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閑話 ワゼの務め

本日2話目

ワゼの普段の過ごし方である。

 朝早く、ライたちが目覚める前にワゼは起床する。


 現在、ライたちが宿泊し続けているこの宿『黄昏の雲』。


 ワゼは起床するとすぐに、自身のシステムのチェックをする。


 服を正し、髪も整えてまずは宿の食堂へ向かう。


 厨房の方に行くと、すでにそこで作業している人がいる。


「あら、おはようワゼちゃん」

「おはようございマス」


 この食堂の主とまで呼ばれる、この宿のオーナーであるギュスターヴさんである。


 朝早くから起き、この宿屋に宿泊している人たちに朝食を食べさせるために料理の仕込みをしているのだ。


 元冒険者であり、妻持ち子供2児の男性である。冒険者を20年ほど前に引退し、その後この宿を立ち上げたところうまいこと経営できているそうな。妻が経営での金銭管理をしっかりしているらしいけど・・・・。


 ワゼがここの宿に来てすぐ、メイドとしての仕事として朝食などを作ろうとした時にオーナーにあったのである。


 で、わけを話したら代わりに朝食の用意を手伝うことで良いと言われた。


「この野菜をみじん切りにしてくれないか?」

「いいですヨ」


 と、ワゼは素早く自身の腕を変形させて自前の包丁を取り出す。


カカカカカカカカカカ


「おー、早い早い」

「このぐらい、メイドのたしなみですのデ」


 こういった調理器具など内蔵しており、様々な調理に対応可能。体内の一部に圧縮空間魔法のような物狩り、そこに仕舞われているのだが・・・・構造としてはブラックボックスなのだ。


 交換などもできるため、ずっと接続されているわけではないらしい。


 最初、この機能を見たときに周囲に驚かれたが、今はもう慣れられた。


 というか、ワゼの調理した物はなぜか数倍もおいしくなるので、この宿の食事の評判も上がっているのである。


 中には、宿に泊まっていないのに食べに来る人も・・・・。


 調味料などは、手にはいる物から自作したり、内蔵されているものを使用したりしている。


 内蔵されているモノは、体内で生成可能なので切れることはない。ただし、自身も何か食べて食物を分解したのを再合成し直しているだけなので無限というわけではない。


 朝食の用意が済むころには、ライたちが起き始める。


 その前に素早くワゼは部屋に戻り、着替えを素早く用意する。


 洗濯してきれいになったものである。


 全員が完全に起床し、食堂へ降りる頃にはすでに朝食が食堂の机に並べられている。


 ライの方針として「皆家族」という物があるので、全員そろって朝食をとるのだ。


 グループのメンバーであるルミナスは別に合わせる必要もないのだが、やはり一緒に朝食を取りに来る。


 ワゼの見立てでは、ハクロ、ヤタ、ルミナスは確実にライに好意というか、恋慕みたいな心があると推測できる。


 だが、それを口に出すような無粋な真似はしない。メイドとして、まあ黙っておこうという・・・・というか、面白いと思っているだけである。


 全員朝食をとった後は、素早く食器洗いをする。




 ギルドへ赴き、ライたちがギルドで依頼を探している合間に、素早くギルド職員用の制服に着替える。


 ライたちが依頼を受けたりしている間、臨時的な職員としてワゼは働くことになっているのである。


 今日ライたちが受けたのは「グランドクラブ」の討伐らしい。


 たまにはとお思い、このようなモンスター討伐をするのだとか。


 ただ、ちょっとばかし遠いところの様で時間がかかるらしく、数日はここで働くことになる。


 ちなみに、ワゼは書類仕事の方を担当している。


 容姿からしても受付の方で働くことができるのだが、こういった事務仕事的なほうが性分に合っているのである。


 メイドなので、ギルド内の掃除も行ったりもする。


「ワゼさん、休憩の時間ですよ」

「了解デス」


 同僚たちとも仲良くでき、周りにもそれなりに愛想がいい。


 メイドをしているだけあって、ギルド内もきれいになっており、ちょっとしたアイドルになっていた。


 まあ、このせいでライに向く嫉妬の視線が増えてしまうのだが。器量よし、容姿良し、愛想良し・・・結構このギルドにいる人の好みに合っているのだ。


 ただし、ワゼは魔道具(マジックアイテム)。あくまで道具なので、そこまで入れ込むわけにもいかないので、それなりに自制心が働くのだ。



「おいこらぁ!!」

「なにゃとう!!」


 と、ギルド内で罵声が響く。


 どうやら、冒険者同士のいざこざらしい。


 現在、この国と隣国の戦争中らしく、ランクが高い冒険者たちが出払っており、低ランクの冒険者たちが集まっている。低ランクの中には、冒険者用学校に通わずなった者もおり、素行が悪いものが見られるのだが・・・・。



