空から
本日2話目
ちょっとここいらで騒動。
翌日、朝起きてみると意外な光景があった。
ハクロ製の罠にいろいろかかっていた。
猪とか鹿はまだわかる。だけど・・・
「・・・なんで人が」
一人や二人ではなく、かなりの人数が罠にかかって吊るされていたり、簀巻きになったりして寝ていた。
男子の大半の様である。
聞くと、ハクロのことを見に来た人たちらしい。
普段、ハクロが寝るのは寮の自室。そのためどんな風に寝ているのか気になった人が多く、その寝ている姿を見に来たんだそうだ。
「要は覗きですよね」
ハクロがじとーっと罠にかかったやつらを見る。
明らかに不快感を出しているのであろう。
「私としては、ライ様にそうされるのはいいのですが・・・・他人にそのようなことをされるのは不快なんですよ」
機嫌悪そうな声でハクロが言う。
「従魔って、主以外の人には懐かない場合があるって聞いたことがあるけど・・」
「相当だねくひひひひっひっひっひ」
お母さんたちや、村の人には優しく接していたけど・・・・。
「女性としての思いがあるのではないでしょうか?従魔以前に、女性としての心があるようですし」
要は、男にはわからない女の感情とやらがあるらしい。
「私だって、孤児院育ちですけど、よく覗きに来た男子とかは不快でしたし・・」
「そういうもんですよほんと」
何やら、その話でハクロとハマは気が合ったようである。
男の子の僕らは、話には入れなかった。
「・・・とりあえず、この罠にかかった人たちどうする?」
「罠を外して別行動させた方が良いな。違うグループがこうしたほかのグループに接近しようとしたのは問題だろうし」
「ものの見事に全部かかっているもんねくひひひっひっひっひ」
手分けして、僕らは罠にかかった人たちを助けるのであった。
全員罠から脱出させていかせた後、とりあえず朝食をとることに。
昨日の残り物だけど、やっぱおいしいな。
「冒険者になったときに、バンジーと組めたらラッキーだろうな」
「ああ、本当だな。これはうまい」
「うれしいよくっひっひっひっひ」
「まったく、男の人というのは」
「そうですよねぇ」
まだハクロとハマは互いに意気投合して話しているな・・・・。
女の子は長話をするというが、本当に長いね・・・・。
その様子に苦笑した時であった。
ばさぁっ・・・・
「ん?」
羽音がした。
それも大きな羽音であり、何かの鳥のようなものが着陸したような音だ。
何だろうと思って、その羽音の方を見ると・・・・
じーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ
なんかすっごくこっちを見ている顔が見えたんですけど。
じーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ
一瞬人かと思ったが、違う。
両手が翼、足が鳥のように鋭い爪を持っているあれは・・・・・
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「ハーピー」
鳥と人が合わさったかのような姿を持ったモンスター。両手の部分が翼になってはいるが、器用にモノを持てるらしい。メスとオスのハーピーに分かれてはいるが、どちらも同族との繁殖をせずに、他の種族との繁殖をする。どちらも幼い子供のような外見をしており、一部マニア達の間では人気が高い。
また、幼い子供の姿をしておらず、成長した大人の姿をした「クイーンハーピー」もしくは「キングハーピー」と呼ばれる超希少種の存在も確認されてはいる。こちらはマニア達の間では人気が低く、むしろ出会ったら血の涙を流すほど悔しがるらしい。著者にも理解不能。
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「らしいねくっひっひ」
いつの間にか、バンジーがどこからかモンスターに関する教科書をどこからか取り出して該当するページを読んでいた。
あのハーピーは・・・・ハクロと同年代ぐらいの見た目だから、クイーンハーピーかな?
