後がない王家
何話ぶりの登場だろうか。
今回は主人公出番なしかな。
SIDEプラント
「敗戦色が出て来たか・・・・・」
「被害からして、もうすでに気力などもそがれてきているようです」
ルーナス王国の城がある方の首都で、城内の会議室で第1王子であるプラント=ルーナスは戦況の報告を聞き、苦々しい顔をしていた。
戦争開始からすでにかなりの時間が経っており、一時期は優勢に出ることができたのだが、現在は劣勢になってきているようなのだ。
「わが軍の被害も大きいのですが、戦争の長期化により参戦していた冒険者たちも徐々に離れて行っています」
「『戦争に飽きた』、『疲れた』、『冒険者業をするただの冒険者へと戻ります』、『報酬をもっと上げろ』、『もう降伏したら?』、『敵兵に好みの人を発見』などの様々な意見があるようで・・・」
「最後のはおかしくないか?」
とにもかくにも、現状況ではほぼ負けてきているような物であり、このままではあとひと月もしないうちに帝国兵たちがこの城まで攻めてくる可能性が大きくなった。
「防衛をしていて、裏切っていなかった領主たちの方も、徐々に見限って通しているところもあるようです」
「戦争をしていると得はないと考えているものが多いようで・・・」
「くっつ・・・・このままでは我が国は負けてしまうか・・・」
一部の貴族や領主の裏切り、平民の不満、冒険者層の戦争離れなどの要因が多く報告されてきて、その場にいる全員には焦りが見えてきた。
もともとこの戦争には前もって入念な準備をしていたのだが、すでに計算が崩れており、このままではもはや猶予はないように思われた。
「いまだに参戦していない高ランクの冒険者たちに、高い報酬を払って参戦をしてもらうという方法もあるが・・・帝国の方がより好待遇の条件を出しそうだな」
「こちらの国力がすでに減退しているのに対し、帝国側はまだまだ余裕があるようだからな」
各自が話し合うも、有効な手段が見つからない。
・・・・悩みぬいた末に、プラントはある提案を口に出した。
「・・・・こうなったら、あの警告を無視して以来をしてみるか?」
「あの警告・・・・・まさか!?」
「いえ、それをしたら下手すると確実にまずいですよ!!」
その言葉に、内容を理解した者たちは慌てて止めに入る。
その警告と言うのは、去年のメイド襲撃事件の時だ。
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『我がご主人様を利用するような輩はつぶせと、私のメモリーにありますのでそれに従ってきたのデス。ですが、さすがにまだ殺生はいたしませんヨ。あくまで忠告だけですカラネ」
『忠告というのは、簡単に言うとご主人様・・・ライの戦争への利用デスネ。間接的、直接的手段どちらもやめていただきたいのデス』
『・・・・一応、今のこの私の行動は独断行動であり、ご主人様に命じられたものではありまセン。ですが、ご主人様に対して報復するような真似をした場合もこちらが報復することができるケースにあたるので、そのあたりはよくご理解してくだサイ』
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ワゼと名乗る人ではないメイドが会議室に入り込み、利用する企みをしていたところで襲撃をかけてきたのである。
そしてこの時にこのような恐怖の言葉を出されており、魔物使いのライと言う人物に対しては皆手出しをしないようにしていた。
うかつにこのライと言う魔物使いを戦争へ出せば・・・・・あの恐怖のメイドがこの場に現れて、今すぐにでも全員がこの世からいなくなってしまう可能性がある。
・・・しかし、その魔物使いの従魔たちはどれも強力な者たちが多いらしく、協力をしてくれさえすればあっという間にこの戦況を覆してくれそうな感じであった。
迂闊に手を出せば死があるだろうが、もしこの戦争で出てくれれば帝国軍をつぶせるかもしれない。
ハイリスクハイリターンであり、もう王国には後がない。
「・・・・よし、ここはこの私自らが話し合いに向かおうか」
「行けませんプラント様!」
「ここで死んでしまわれては、この後どうすればいいのか!!」
周りが引き止めるが、プラントは聞かなかった。
ここで成果を出せねばもはやこの国には希望がない。
それに、水面下では裏切る用意をしようとしている者達がいるらしいことも知っているし、むしろ自分が亡き者になれば、残っている妹・・・ロズに取り入って王になろうとするものが出るだろう。
ここでの心配は、それぞれの保身のためにでもあり、うわべだけの物もいる。
第1王子プラント=ルーナスはここで腹をくくって馬車を用意させ、ザストへ向かう。
極秘の訪問であり、この国の王族が頭を下げて冒険者に頼みに行くのは前代未聞であり、誰にも知られてはいけないだろう。
そのため、最新注意を払ってプラントはザストへ向かうのであった・・・・。
・・・しかし、プラントは、国王であり父親でもあるライドから、その妹であるロズはすでにライのところにいるという情報を聞いていないのであった。
さてと、どうでてくるかな?