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サバイバル訓練

言い直すならば、野宿訓練。語呂が悪いのでこのサバイバル訓練となった。

 冒険者学校に入学してからひと月ほど、今日は学外に出て首都の近くにある森に僕らは来ていた。


「さて、今日の授業は2泊3日のサバイバル訓練だ!!」

「クンレンダ!!」


 冒険者になると、野宿することが増える。


 そのための経験を今のうちに積んでいくものらしい。


「でも、僕らは結構慣れているよね?」

「そうですよね」


 ハクロと顔を見合わす。


 村にいたときに森の中で泊まった時があるからね。


 何度もしているし、今回は楽かも。


「今回は、他の学科の生徒たちもまとめてこの森の好きなところでサバイバルすることになる!!戦士科、魔法使い科、癒し科、魔物使い科から先生方が適当に選んだ4人一組でサバイバルを行うこと!!」



 今回のサバイバル訓練は、他の学科との合同である。


 普段あまり合わせない学科との組み合わせだが、冒険者となったときにこの組み合わせが多いらしいから、しっかりしないとね。







 とにもかくにも、まずは選ばれたので集まって顔合わせとあいさつをすることにした。タルサは別のとこに行ったんだよね。


「俺は戦士科で大斧を武器にしているザンオだ。よろしく頼む」


 このメンバーでは一番体が大きい男子である。鎧も来ており、でっかい斧を背中に背負っているな。



「小生、魔法使い科、古今東西様々な薬草などをお任せあれ。バンジーですよ?くひひひ」


 ちょっと薄気味悪い笑いを浮かべるローブを深く来たぐるぐる眼鏡を着た男子だな。ちょっと不気味かも・・。



「癒し科のハマです。どうぞよろしく」


 こちらは白い清楚な服に身を包んだ、僕よりも背が低めの女の子である。なんかバンジーを見た後だとすごい癒されるかも。



 とにもかくにも、こちらも。


「魔物使い科、ライです。よろしく」

「その従魔のアラクネのハクロです」


 とりあえず、この4人と1匹でサバイバルか・・・。


 4人一組のグループで、森の中に入るのは順番の様なので少し待つことに。


「アラクネですかぇ・・・ちょっとその糸が欲しいかもくっひひひ」

「バンジー・・・怖いんですけど」

「こら!!今は訓練開始される時だ!おとなしく順番が来るのを待たねばならん!!」

「まあまあ、皆さん落ち着いてくださいよ」


 印象的には、常識人がザンオ、変人バンジーかな?ハマはこのカオス中和剤。


「とにもかくにも、我々は冒険者になるためにもこのサバイバル訓練を乗り切らねばならん。各自、力を合わせてこの2泊3日を無事に過ごそう!!」

「「「「おーっ!!」」」」


 とりあえず、ザンオがリーダーになったような形で、僕らは森の中に入った。



「取りあえず、まず何を優先すべきか!!」

「衣・食・住だよ」

「その中で言うと、まずは食料確保が求められるよねぇくひひひひひ」

「あとは、何処か体を休められそうな安全な場所が必要ですね」


 だいたいそれが必要なので確保しようとした時、ハクロが手を挙げた。


「・・・あの、私の糸でほとんどできますけど」


 ハクロの万能性を忘れていた。





 まず、2泊3日の拠点となる場所の周囲にハクロの糸でわなを張り、安全確保する。


 次に、水を探すのだが川が近くにあることを確認できたのでそこからくみ取ることができる。


 さらに、食料確保に関しては・・・。




「大量だな」

「すごういねぇくひひひ」

「さすがですね」


 森の中でハクロと遊んでいたからね。狩りとかそういうのも得意なんだよね。


 そのため、普通の猪なども数頭ほど捕獲できた。


 高いところにある木の実もハクロが取れるしね。


「スゴイな・・・お前ら二人だけで十分じゃないか?」

「と言うか、仕事ないんだけどっひっひっひひ」

