参戦募集
まあ、タイトルは張りぼてみたいなもので
「快進撃」とグループ名を付けてから数日後、僕らは今日も依頼をこなして受付に来ていた。
「これが、依頼での『ビートルキング』の角と、『ヒールスライムの体液』です」
「はい、確かに依頼達成を確認いたしました」
「よっしゃ!!」
「依頼も無事出来ましたね!!」
全員でハイタッチを交わらす。
なんとなく依頼達成出来たらするようになっていたけど、結構気持ちいい感じである。
他の冒険者グループの方たちも真似してやっていて、どうやら一つのブームを作ってしまったようであった。
「あ、ルミナスさんのランクですが、今回の達成によりHランクからGランクに昇格いたしました」
ついでに、ルミナスのランクも向上。
いいこと尽くしである。
「よかったねルミナス」
「ええ、やっと上がったっていう感じよ」
「このランク代なら早いんですけどね」
「・・・ライ様のDランクからは遅い」
「ウミュー」
ぶっちゃけ言って、Fまでは結構早い。だが、そこから先はのんびりとしか上げられないようである。
まあ、別にいいんだけどね。
「そういえば、弓矢の矢を新たに補充したいのですが」
「ああ、大丈夫ですよ」
「・・・羽もある」
ルミナスの弓矢、これの矢はハクロとヤタからもらってできているのである。
ハクロの糸を束ね、ヤタの抜けた羽で仕上げて矢を作っているのである。
なんでも、こういったモンスターから取れるようなもので作った矢は、精霊魔法とかを付与して飛ばしやすいそうだ。
炎の矢や、氷の矢、雷の矢と多種多様。遠距離攻撃が乏しいこのメンバーにルミナスが入ってくれて結構楽になった。
まあ、威力が上がる程度で物凄いというほどでもないけど・・・・魔法が使えない僕らからすればかなりすごい。
ハーフダークエルフなので、森の中だと結構目立ちにくいから奇襲も掛けられるし、矢を介さなくても普通に精霊魔法が使えるのである。
「ライさんのそばだといつもより魔法が使いやすいのよね」
「どういうこと?」
「精霊魔法は精霊に力を借りて発動させるものよ。ライさんの周囲はそういった精霊が安定しやすいようで・・」
精霊魔法はエルフやダークエルフなどの限られた種族限定の魔法である。「精霊」とかいう存在に力を借りて行っている魔法で、魔法と違うようだけど・・・。
「精霊とかって不安定なの?」
「ええ、物凄くね。でも、ライさんの周囲は不思議と安定しているのよね・・・」
「ライ様ですから」
「・・・我が君ですから」
「ウミュー」
うん、その「○○だから」で解決するのはどうなんだろう?
というか、最近気が付いたけど・・・・・なんか怨嗟の目線的なものも増えているような。
実は、ルミナス加入後に、ライに向けられる視線も増えている。
ほとんどが男性からの嫉妬に近いものであるが。
理由としては、ルミナスがかなりの美人の部類に入るからであろう。
ハーフダークエルフにしろ、ダークエルフにしろその美しさは妖艶さを兼ね備えている。
さらに、ルミナスは「魅了の瞳」持ちなので、うっかり腰砕けになってしまう人が出てしまうのだが、それがまたいいという人が多かった。
また、ハクロやヤタ、ロウとは違って今度は人としての加入である。
従魔ならまだいい。こちらはその人次第なものだからである。
だが、従魔ではなく人としてグループを結成されているのは許せなかった。
男性冒険者だってきれいな人と組みたい。あわよくば恋人とかになりたい。
だが、冒険者の男女比率は男性の方が多い。
しかも、美人な見た目のというのもかなり限られてくる。
そのため、きれいどころぞろいのライのところに縁さが向けられるのも仕方がなかった。
ただ、冒険者登録初日にちょっかいをかけようとして、ハクロとヤタにぼっこぼこにやられた冒険者の話が広まっているためそう手出しをする人はいない。
新参者でもさすがにかなり強いモンスターであるアラクネなどのモンスターを従えている者に攻撃したくもない。
そのうえ、一番でかい原因はロウがいることである。
スライムなのだが、見た目が幼くあどけない少女のため、辺境都市ザストの中で孫のように扱われて可愛がられている。
都市内の商店街でも「ロウちゃん」、「チビスラ」などといった愛称を付けられて可愛がられているのである。
何気にハクロやヤタの人気を上回っているのだ。つまり、それだけこの辺境都市内には紳士の方々もいるという事にもなるだろうが。
なお、ロウは現在も成長中。おそらく人間と大体同じように成長していくのではと予想されているが、人型のスライムってのは初めての事例で予想外の可能性もある。
そのため、モンスターに関しての議会などでは論争のもとになっていたりもするが、それはまた別のお話。
とにかく、今のところちょっかいをかけてくるようなやつもいないのでライたちは普通に過ごせているのである。
まあ、実のところライの従魔に惚れた人たちが勝手に親衛隊なるものを結成して事前に解決しているのだが。
非公式なので、知られないようにしているのである。
明日も依頼を受けようかなと思い、ギルドの依頼リストをちょっと眺めている時であった。
「ん?開戦?」
みると、どうやら戦争をするから兵力として集まってほしいとかいうポスターのようである」
「あー、戦争関係の物ですね」
「・・・人はなぜ争うのだろうか」
「ヤタさんって、結構深いこと言うわね」
「センソー?」
受注可能ランクはDからだけど・・・・まあ、受けるつもりはないかな。
払われるお金も高いけど、こういった争い事には突っ込みたくないし。
そう思い、ライたちはそれを見なかったことにしたのであった。
ハクロ、ヤタ、ロウ、ルミナス。
現段階でこの辺境都市ザストの付き合いたい女性ランキング100人の中でそれぞれ3位、2位、9位、2位である。従魔だろうと問題ない。それがザストの男どもであった。
なお、その結果は男性の方々にしか知られておらず、知られないように暗黙の了解がなされている。
ライがこのことを知るのは、もう少し先・・・・・・。