クイーンとすぐに断定できたのは・・・・ハクロと同じようなものを持っていたので・・・。
じーーーーーーーーーーーーーーっ
そして、今僕らはそのハーピーにじっと見られているのであった。
「何なんだろう・・・あの子」
「俺らを見てはいるが・・・戦闘する意思はないように思えるな」
「観察するかのようにじっと見ていますねっひっひくうっひ」
「無表情で見られるのって、同じモンスターですけど怖いんですが・・・」
「何かしたいのかな?」
クイーンハーピーだとすると、超希少種。つまり、とんでもなく珍しいモンスターみたいだけど・・・何でかな?既視感というか、そういうのがあるような・・・・。
よく見ると、翼はまるで艶のある黒髪のように黒く、顔は・・ハクロと同じ綺麗な女の人。髪は短めのショートカット風で翼の色と同じように黒く、ちょっとアホ毛というか、くせっ毛が付いていてなんかピコピコ動いている。なんかそのピコピコ動いている髪が気になるんだけど・・・。
襲い掛かってくる様子はないようだけど、楽観できるような状況ではない。
クイーンハーピーだとすれば、強さはアラクネのハクロと同じぐらいのものらしい。
今の僕らの状態で言うならば・・・・もし戦闘になったら全滅の可能性がある。
相手の動向をうかがうしかない。
「・・・・見つけた」
と、何やら小声でハーピーがつぶやいた。
よく聞こえなかったけど、確実に何か言ったな。
とてとてと、こちらにハーピーが歩んできた。
念のために、こちらはいつでも臨戦態勢になっておく。
先頭にでたザンオが斧を構え、後方にてバンジーが杖を向けて、ハマは癒し科だから戦闘に向いていないのでバンジーより後方に下がり、僕とハクロはザンオとバンジーの中間に立つ。
即席戦闘態勢である。
「・・・・邪魔!」
いきなり相手が動く。
翼をはばたかせて、物凄い強風が発生した。
人に近い外見をしてはいるが、相手はモンスター。うちわであおぐ風の比ではなかった。
「うわぁぁぁぁっ!!」
「ザンオ!!」
鎧も着てはいたのだが、ザンオはまるで木の葉のようにあっという間に吹き飛ばされてハマがいるところまで吹っ飛んだ。
「ハクロ!糸で拘束して動きを封じて!!」
「了解です!」
すばやくハクロが動き、ハーピーに接近する。
ハクロの足の裏には、先ほどの強風を見たので素早く粘着性の高い糸がつき、そう簡単にはハクロは吹き飛ばされなかった。
「・・・・あなたではない」
「え!?」
ハクロが糸を出して巻き付けようとした瞬間、ハーピーは素早く羽ばたいて上空にとんだ。
ハクロの手が空振りをして、糸が地面に散らばる。
「・・・こっち」
すばやくハーピーが急降下をしてきた。
がしっ
「え?」
そのまま僕の肩をつかんだかと思うと、次の瞬間一気に地面が遠くなる。
「え、えーーーーーー!!」
どうやら、ハーピーに捕獲されて、そのまま上空へと連れ去られたようである。
遠くなっていくみんなを見ながら、そのまま僕はハーピーに連れ去られたのであった・・・・。
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ハーピーにライが連れ去られて、全員があっけにとられた。
「ま、まさかライを攫うとはねぇくひっひっひっひ・・・ひ?」
バンジーがようやく状況を飲み込んだ時である。背後から、物凄い殺気がを感じた。
「・・・よくも、よくもライ様を!!」
ハクロがものすごく怒っていた。
背後に炎が浮かんで見えるほど物凄く。
美人な顔をしているだけに、怒るとめちゃ怖い。
「皆さん!!先に先生方に知らせてください!!私はライ様を追いますので!!」
「あ、ちょっと!!」
呼び止める間もなく、ハクロはうぉぉぉぉぉぉっ!!と、叫びながら炎をまとっているかのようにその場を去っていった・・・・。
「・・・普段、おとなしそうな人が起こると怖いよねぇくっひっひっひ」
「同感だな・・・・しかし、あの従魔よっぽど主のライを慕っているのか正確にあのハーピーが飛んでいった方向へ向かって走っていったな」
「あの、ハクロさん先ほどライがさらわれる寸前に糸をつけていたので、それを頼りにしているのではないかと・・・」
とにもかくにも、残された3人は先生たちにライが攫われたことを知らせるために動くのであった・・・。
攫われたライを追ってハクロは走る。
目の前で、主であるライを攫われたので、怒りを真っ赤に燃やしてものすごい勢いで。
木々をなぎ倒し、ズドドドドドドドっと破竹の勢いで追いかけていく・・・。




