発掘品1
何気にこういった設定とかちまちま話に出てくる
護衛2日目、特に盗賊などの襲撃もないのだが・・・・
「モッサンさーん、生きていますかー?」
「ひゃまひゃまらいじょうら!!(まだまだ大丈夫だ!!)」
現在、モッサンさんミノムシ状態に追加して、物凄くぼっこぼこにされていた。
夜中に交代で起きて周囲を見張っているのだが、寝ているすきにモッサンさんがハクロたちの胸を揉みしだこうとしたのである。
ヤタが足の鋭い爪でひっかき、ハクロが糸を首に巻きつけてなぐり、ルミナスが精霊魔法で力の精霊とやらでぼっこぼこにするというコンボを見てちょっと怖かった。
ロウは、一緒によく寝ていて平穏だったけど。
モッサンのターゲットはサイズが80越えとか言っていたけど・・・ロウは狙われない範囲だったんだな。どことは言わないよ。
・・・・ハクロの場合、下半身に蜘蛛の身体があるけどそこも測定するのかな?
「まったく、この人は依頼人で、エルフの女性でなければ重石を付けて沼とかに沈めましたよ!!」
「・・・いや、死ぬ高さから落としたい」
「慰謝料も報酬に含めてもらおうかしら」
ハクロ、ヤタ、ルミナスの三人とも怒っているようである。
しかしギルドマスター・・・・あなたは何をこの人からお世話になったんですか?
「アーガレストにはな、口説き術を教えてやったんだよ」
よし、あのギルドマスターいつかは半殺しにしよう。
全員の心が一致した。
「にしても、あの遺跡の発掘品とかって結構量が少ないような気がしますけど・・」
荷馬車の中で、振り向くと山積みにされている発掘品の数々だが、遺跡の外観から考えると少ないような気もする。
「それはだね・・」
やっと腫れがひいてまともにしゃべれるようになったモッサンさんが話す。
あの遺跡にあったのは、本当にここにあったものだけなのだが、よく見るとどれも厳重に圧縮されて保管されているらしい。
「今はもう存在しない『亜空間収納』魔法という物が付与されているようで、それぞれにかなりの量が入っているようなんだよ」
その亜空間収納魔法とやらは、大昔、小さなものに大量にモノを入れるために作られた古代魔法の様なものらしい。
皆がそれを使って、何でもかんでも入れられたため家のスペースとかが空いたり、食料なんかも腐らずに保管できるため食糧庫が小さくて済んだという。
だが、戦争に転用されてしまった。
武器や防具、戦争での食料の確保などにも使用されたのだ。
これを悲しんだ人たちが、全ての人々からこの魔法の使用方法などをすべて消し去って、今はその存在があったという程度にしかわからなくなってしまったのだとか。
「生活に便利だったものは、戦争に転用されてしまう・・・・だけど、戦争から生まれて、生活に根付くものもあるから悪い話とも良い話とも受け取れない、とても難しい話なんだよね」
「光のある所には影が、影のあるところには光が・・・みたいな感じですね」
「メリットデメリットともいえるのではないかしら?」
ちょっと重い話だな・・・。
「まあ、そういったわけで亜空間収納魔法は今はもうない魔法としてあるけど、こうして遺跡からその魔法が付与された魔道具関係も見つかるのさ。ただし、どれも扱えなくなっているけどね」」
「どうしてですか?」
「簡単に言えば、どれもこれも鍵がかかっているんだよね」
遺跡からこうして発掘されても、誰も扱えない・・・・
「つまりゴミみたいなものなんですね」
「なにを言うかぁ!!」
「・・・ゴミではない!!」
「ふぇっつ!?」
ハクロがつぶやいたことに、モッサンさんとヤタが反応した。というかヤタもかよ。
「古代とかそういった技術が今でも保たれているってのはすごいことなんだよ!!」
「・・・作った人に失礼!!私たちではまねできないようなものばかり!!」
すごい剣幕である。
「ヤタってこういったものが好きなんだな・・・」
「クイーンハーピーだったわよね。『女王』ってつくだけに、こうした努力とかみたいなものも認めたくなるのかもね」
そういうもんなの?
とりあえず、何やらヤタとモッサンさんがハクロに遺跡とか発掘品とかについて熱く語りそうな雰囲気がしたので、巻き込まれないうちに僕らは少し離れた。
「・・・・・・」
「おーいハクロー」
「返事がないただの屍の、」
「死んでいませぇん・・・」
2時間後、ハクロは真っ白になってぐだっと倒れていた。
延々と聞かされ続け、ゲシュタルト崩壊ギリギリまで言ったようである。
そして、いつの間にかヤタとモッサンさんは互いに遺跡とかについて語り合っていた。
「マニアとかって、下手に突っ込んだらひどい目に合うという話があるんだけど・・・・遅かったかも」
「ふわぁぁああぃ・・・・」
「ふにゃふにゃになってますね」
「ウミュ」
もう精神的に力尽きたというか、燃え尽きたというか・・・・。
回復するまでに時間がかかりそうである。
それ相応の覚悟を挑まねば死ぬ・・・・・ハクロが思ったマニアに対する評価であった。