引っ越し騒動
前にもあったような気がする。
王国の敗戦時の面倒ごとも考えたうえで、ライたちは今いる辺境都市ザストからの引っ越しを決めた。
とはいっても、もともと冒険者はあちこちを行き来するような流れ者のような感じであり、ライたちのようにしっかりと拠点を構えてと言うのは中堅のある程度の経験を積んだ人達が行うようなものであり、こうして引っ越しを決めるのも別におかしな話ではないはずであった。
「引越しをするのは良いとして、何処に行くべきなのだろうか?」
冒険者として続けることにはしているが、そういう場合ギルドがある場所にしたほうが良いのである。
「ライ様が決めるなら別にどこでもいいですよ」
「できれば暖かいところが良いですね」
「・・・森があると良いかも」
「乾燥シナイトコー」
「昼寝できそうな場所」
「薬草が採取しやすそうな森もいいが、海もそこそこ近いと良いのぅ」
「寒さが余りない場所でありますかな」
『足場がしっかりとしていると良いぜよな』
「せやな・・・人相手にマッサージができるといいんやろうけど」
「雪もきちんと降る場所がいいわね」
「あまり湿度が高くないところが良いぜよな」
「旦那様の決定に従いますので」
・・・・結構意見がバラバラな様な、まとまっているような。
「暖かい、雪も降る、森と海が近い、人も一応それなり、ギルドがあるといった条件がある場所とするならば・・・・」
地図を見て僕らはその条件にあった場所を探す。
「・・・ここならどうでしょうカ」
と、ワゼがとある場所を示した。
「ここって・・・・『アンバル共和国』か」
海を渡った先にあり、森も海も近く似合って、気候もやや温暖でありながら時折雪も降る。
人口は多くも少なくもなく、ギルドがあってこれから発展していくと考えられるような最近できた国のようである。
「地価も安く、新たな住居を構えるにしても予算に余裕がありマス」
「うん、じゃあここに引っ越すことにしようか。何か反対意見は?」
尋ねてみたが、満場一致でその国へ僕らは引っ越すことに決めた。
引っ越すためにはいろいろと準備がある。
まず、ワゼとスルトがギルドの職員とマッサージ師の辞任手続きをして・・・・
「どうかいかないでください!」
「仕事量が本当にやばくなるんです!!」
「マッサージもあるから今日のこの残業も平気なんだい!!」
「いや本当に経営が先行き暗くなるから!!」
・・・・ギルド職員一同に全力で土下座されました。
しかも、ギルド内にいたほかの冒険者たちにも話が伝わったようだ。
「なぁぁぁ!!姐さんたちが出て行ってしまうだと!!」
「ロウちゃんのような癒しの存在がぁぁぁぁ!!」
「お薬とかも利用しているんですって!!」
「マッサージが受けられなくなるのは嫌だぁぁぁ!!」
「何のためにここに通っているのかわからんくなるって!!」
「美女たちが一堂にいなくなると俺たちのモチベーションが駄々下がりだよ!!」
すんごい混沌とした状態になったんですけど。どんだけ人気があったんだろうか・・・・・・。
というか、デジャヴ?前にも似たような光景を見たことがあるぞ。
全力で引き留めようとする人が多いし、まさかここまでの騒動になるとは思わんかった。
・・・でも、決めたことだし、最終的にはなんと彼方得してもらえたと思ったら今度は送別会が開かれるようで・・・・・ものすごい涙を流している人が多くてちょっと怖いぞ。
何やかんやと過ごした後、僕らは荷物をまとめる。
こういう時にエリーがいてくれるのは助かったよ。荷物とかを収納してくれるから結構身軽に動けるしね。
ザストでの見送りを受けた後、僕らはアンバル共和国へと向けて出発をするのであった・・・・。
・・・都合上、この物語はもうそろそろ終わりを迎えます。