騎士冒険者?
本日2話目
どっちかというと、後半がメインかも
本日もギルドで依頼を達成していたので、報告しに行っていた時である。
「今日のは物凄く楽でしたよね」
「・・・楽しかった」
「いい感じだったわよね」
「ウミュ」
「・・・・・・・・」
僕以外全員は楽しい顔していたけど、僕だけは真っ白になった燃え尽きていた。
原因は今日の依頼である。
「『新作の服の試着モデル』の依頼達成確認できましたが・・・・大丈夫ですか?」
「あ、はい・・・大丈夫です」
慣れないことをしたからものすごく疲れた。
今日受けた依頼は、ルミナスが見つけたものである。
どのランクでも受けられるようだが、条件として「できるだけ容姿がいい人求む」とあった。
まあ、ルミナスなら容姿良いから別にいいかなと思って受けたけど・・・・依頼で受けたその服屋の店長がルミナスと、ハクロたちを見た途端もったいないと言われ、様々な服を試着させられたりして。女の子たちの服にかける情熱を延々と僕は聞かされたよ。
素材を生かし切れてい何のはもったいないだの、冒険者よりもフアッションモデルをやらせたほうが良いかもなど。
延々と聞かされて、もう力尽きたよ・・・・・。
他の冒険者たちから哀れみの視線を向けらていた。彼らもまた、同様の依頼を受けてその店の精神的被害に遭った者たちであり、ライの気持ちが分かった。
いつもなら、ハクロたちのようなきれいどころを連れているライは怨嗟の目線が向けられる。
だが、この日ばかりは全員同情するのであった。
「ライ様、真っ白になっていますけど平気ですか?」
「大丈夫だよ・・・休めば治るって」
燃え尽きたから、せめて休ませてくれ・・・・
と、隣の受付の方が何やら騒がしいことに気が付いた。
「だーかーら!!これは『グロン草』で!!依頼の『セイロン草』とは違うんですよ!!」
「葉っぱの形は同じではないか!!」
「茎の形が違うんですよ!『セイロン草』は三角!!『グロン草』は星型なんですってば!!」
「形がそのように変化した亜種で!!」
「亜種は『ドロン草』で茎はひし形!!しかもどっちにしろ依頼とは違う物になるではないですか!!」
何やら、依頼に出ていた採取植物と違うことでもめ合っているようである。
受付の人はかなりお疲れの様子だ。
依頼をしてきた冒険者は、どうやら全身真っ黒な鎧の騎士系の冒険者のようである。
「はあっ、ともかく全く違う薬草を持ってきたので依頼失敗となります」
「ぐっ・・・・これで45回連続で失敗かよ」
その回数には、さすがに全員驚いた。
新人冒険者でも、薬草については学ぶからあまり失敗しないのである。
つまり、この騎士の冒険者は薬草などに関する知識が乏しいようで。
「薬草学の本を無料でレンタルできますが・・真面目に読んで学んでいませんよね?」
「学んでいるんだ!!だが、どうしても間違えてしまうんだよ!!」
((((45回はさすがにないと思うぞ))))
その場にいた冒険者たち全員が同様に思った。ハクロたちもうわぁ・・・と反応に困る微妙な顔をしている。
というか、物凄い間違いの数々だな・・・・。
「あの人ある意味スゴイね・・・」
「確か、最近ここに来た新人冒険者の人ですよね」
「・・・バカ一直線」
「どこかの貴族の坊ちゃんかしら?」
・・・・納得がいくな。お遊びで冒険者登録をして、面白半分で依頼を受けたりする貴族もいるのである。
最初は当たり前に低ランクで、面白そうな依頼を受けたいから高ランクにしてくれなどの圧力をかけたりするのが問題となっているけど・・・・中には実力だけで高ランク冒険者となる貴族もいるから驚きである。
「でも、見た感じあの鎧錆び錆びのボロボロですよ。燃えでもしたのか焦げているようですし・・・」
「え、あの黒いの鎧の色とかじゃなくて焦げ?」
燃えて焦げた鎧を着る冒険者って・・・・貴族でもさすがにそんなことをしないか。
「くそうぅ・・・ファイヤ草に焼かれて家宝の鎧が焼けたし・・・・冒険者なんてもうやめてやる!!」
「引退手続きはあちらになります」
鎧の中で涙を流している感じでさけんだかとおもうと、受付の人はもう「さっさと帰れ」的な雰囲気をだして、引退手続き場所を指示した。
そのまま鎧の人は手続きをし始めた。
「ファイヤ草って確か・・・・・」
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「ファイヤ草」
別名「猛火の草」。めらめらと激しく燃えている草で、水魔法で消火してから採取するのが正しい薬草である。再着火するまでの間に、すりつぶし、水とよくこねて作った薬は自身の火に対する耐性を微妙に上げる。また、切り刻んでご飯にかけると辛くておいしい。
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「あの人、騎士みたいな感じで魔法が使えない可能性があるから・・・・」
「素手でつかんだのかしらね?」
一応鎧だけが焦げたようだけど・・・・何やってんのかな?
