閑話 ヤタの昔話
大体学校にまだいるあたり
「・・・我が君」
夜中、ふと目が覚めたヤタは寝ているライの顔を見た。
ハクロは今熟睡しているようで、ヤタの動向に気が付いていないようである。
愛しく感じるその感覚。
そっと翼で抱きしめ、そのぬくもりを感じ取る。一応窒息させないように配慮させながら。
「・・・あれからずいぶん経った」
ライを見て、ふと彼女は過去のことを思い出した・・・・。
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覚えているのは、自分は卵から生まれたことである。
モンスター・・・ハーピーの巣で彼女は生まれた。
他のハーピーは通常の養女のような姿をしている中、ヤタだけなぜか超希少種クイーンハーピー・・・大人の女性のような姿で生まれた。
母親のハーピーは他の子とは違う自分に対しても、他の子と同様に優しく扱ってくれた。
ヤタはその巣の中で、母親の翼にぬくもりを感じた・・・。
ただ、時折その中で彼女はある夢を見た。
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夢の中の自分は、今の自分の姿に似てはいるが、翼以外の色は違う。自分であって、自分ではない者の様な感じ・・・。
そして、他にも仲間がいて、その中で彼女を愛してくれた人の姿を見た。
翼もない、ただの人間のようだけど、まとう雰囲気は人間を超えている。
だが、それでも愛しく感じた。
その夢の中の自分に対して、他の皆と同様に彼は愛してくれていた。こちらが求めると彼も求める。
まるで、互いに惹かれるようなそんな感じの夢・・・・
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その夢はしばらくすると見なくはなったがなんとなくは覚えていた。
しばらくたち、ヤタはその巣から巣立ちを迎えた。だが、穏やかなものではない。
母親であるハーピーは新たにどこかのオスを捕らえており、そのオスは彼女にも目をつけた。
嫌悪感が走り、ヤタは慌ててその巣から離れた。
自分の相手ではないと思えたのだ。
彼女は、それ以来母親のハーピーの姿を見ていない。どこかで冒険者に倒されたとか、たぶんそんなところだろう。
それからどれだけの月日がたっただろうか。
かつての、あの温かい母親のぬくもりなどを求めてさまよった。
だが、他のハーピーの群れを見つけても、ヤタの姿は他のハーピーとは明らかに違うために追い出され、さみしい思いをした。
そのうちに、適当な木を見つけて適当にその上に巣をつくった。
かつて、母親のハーピーと過ごしたような巣を再現して。
しかし、やはり寂しい思いが募るだけで寒かった。
それからさらに月日が流れたある時、急になんとなく、本能的にわかるようなそんな気持ち。
説明が付けにくいけど、昔から知っているようなそんな感じ。
惹かれるような、呼ばれるようなそういった不思議な気持ち。
そのような感覚が彼女を襲った。
その感覚を不思議に思い、なんとなく惹かれるかのように彼女はそこへ向かった・・・・。
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・・・そして現在、こうしてライの従魔に彼女はなっているのである。
従魔になってから、仲が悪い蜘蛛女がいるけどこうして昔のような温かみを感じ取れるようになった。
ライを軽く抱きしめて、そのぬくもりを実感する。
幸せというのは、こうして家族を得たときに自然と来るものなのだろうか。
もう一人ではなく、こうしてそばに仕えているだけでも幸せな存在・・・。
ヤタは、その今の幸せをかみしめて、軽くライのひたいにキスをしてから、再び眠りにつくのであった・・・・。
こう言った話とかってなんか考えたら面白い