依頼ではないけど・・・・通り過ごせぬか
一応誰しもが忘れていそうなこと。
「・・・・ライ、紹介のために私の両親の元へ行きたいのですが・・・・いいですかね」
「・・・・別にいいよ」
初夏ごろになり、ベッドでルミナスが朝起きるとライの横でそう言った。ライの横には、昨夜の相手を一緒にしていたミアンがぐだぁっと脱力した状態と化している。
その・・・・先日の営み以降、従魔たちに混じり、ルミナスが入っていたんだけど、彼女は従魔ではなくれっきとしたメンバーの一員。
ハーフダークエルフであり、人の子でもあるのだ。
まあその色々とね、ヤっちゃったものだからルミナスの両親に挨拶しに行かなければいけなかったんだけど・・・タイミングがつかみにくかった。僕のお母さんの方にはまだ話してはいないけどね。こちらもなかなか言い出しにくい。
・・・なお、今のこの時期はまだ甘く過ごしたいのか、アルテミス調合の薬品で子供ができない状態らしい。
いや本当に、アルテミスってどこからその手の薬の知識を仕入れてきたの?
と、質問をしたらアルテミスは顔を赤くして秘密じゃと言ってきた。
別に気にするほどでもなくていいか。彼女は彼女なりに考えてその薬を作ってくれているわけだしね。
とにもかくにも、ルミナスの両親の元へと先に向かったほうが良さそうであった。
「場所はこのあたりにあるはずだよ」
「あるはずって・・・なんか不特定な場所を言うような感じですね」
一応、地理的なこともあってその場所を知っているギルドマスターに確認を取ってもらって、地図の一か所を指してもらったけど・・・歯切れが悪いな。
「いやね、ルミナスさんのその両親には世話になっているのだけれども、場所に関しては今の状況だと特定しづらいんだよね」
「・・・帝国と王国の戦争で、その最前線近くと言うわけか」
忘れそうだが、現在も今いる王国と帝国との戦争は続いている。
もう終わっているかなと思っていたのだが、現実はそんなに甘くなく、泥沼化しているらしい。
過去に一時的に両国の都合で休戦していた時期もあったのだが、そうなんども休戦していては互に示しがつかないらしく、いわばそれぞれの国の誇りとやらでやめられない止められないという状況だそうだ。
で、肝心のルミナスの故郷の集落だけど・・・・その最前線近くにあるという「キカロスの森」と言うところにあるそうだ。
だが、そこは今は王国軍と帝国軍がぶつかり合っているらしく、森自体があれてしまって・・・
「そこにいたダークエルフたちの集落は現在、音信不通。もしかしたら争いに巻き込まれた可能性があるからね・・・」
「・・・・・」
その言葉に、ルミナスはショックを受けたかのような顔になった。
「でも、ルミナスさんの両親はほぼ確実に生きていると自信を持って言えるよ」
そのルミナスの様子を見て、慌ててギルドマスターはそう言った。
ルミナスの両親は元々高ランクの冒険者らしく・・・・
「というか、あの二人がそう簡単にくたばらないだろうな・・・・いやもうあれは勘弁・・・」
何かを思い出したらしく、顔を青くしていた。過去に何があったんだ?
とにもかくにも、一応最前線近くだし、ここは用意周到にしておいたほうが良いか。
最悪速攻で逃げればいいからね。戦争に関わるのはご免である。
皆、本当に僕の大事な家族であるのだから・・・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「何やら、まーた面倒な奴が来てますネ」
今日はギルドを休み、洗濯にいそしんでいたワゼであったが、彼女は気が付いていたことがあった。
先日のライたちが首都から帰って以降、家の周りを不審な人物がうろついているのである。
はた目で見れば、ただの通行人A、B程度にしか認識はできないが、それでも注意深く観察をしてみたところ、どうやらこの家の女性陣を見張っているような輩たちであった。
ミニワゼ諜報部隊に現在調査をしてもらっており、ワゼはワゼで水面下で暗躍をし始めるのであった。
己が使えているご主人様とその大事な家族に危害を加えようとするものには、徹底した地獄を見せてやろうと心に誓って・・・・・・
「・・・どうせなら、私もまざりたいんですがネ」
ふと、本音が口から洩れたのに気が付いたワゼは、その事に気が付いて慌てて自ら口をふさいで、周囲に誰もいなかったことに安心したのであった。
・・・魔道具である彼女でも、その心はあった。
次回、ルミナスの両親の元へ向けてライたちは出発する。
一方で、主人のために最強メイドが暗躍をする・・・この世界で最もチートなのはワゼだな。確定。
あ、従魔はこれ以降も増える予定ありますよ。ネタ的にはまだ出していないようなモンスターもいますし、オリジナルのも混じってますからね。流石にライとの・・・・まあ、その事はその従魔となるような人の気持ち次第だけどね。