「冒険者になろうとしたはいいけど、学校に通うのがめんどくさい、薬草などに関して学ぶのもめんどくさいだけの人だったのかな?」
「・・・ただの根性無し」
ヤタの中々な辛口に、その場で聞いた全員がウンウンとうなずいたのであった。
にしても、逆にあれだけのドジを踏む人ってどこから来たんだ・・・・?
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・・・・・辺境都市ザストにある貴族区画。この区画には適当に別荘などを買って住み着いている貴族達が集まっているのである。
こういった辺境に別荘を買って過ごすのは、貴族としての仕事に疲れている人たちが休暇として来る時があるからである。
ただ、中には品性のかけらもないような貴族が来ることがあるので、ザスト中の人はここには地下図くことはめったになかった。
その中にある屋敷の中、焦げてしまった鎧を脱いだ男が屋敷の主に報告していた。
「~~~~~~というわけで、冒険者を辞めてまいりました・・・・」
「・・・ブアァッカモオオオオオオオン!!」
その情けなさに、屋敷の主の怒声が屋敷中に響き渡った。
「だから遊び半分で冒険者業をやるなといったんだ!!」
「ですが、我々貴族以上に稼げる冒険者もいるので」
「それはそいつらが優れているからだろうが!!冒険者になりたいのなら、まずはまじめに勉強せんかこのぼんくら怠け息子が!!怠け癖が付いているからそんなことになるんだ!!」
怒声を出しているのはこの屋敷の主、王国内の有力貴族の一人でもある、ダズラ=デストン。そして今まさに冒険者を辞めて泣き帰って来たのは彼のもう30歳にもなる大バカ息子のボーズラ=デストン。
ダズラには妻がいたが、妻一筋で妾などもなく、彼の血筋として残っているのは目の前にいるずぼら息子だけであった。
もうこの歳にもなれば、本来なら当主を継がせる予定であったが・・・・怠惰な生活を望むボーズラにダズラは激高した。
今回、ボーズラは冒険者になってやると言い、遊び半分でやるなといいつつ自主的に動いたのでわずかながらに期待はしていたのだが、ボーズラはどうやら怠け癖が出て、適当にしかこなせていないようで、どれも失敗ばかりであったようである。
ダメダメ息子のボーズラであるが、唯一いい点であるとすれば、他の貴族にもいる馬鹿のように女遊びをしたりせず、それなりに正直者であるところであった。
まあ、どちらにしろ怠惰だからダメダメだが。女遊びなどもしない理由がめんどくさいとかそういう物だし。
「まったく・・・我が息子ながら情けない。このままではデストン家は儂の代でつぶれるぞ」
「継がせてくれないんですか!?」
「ああ、お前の怠惰さはもうあっという間にこの家を滅亡させる。精々、早いか遅いかの違いだけだ」
教育などは、きちんと受けさせていたはずである。だが、ボーズラはさぼったり遊んだりなどして真面目にやっておらず、そのため彼女もできずに継がせられるような孫なども生まれていないのであった。
「お前をどこかの貴族家に婿入りさせる方法も考えたが・・・」
「私の趣味は幼女ですよ!!貴族の娘なってどれもある程度育っているではありませんか!!」
「・・・根っからのロリコンだしな」
どこでどう間違えたのか、ダズラは頭を抱えたくなった。
「いいとすれば・・・」
「ん?気になる娘でもいたのか?」
ちょっとボーズラが考えこんだので、ダズラは尋ねた。これでどこかの貴族家に婿入りしてくれれば楽なんだが・・・。
「やっぱり今話題の冒険者グループ『快進撃』にいるロウちゃんですかね」
「・・・・・スライムの娘だろそれ」
ボーズラが言った言葉に、ダズラはずっこけた。
人でなくてモンスターでも、見た目が幼女でいいのかこの息子は・・・・。
ダズラは頭が痛くなるような思いであった。
まあ、「快進撃」という冒険者グループ名はダズラも知っていた。
この辺境都市ザストにいるなら知らない人はいないであろう冒険者グループ。