 ギルド内で騒がれるのはうるさい。


「すみません、出来るだけお静かに喧嘩してくださいませんカ?」


 ワゼはその喧嘩に少し(、、)手を出すことにした。


 ここ数日の冒険者登録などを見る限り、どうやらつい最近登録したての新人同士のようである。


 どちらも体が大きな男性で、ちょっと頭が悪そうだなとワゼは思えた。



「静かに喧嘩ってできるかよ!!」

「職員は引っ込んでろ!!」


 喧嘩に口を出されたのがどうやら二人の癪に障ったらしい。


 手を出してつかみかかろうとしたので・・・・


「よっト」

「へ?」


 その手をよけて、つかみ直し勢いを利用して地面にたたきつけた。


ずっしぃぃぃん!!


「・・・できるだけ、静かにギルドをご利用くださるようにお願いしマス」


 敵の力を利用して投げ飛ばしただけであるのだが、大柄な男性を軽々とたたきつける姿にはさすがに度肝を抜かれたのだろう。


 喧嘩していた二人は、今何が起きたのかわからず、周囲にいたほかのギルド職員や冒険者たちも唖然とする。


 まあ、ワゼ自身の純粋な力技でも押さえつけられるが、こうしてやった方が楽だと判断してやっただけであった。


「・・・お静かに喧嘩しますよネ?」

「「は、はい!!」」


 ワゼが尋ねると、喧嘩していた二人は速攻でギルドから出ていった。


わぁぁぁぁぁっつ!!と、少し遅れて歓声が上がる。


 かなりすごかったので、今頃になって歓声が出たのであった。


 冒険者という物はたくましいのだなと改めて確認したワゼであった。






 数日経ち、依頼からライたちが戻ってきた。


 宿に戻る際に、ワゼも業務を終えて帰宅に付き添う。


 着替えなどを洗濯し、ある程度落ち着いたところで宿の風呂に浸かる。


 一応、風呂に浸かれるようにできている。そうでもないと風呂掃除などができないからね。防水性能はばっちりなんですよ。


 ハクロたちも入浴してくるので、背中を流す手伝いをする。ハクロの場合、背中が上半身の人の部分と下半身の蜘蛛の部分があるのでちょっと手間がかかる。


 ヤタだと、両翼の翼を洗うにはきちんと羽の一枚一枚丁寧にする。


 ロウは・・・・ワゼが洗わなくても、自身で汚れを吸収しているようであった。


 ルミナスの場合は、背中を流すのを手伝うだけである。



 で、ライの背中をも流そうとしたが、入っているのは男湯の方である。


 魔道具(マジックアイテム)のワゼは気にしないとはいえ、その見た目は女性だから・・・と土下座されてやめさせられた。さすがにこれには困ったので、せめてと思って風呂上りには水を持っていくことにした。



 夕食時には、厨房に向かって手伝って作り、皆で食べる。



 その後、全員で集まって、明日の予定などを決めてから就寝の時間へと入る。


 ルミナスは隣の部屋だが、ライたちは同室である。


 ワゼ的には、一か所にまとまってくれればいいのだが、部屋の広さ的にはきつくなるのであきらめている。


 全員がそれぞれの寝床に入った後、暗闇の中、ワゼは荷物の整理をしておく。


 そして、終わった後は壁に良し掛かり、そのままタイマーをセットして明日に備えて寝る(スリープする)のであった。




 




何気に結構便利なメイド・・・・

一家に一台どうですかと言いたくなる高性能である。

なお、ギルドで働いている姿は冒険者たちや職員たちからも評判が高い。

ギルドマスターが口説こうと冗談でしたところ、機関銃を出されて乱射されるという事件は起きたが・・・・。壁の修理費などは、ギルドマスター負担となった(女性職員全会一致で)。

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