帰宅
ここまではゆっくりとした日常生活の一部かな
「ただいまー」
「ただいまですー」
二人は森から出て、村の方にある自宅へと戻った。
ニア村と言い、とてものどかで平和な村である。
「お帰りなさい、ライ、ハクロ。またビックボアの森に行っていたの?」
「今日こそ森の主、ビックボアーを捕まえて食べられそうだったけどなー」
「木が折れちゃいました」
「あらら・・・お父さんが聞いたらまた怒るわね」
二人に対して、少年の母親は呆れたような顔をした。
「ハクロ、あなたはこの子の従魔なんだから、主であるこの子に危険を冒させないようにしなきゃいけないでしょ」
「あはは・・・ライ様には逆らえないですからね」
「ライも、ハクロがいるからって無茶はしちゃいけないでしょ」
「ごめんなさい」
少々、叱られはしたもののお咎めなしの様なので、二人は夕食の手伝いをすることにした。
アラクネであるハクロの体は大きいので台所には少し立ちにくい。そのため・・・・
「かといって、よく天井に張り付いて調理できるよな」
「これでもアラクネですから」
天井に糸で蜘蛛の巣を張り、そこを移動して器用に調理の手伝いをしているのであった。
ライは食器を運び、机に並べる。
「ライ様、ここに皿を置きますね」
「わかったよ」
天井からハクロが糸で括り付けた食器をおろし、整えていく。
「ただいまー」
「あ、お父さんおかえりー」
「おかえりなさいですよー」
ライの父親は村から離れた都市の方で働いているのだが、村と都市の間にある定期便で通勤しているため時刻通りには大抵帰ってくるのである。
定期便は魔道船とかいう変わったもので、馬車に比べると費用は安くなっているのだが、その分かなり混むのであった。
「今日も仕事で疲れたよ・・・」
「あらあら、夕食ができたからまずは食べましょう」
というわけで、夕食の時間となった。
「うん、疲れが飛ぶよ!!」
「今日はおいしく出来たと思うわ」
「私も手伝って、もぐ、います、むしゃ、からね」
「ハクロ・・・食べるか話すかどっちかにしてよ」
あははと笑いが、その場に響いたのであった。
次回から、主人公視点で書き始めますよ