ランクはまだDだが、そのメンバー構成が話題なのだ。
美しい見た目であるアラクネのハクロ、大人の雰囲気を醸し出すクイーンハーピーのヤタ、孫娘のように皆に可愛がられる純粋無垢なヒューマンスライムのロウ、メンバー内で魔物ではない「魅了の瞳」という魔眼を持っている若きハーフダークエルフのルミナス。あと、従魔たちの主兼リーダーのライとかいう男。
ライは別にいいとして、他のメンバーが美しく、妖艶で可愛いと話題になっているのである。
ダズラ自身、たまに都市内を馬車で移動する際に目にしたことはあったが、噂に彩色はなくむしろ控えめではないかと思えたほどであった。
実力的にも、スライムはわからないがアラクネなど強いモンスターもいるし、ルミナスという娘は精霊魔法という珍しい魔法も繰りだせるという。強さだけならAランクでもおかしくないとも言われているのだ。
まあ、彼らは地道に採取などの依頼を受けているらしいが・・・・。
そのメンバーの中で、ロウに興味をこのバカ息子は興味を示したらしい。
「はあっ、相手は冒険者の従魔、スライムだぞ。どこをどうやったら結婚できるんだ馬鹿もんが」
もはやばかばかしくなって気が抜けた。
「モンスターでも、人と繁殖行動が可能な種があります!!スライムでも大丈夫でしょ!!」
「いや、見た目の時点で犯罪行為だろ」
ボーズラの言う通り、人と繁殖行為が取れるモンスターはいる。今言った冒険者グループの従魔たちも可能な種類だったはずだ。
だが、生まれてくる子はモンスターになるだろうし、人に生まれたとしても常人ではないかもしれん。
というか、もう子供を作る前提で話せているボーズラにダズラは呆れかえった。
「もうお前いい加減にしないと『マッスール先生の根性鍛えなおしブートキャンプ2週間漬け』に行かせるからな?」
王国で腐敗している貴族を何とかまともにするために、子供の時点から何とかまともに矯正しようと開発されたもので、かなり効果が高いという。
なんでも、色欲に強欲など溺れていた者たちがキャンプ後にはバリバリの働き者に生まれ変わっていたという話だ。
費用はただで提供されているが、なかなかいかせることがない貴族が多かった。
「ひっつ!!それは嫌です!!」
「冒険者業もやめたし、嫁にしたいのもそういった小さい子にしたいお前にはちょうどいいかもしれんなぁ」
「やめてください!!」
「まあ、じつはな・・・」
「旦那様、お客様がお見えです」
と、屋敷の使用人が入ってきた。
「客?」
「これを・・」
使用人から渡された名刺を見て、ダズラはにやりと笑みを浮かべた。
「よし、とおせ」
「はっ」
使用人が出ていったかと思うと、誰かが入ってきた。
日焼けした肌、逆三角形のムキムキの筋肉のおっさんである。
「どーも、このたび『マッスール先生の根性鍛えなおしブートキャンプ2週間漬け』に申し込みありがとうございますダズラ様!!」
「な、何者ですかこの人は!って、まさか」
「ふっふっふっふ、実はもう申し込みしちゃった」
てへっと舌を出したダズラ。おっさんが舌を出しても気持ち悪いだけである。
「この息子さんをつれていけばいいんですね!!」
「ああ、頼む」
「ま、まってくだ、」
「さあっ!!レッツキャンプ!!」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」
そのままボーズラはムッキムキのおっさんに連れ去られ、貴族区画から去ったのであった。
『マッスール先生の根性鍛えなおしブートキャンプ2週間漬け』
貴族の腐敗をなくすために立ち上げられたもの。根性を鍛え直し、更に性格や考え方などいいい方向へ矯正するために2週間ずっと漬けられる。効果は高いそうだが、申し込む貴族があまりいないのが難点。そもそも、腐敗している側からすればたまったものではない。
何とか自主的に受けてくれるように画策中である。なお、サイクロプスやトロール、ケルベロスなどを従魔にしている魔物使いの講師の方もいるため逃げ出せることはない。