魔法らしきものを飛ばしてくるなどの被害がさらに報告された。
投石器もいつの間にか破壊され、都市の別方面から攻めようとした部隊が謎のメイドによって全滅させられたという報告もあがった。
「くそう・・・一体どこで何を間違えたというのだァァァァァァァァッツ!!」
グッヒュリーヨは叫ぶ。ここまで順調だったのに、どうしてこうなったのかと思いを込めて。
・・・この日、帝国軍はこれ以上の戦闘は被害が大きくなるので続行不可能と判断。
指揮をしていた人たちが逃亡し、兵士が多く捕虜にされて王国側の勝利に終わった・・・・・
・・・果たして、この勝利がどう影響していくのか・・・・