・・・・からの手紙
「・・・」はこの話を読めばわかります。
ゲソタッコンのごたごたから2週間後、季節は夏になってきて暑くなり始めていた。
ライたちの生活も一部変化があり、暑さが好きなミアンは活発化してきており、逆に雪女ゆえか苦手なツバキは家に最近作った地下室の冷凍庫にこもり始めた。
まあ、一応そのあたりの変化は良いとして・・・・
「この手紙ってなんだろう」
今日、我が家に来た手紙だが、ただの手紙ではないようだった。
明らかに高級そうなオーラが出ているというか、なんというか。
「差出人は・・・・ライド=ルーナスと書かれてますね」
「はて?どこかで聞いたような名前ですが・・・・・・」
うーん、と全員で頭を悩ませる。
どこかで聞いたような、聞いていないような・・・
「ん?それってこの国の国王の本名ですネ」
「え?」
ワゼがあっさりと分かったようであった。
「ああ、この国の国王ですか。そういえば冒険者用学校で習ったことがありましたね」
「確か、今は病床にいて、第1皇子のプラント=ルーナスって人が現政治を受け持っているんだっけ。まだ王位を継がせてはいないけど、事実上の次期国王だったかな?」
ぶっちゃけ、僕らってそういう政治とかはほとんど興味がないから知らないんだよね。
冒険者業をやっているだけのただの魔物使いですから関係ないかと。
「あ、でもよくよく考えればロズ王女の護衛を受けていたりしましたし、一応関係はありましたね」
現在もニア村に滞在中のロズ王女だけど、あの人そういえばこの国のお姫様だっけ。
でも、そこで関わりがあるってわかるけど、そんな国王様がなぜこの僕らのところに手紙を?
「取りあえず読んでみたほうが良いのじゃ」
「こういうのは内容がわからないといけないでありますからな」
と言うわけで、内容を確認確認。偽物ではないのはワゼがどうやらわかるようで本物で何も罠がないようなことは確認してからであったが。
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拝啓 冒険者魔物使いのライ殿へ
この手紙は、儂が秘密裏に貴殿のところに送り届けた物であり、王族しか知らぬような手段で発行したものである。
厳重に警備されて、何者にもこの内容が知られぬようにしている重要なものだとまずは理解をしていただきたい。
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「・・・この時点で、先を読むのが怖いかも」
明らかにやばそうな感じしかしない。
「続きを読んでみるのじゃよ」
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さて、今回この手紙を出した理由だが・・・・単刀直入に言おう。
貴殿を見込んで、我が娘ロズ=ルーナスをどうか今滞在させているニア村から、ライ殿の住処へと移動させて住ませてあげてほしい。
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「はい?」
「何でありますかねコレ?」
この内容の時点で、何やら政治的な面倒くささが見えてきたような気がするのだが・・・・・
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未だに我が王国と帝国の戦争が終結せぬのを知っておるよな?
その事に対して、いらだちと不安を隠せない者たちが出ており、また、我が王国を裏切って帝国側につく貴族たちも出てきておる。
また、我が息子であるプラントに対しての不満を持つ者が多くなってきており、もはや城内は混とんとしており、いつ反乱がおきてもおかしくはない。
そして、つい最近判明した事実だが、どうやら我が娘であるロズの居所を探っている者達がいるらしいのだ。
ロズはこの戦争からこの城が狙われた時でも安全なように、ニア村へと疎開させているのだが、裏切りの事も考えて他の貴族達にはロズの居場所に関しては黙秘していた。
だが、ここで王国を裏切って帝国へ流れようとする者たちがどうやら狙っているようなのである。
ロズはこの王国の王家の血筋の者であり、帝国を裏切る者たちにとっては帝国へのいい手土産として思いつくのであろう。
ニア村はもはや安全でなくなる可能性もあり、その事から儂は娘にとって安全場所を思案した結果・・・・ライ殿の家が良いと判断したのである。
強力なモンスターを従魔として従え、ロズの話からしても信用に足る人物だということは十分理解している。
そこでだ、どうかライ殿のところに我が娘のロズを置いてほしい。そのまま娘を嫁に迎えてしまってもかなわない。
儂は娘を大事にしており、どうかあの笑顔を絶やさないでほしいと願っている、もう寿命が近いただの老人である。
だが、それでも娘のために思う父親なのは変わりない。
この手紙に似た内容の物はすでに娘の方にも届いているだろう。
・・・・これを秘密裏に出したのは、このことを知ったよからぬ輩が来ぬようにとせめてもの心遣いだ。
このルーナス王国の国王として、最初で最後にライ殿に託す王命としてでも受け取ってくれ。
娘を思うだけのただの親バカとしてでも受けとってほしい老い先短いこのルーナス王国の国王、ライド=ルーナスより。
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・・・・手紙を読み終え、全員黙り込む。
「・・・・最後のその部分さえなければ、良い手紙な感じでしたが」
ヤタ、思ってもそう言っちゃいけないよ。
とにもかくにも、これはどうやらロズ王女を僕らのこの家へと移送してほしいという、国王様からの依頼書の様なものである。
「まあ、受けるか。面倒な政治闘争になりそうだけど、流石に国王様からこんな手紙をもらったら、動かないわけにはいかないでしょう」
「そうしたほうが良さそうですね」
「政治闘争は面倒じゃろうが、いざとなったら我らはここを捨てて出ていくこともできるしのぅ。冒険者と言うのは、そう切り替えやすいものでもあるのじゃ」
いやアルテミス、従魔だよね?冒険者ではない彼女がそれをいうとどことなく微妙な気がする。
「でも・・・この嫁にしてと言う文はどうかと。ここは流石にロズ王女をもっと考えてあげたほうが良いような気がするんだけど・・・・」
と、言ったところでなぜか全員が呆れたような眼をしていた。
え?何かおかしいこと言ったかな?
・・・・ライは気が付いていなかったが、ここにいる女性陣でロズ王女を見ていた全員が気が付いていたことがあった。
が、ここは黙っていてわかってもらったほうが良いだろうなと全会一致で決まったのであった。
政治関係に巻き込まれそうなのでここはワゼも動くかと思ったが、事情が事情なので今回は黙認するようである。
あくまで、ワゼはライに対しての忠誠心などから動くだけであって、今回のは適応外であった。




