穏やかな1日
のんびりのんびり
「今日は冒険者業お休みかな」
宿で出される朝食を食べながら、僕はそう言った。
「おゃふみへふか?」
「・・・休息?」
「・・・ウミュ?」
ハクロは頬張りながら返事し、ヤタは行儀よくちゃんと口の中のものを飲み込んで返事した。ロウはプルンと口の中に入れて吸収している。ちょっと体が透けているからいまどの辺りにあるかわかりやすい。
「たまにはね、ゆっくり過ごすのもありかなと思っているんだよね」
「なるほど、確かにありですね」
ハクロが同意を示す。
冒険者になってからそろそろ数週間程経過したし、毎日依頼を受けてばっかりだったからたまには休みたい。
一応、ロウが加入して宿泊費も増えたので、金銭的余裕はあまりないけどね。
なお、ロウは見た目が幼い少女なのでかなり他の方々(主にお年寄りの人たち)に孫感覚で扱われている。
何スライムかで専門家を呼んだ結果、「ヒューマンスライム」という種族名になった。
「そのままじゃん!」と全員がツッコミを入れたのだが、さじを投げたらしい。
人型のスライムなんて例になかったようだからね。専門家の意見としては、誰かの姿を真似ている可能性があるみたいだけど、誰かは不明。
ちなみに、ハクロの姿をみてこっちはこっちでありえんとか言われてしまった。
アラクネなのは間違いないんだけどね。
ヤタはまあ、クイーンハーピーならまだ納得と普通の反応をされ、ちょっとショボンと落ち込んだ。驚かれたかったのかな?
話が脱線したが、とりあえず今日は都市内を歩き回ろうということにした。
宿から出て、とりあえず歩き出す。
たまにはね、都市内を歩いてどこに何があるのかみておきたいからね。
「こうして依頼を受けないで、適当に歩いてもいいのかみたいな感覚はあるけど」
「それなりに楽だからいいですよ」
「・・・たまにはこういう何もない日も大切」
「ウミュー」
全員同意しているようである。
辺境都市ザストの大体の形は真上から見たらおそらく円形である。
徐々に増築したりして、土地が狭くなってたところなどを広げるには、ザスト周囲を覆っている柵と堀を改造しなければいけないので、数年に一回ほど見直しをして一気にやるんだとか。
なので、大規模改修工事の手伝いの依頼がギルドにも出されて、それで金を稼ぐ冒険者の人もいるんだとか。今年したばかりなので、次回は早くても2年後になるそうだが。
力仕事とかは得意ではないので、依頼を受ける気はないけど。しかも、その時期には力自慢のマッスルな人が集まって物凄く暑苦しいらしい。いやだなそれ。
その時期には絶対にこの都市から離れた場所にいようと心に誓った。
適当に都市の中を歩くと面白いことが分かってくる。
町並みとかもしかり区画整備されているし、石畳の道路でも丁寧に作られていたり、商業区画などと分かりやすいように地図が描かれた看板が置かれているのである。
この都市の領主バンブルとかいう人はかなりすごい名領主らしいが、この感じだとすごい人かもしれない。
「にしても、冒険者の人とそうでない人の違いがわかりやすいですよね」
と、ハクロがつぶやく。
道行く人は多くいるが、僕のようにモンスターを連れ歩いている魔物使いの人や、大剣を背負った戦士の冒険者の人、いかにも怪しいようなローブを着た魔法使いだと思われる人。
それぞれの職業の特徴がはっきりと浮き出ており、ちょっと面白い。
魔物使いの人とかでスライム連れている人はいるけど、中にはゴーレムを連れている人もいるようである。
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「ゴーレム」
モンスター、魔道具、古代魔導兵器などで人型で自立稼働するモノの総称。一括してモンスターとして認められているが、ややこしいものである。自然発生するモノは多くはストーンゴーレムなど石でできた体を持ち、魔道具として生まれてきたモノは粘土や鉄製などである。
古代魔導兵器にあたるモノはその材質は不明であり、現在の技術では製作不可能で、恐ろしく性能が高い。ただし、どれも基本的に穏やかな性格をしており、こちらから仕掛けなければ命令がない限り襲ってくることがない。ゴーレムを盗賊対策においてある村もあり、基本的に人気者。ただし、重量がそれなりにはあるので潰されることがあるのが問題となっている。軽量化のために、近年では紙で作られたゴーレムなどもある。
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「あれは天然モノかな?」
こういったゴーレムとかってモンスターも、魔物使いからすればあこがれに近いものがある。
だって、基本的に巨人タイプが多いからなんかっこいいもん。
「ライ様も男子ですね」
と、ハクロに笑われたんだけどね。
なんかね、ああいう感じのが欲しくなるじゃん。
昼頃、昼食は適当に屋台で買い食いした。
最近流行り屋台のではないけどね。あっちは4時間待ちクラス・・・・確かギルドの依頼でも買ってきてくれみたいなものがあったな。
その後、大体都市を一周したあたりで、まだ時間的には早いけど銭湯へいった。
ロウはスライムだけど、別に風呂入ったら溶けるとかはないようである。
スライムの中には大量の水にはいると溶けて消えてしまうのもいるらしいからね。
一応少女の姿なので女湯行き。
こっちについていこうとしていたけど、ハクロたちが止めてくれました。
あがった後、宿に戻り、今日は早めに寝ることにした。こういった日も、たまには悪くないよね・・・。
たまにはこういった休みの日があってもいいものである。ブラック企業じゃないからちゃんとした休みを取らせますよ。