わなを仕掛けよう
のんびりと進んでいく感じ。
翌日、ライはハクロと一緒に目覚めた。
「おはようございます、ライ様」
「おはよう、ハクロ」
昔、ハクロに出会った時から一緒に過ごしてきた。
さすがにお風呂の時間とかは離れるけどね・・・・恥ずかしいもん。
今は寝る時には、ハクロは天井の方にハンモックとかいうのを使って寝てはいるけど、たまにハクロの蜘蛛の部分の背中に乗って寝ると結構柔らかくて結構気持ちいんだよね。
とりあえず、起きたので朝食をとり今日も森へ向かうことにした。
「今日こそ森の主ビックボアーを捕まえるぞー!!」
「おー!!」
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「ビックボアー」
見た目が巨大猪のモンスター。獰猛で凶暴だが、普段は森の奥の方に住んでいる。森の主とも言われ、人が入り込むと追い出そうとする。
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ビックボアーを捕獲すること。それがここ最近の目標であった。
森にはたくさんの果物などがあるのだが、数年ほど前からこのモンスターが住み着いたせいでうかつに近寄れなくなったのである。
今のところ、ハクロがいるので糸を使って木々を渡っていけば問題ないが、ちょっと不便。
そのため、何とかこのモンスターを捕獲してゆっくりと安全に倒そうと僕らは考えていた。
ハクロは本来、こいつよりも強いモンスターらしいが、普段の様子から見て全くそうは思えない。
どこか抜けているところがあるし・・・・モンスターにしては美人のようである。
ちょっと変わっているが、大事な家族だと僕は考えているのであった。
「昨日のやつは、ちょっと失敗したけど今回はそうはいかない」
「何か思いついたんですか?」
ハクロが首をかしげる。
「ま、ハクロ、ちょっとできるかな?」
「ん?」
「・・・これでよし」
「粘着性の高い糸を地面に埋めまくりましたね」
作戦はこうである。
この上にあのビックボアーをおびき寄せて、踏ませる。
粘着性の高い糸なので、その足の裏に次々とくっついていく。
そのままにしておけば・・・・・
「次第に張り付いてくるもののせいで、重くなって動けなくなるようになるって寸法だよ」
「なるほど、そういう使い方もありますね」
ハクロが納得したかのように手を打った。
アラクネって罠を仕掛けるのが得意なモンスターだって聞いたことはあるけど・・・ハクロの場合、そのあたりが抜けているよね。なんでだろ?
とりあえず、ビックボアーがこれにかかるのを待つことにした。
・・・見つからぬように木の上に隠れて1時間ほど、ようやく目的のビックボアーの姿が目に入った。
「よーし、そのまま真っ直ぐ進め」
「ライ様の作戦がうまくいきますように」
そのままビックボアーが予定地点を踏み抜いた。
べちゃりと言う音が、見事にビックボアーの足に糸が付いたことを知らせてくれる。
「よし、後は走らせて足にいろいろ付くのを早めるんだ!!」
「了解です!!」
そのままビックボアーの正面にライたちは降りたった。
「ぶもぉぉぉぉつ!!」
昨日のことを覚えているのか、走り出してくるビックボアー。
「走れハクロ!!」
「はい!!」
森の中の追いかけっこが始まった。
ハクロの背中にライがしがみつき、ハクロが糸をうまく扱いながら素早く木々の間を駆け抜けていく。
その後方からは興奮したビックボアーが走ってくる。
だんだんとその足に、周囲の石や草木が張り付いていき・・・・
「ぶもぉぉぉぉぉ、ぶもうっつ!?」
突如、ビックボアーの動きが止まった。
「ハクロストップ!!」
ハクロに走るのを止めさせてビックボアーのほうを見ると、その足元には大量の草木などが絡みつき、切り株などもくっ付いて動きにくい状態になっているようであった。
「よし!!ハクロやれ!!」
「了解です!!」
動けなくなったビックボアーをハクロが持ち上げる。
あの細い腕のどこにそんな力があるんだと言いたいが、まあ、モンスターだしな。
「てぇぇぇいやぁぁぁぁ!!」
そのまま勢いよくビックボアーをハクロは地面にたたきつけた。
「ぶもぁぁぁぁぁぁっつ・・・・・・・!!」
ズシィィィィィィン!!とものすごい音がして、ビックボアーはぴくぴくと痙攣した後、力をなくしたかのようにだらりと足が下がり、動きを止めた。
「・・・・完全に撃沈させました!」
ハクロがビックボアーの眼を確認して、死んだかどうか調べて、確実にこのモンスターを倒したということを確認した。
「やった!!」
案外あっさりとできたが、これでようやくビックボアーを倒したのであった。
「・・・ところで、これどうやって運びましょうか?」
「ハクロ、お願い」
「ライ様!?これ重いんですけど!?」
さっき持ち上げた人が言うセリフかな・・・・・・?
たたきつけただけでビックボアーが倒せたのは、実は頭の打ちどころが悪かったようだというのが分かったのは、村に帰った後にみんなに見てもらってわかったことであった。
運がよかっただけか・・・・。