初依頼
本日2話目
やっと初めて冒険者として活動開始!!
とりあえず、何とか安い宿を見つけて泊まった翌日、僕らはギルドにて依頼を探していた。
ギルドの掲示板に依頼が張られているのだが、受注できる冒険者ランクが決められており、できるだけ身の丈に合ったものを選べるようになっている。
冒険者ランクが高いものを受けたいならば、そのランクにあった人と組んでいくこともあるそうだ。ただし、自分の身は自分で守れと言ったふうになるらしいが。
冒険者ランクを上げたいならば、依頼をこなし、成功させての繰り返しをすればよい。この方法は地道だが、一番確実にランクを上げられるのである。
また、その人自身の実力もみて、あげられる場合があるそうだ。その中には、「二つ名」とかいうその冒険者に名付けられるものもあるらしい。ヤマちゃんを連れていたバッバンノ先生はたしか「轟音」だったな。
しかし、依頼に失敗しまくったり、何か問題を起こしたりしたら降格される場合がある。
昨日のおっさんがいい例だろう。
まあ、僕らはのんびりと行きますけどね。
「Eランクだと・・・」
「意外に結構受けられるものがありますね・・・」
「・・・多い」
冒険者のランクは高いものから順に、SSS>SS>S>A>B>C>D>E>F>G>Hとなっていて、Eランクは下から4番目だが、意外と受けられるものが多いようである。
「特定の薬草採取・・・コボルトの群れ討伐・・・鍛冶屋の手伝い・・・」
「試し切り・・・服屋の依頼・・・・新メニュー試食・・・」
「・・・営業販売の手伝い・・・護衛・・」
なかなかバリュエーションに飛んでいるなぁ。
「薬草採取の方からいった方が良いかな?」
「そうですね、まずは地道に行きましょう」
「・・・薬草」
というわけで、受ける依頼の紙を受付に渡す。
「これを受けたいんですけど」
「はいはい・・・えーと、『ドクラミン草5本、眼球草3本採取』の依頼ですね」
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「ドクラミン草」
紫色の小さな花が沢山咲いているのが特徴の薬草。低級解毒ポーションの材料。解毒できる毒は弱いものが多いが、虫刺されなどに対してよく効くので夏場ではかなりの需要がある。いたって普通の野山に自生している。
「眼球草」
名前の通り、眼球のような実をもった薬草。たくさんのポーションの材料や中和剤などに使用される。暗い洞窟の中に多く自生している。
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今いるこの辺境都市ザストの近くの山に洞窟などがあるらしいから、この二つを集めるのはそう苦労はしないだろう。
依頼受付手続きをして、僕らは山の方に向かうのであった。
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辺境都市ザストには、その都市を治める領主がいた。
彼の名前はバンブル=ザエス。20代のころにこの地を国から承って、それから20年たって40代となった今でも名領主としてこの都市を治めているのである。
領主の館の執務室にて、彼が仕事で書類を書いている時だった。
「おーい、いるかいバンブル君?」
執務室の扉がノックされ、入ってきたのは細めの男性・・・この都市のギルドマスターであった。
「おい、今俺は仕事中なんだが?なんの用件だアーガレスト」
ギルドマスターの本名はアーガレスト。バンブルの幼馴染であり、元冒険者でもあった。
「もう情報入っていると思うけど、ギルドに新しく新人冒険者が入ったんだよね」
「知っているぞそんなこと」
「わお」
ふざけて驚くような声を出すアーガレストに若干ムカついた。
この辺境都市ではモンスターが襲撃する可能性もあって、柵や堀で都市全体を囲っている。
城壁を作る申請を国にしてみたのだが、さすがにそこまでの予算が下りてこず、今の状況になっているのだ。
だが、何とか柵や堀ができたのはこの目の前の優男の幼馴染だと思うと少し腹が立った。
なお、バンブルがすでにライたちの情報をつかんでいたのは、そういった情報などを集めることによって、有能な冒険者をできるだけこの都市に留まらせて、利用してこの都市を発展させていこうという彼の思惑があるからである。
「冒険者用学校卒業、魔物使い科だったライとかいうやつだな。連れている従魔はアラクネとクイーンハーピー。どちらもモンスターの中ではかなりの強さを持つ種族だったか」
「流石バンブル君、もうそこまで調べ上げているんだね」
「お前に言われると腹が立つんだが・・・」
目の前にいるこの男は人をいらだたせる天才ではないかとバンブルは思った。
だが、元冒険者なのは事実。かつてAランク冒険者で、異名が「冷徹」だった・・・・と言って誰が信じるだろうか。今の軽い感じからして、思いっきり「優男」や「もやし」とかの方が合うと思うんだが。
そうバンブルは思う。
「そうそう、今回きた用件はそんなことじゃなかった」
だったら先にそっちを言えよ。そうバンブルはツッコミを心で言う。
「なんの用件だ?仕事が溜まっていくんだが」
「ここ最近、薬草などの依頼が多いなと思うんだけど、なんか大量のポーションを使う用事とかあるのかな?」
ギルドに出されている依頼は、基本どこからの依頼かまでは書いていない。
普通に手伝いや、護衛の場合は依頼主名は書かれているが、それ以外はほとんど依頼主名が書かれていない。
そして、ここ最近やけにポーション関連の依頼が多いなとアーガレストは思ったそうであった。
ポーションは治療薬。そんなにたくさんの治療薬を集めてどうするのか。
どこから依頼が出ているのか調べた結果、ここの領主の館からの物が多いことに気が付いたのである。
「・・・国からの命令だ。ポーションをできるだけ提出するようにとな。ただし、民間に必要な分は残しておけと」
隠す意味も特にないので、国からの命令という部分を強調してバンブルは答えた。
「国から・・・ね」
アーガレストはその言葉の意味をすぐに理解したらしい。
ポーションが大量に必要になることとすれば・・・・。
「なるほど、だいたい理解したよ。バンブル君も仕事だから仕方がないよね」
「ああ、さすがにこの国からの命令というのは少々困るからな。辺境都市ぐらい好きにさせろと言いたい」
逆らえば、この都市の領主を首にされるのが分かっているので、とりあえずは従っているのである。
首にされた場合は、新しい領主が来るのだが、せっかくここまで発展させた都市を手放したくはなかった。
そんなバンブルの心境を察したのか、アーガレストはすぐに執務室から出ていったのであった。
そろそろ今ライたちがいる国などの設定を出した方が良いかな?