「慣れていますよね・・・」


 三人に驚かれたけど、ここからは三人共の協力が必要である。


 まず、火を起こすのだがバンジーの魔法でつけてもらおうとしたら。


「生憎、火の魔法は使えないんだよねぇ・・・」

「だったら、俺がやってやろう」


 バンジーはどうやら火の魔法が使えないようだったので、ザンオが自分の斧と鎧をこすって火花を出し、それを種火にしてあっという間に火が付いた。


「おー、こういう火のおこしかたもあるのか」

「冒険者にして、火は基礎の中では重要だ。肉を焼き、獣を寄せず、明かりとなる。冒険者の基礎が詰まったものであるからな」

「くひいひひひ、では、火の魔法が使えない小生は別の事で役に立って見せるひひひ」


 怖い、なんか狂気の笑いみたいで怖いよ。


 だが、中身は案外まともの様で、何処からかフライパンを取り出した後、先ほどとってきた食材をてきぱきと料理し始めた。


「こういった料理と魔法には深い関係があるんで得意なんですよくひひっひっひ」


 てきぱきと進めるので、僕らはちょっと料理の手伝いをするだけに終わった。


「さて、出来上がりですよくひっひっひひ」


 出来上がった料理は、バンジーの気味悪さに反しておいしそうに仕上げられていた。


「うまっ!!」

「これだけの食材でここまで・・」

「おいしいですね!」

「最高だよ~」

「よろこんでいただけなによりでひっひっひひ」


木の実まで焼き始めていた時は何を作っているのかと思ったけど、氷の魔法で冷やしたりしておいしいスイーツになっていたし・・・。


「本当は秘伝の薬を入れたかったけど、今回は持ってきていなかったんだよね~くっひひひ」


 さらっと何か怖いことをつぶやかれたが・・・気にしにないでおこうか。


 ハマが念のためにポーションとか作ってくれていたけど、今回は使うことはないかな?







 夜になり、寝床にて寝るための道具は、ハクロがいろいろ糸を編み込んで簡易寝袋が作られ、それに入って僕らは横になった。


 焚火は火が消えかけだけど、周囲にはハクロお手製の罠が張り巡らされているから危険はほとんどないからね。


 なお、ハクロは近くの木に糸をかけてハンモックにして寝ている。というか、すでに寝息が聞こえてきているってことはもう完全に熟睡しているな。


「それにしても、ライの従魔がここまで便利だとはな」

「ザンオの火のつけ方も豪快ですごいじゃん」

「バンジーの料理はすごかったですよね」

「いやいや、食材がよかったからですってくっひいっひひ」


 今日を振り返り、互いに感想を述べる。


 そのあとは、互いになんでこの学校に通い始めたのか話すことにした。


「俺はな、本当は貴族の家出身なんだ」


 ザンオから話すことになったのだが、いきなり驚く言葉が出た。


「貴族だったの?」

「ああ、だけど三男なんだ。家を告げるのは長男とかだからな。だからこのさい冒険者になって一旗揚げてやろうと思ったんだ」

「へー、一旗揚げてかっくひひっひ」

「なかなか立派な夢ですね」


次に、バンジーが。


「小生はね、両親とも魔法使いの冒険者だったのさくひひひひひひひ」


 冒険者用学校に入ってくる生徒の両親が、どちらも冒険者だったというのはそこまで珍しいことではないけど・・・どっちも魔法使いだったのか。


「焦がれて、立派な魔法使いの冒険者になってやろうと入学したのさくひひひっひひ。その途中で料理は魔法にもつながることに気が付いて、研究していたら料理の腕も上がったというわけだよくっひっひ」


 いちいち笑っているのは、わざとではなくて変な薬品作って飲んでしまって以来止まらなくなっただけらしい。解毒剤も現在研究中らしい。意外にも苦労していた。


 ハマがその話を聞き、協力するとか言い出した。


 癒し科もこういった解毒剤とかの研究をしているから力になれそうだからと。


 サバイバルが終わってからということで約束した。


 


 ハマの話となったが・・・


「私はですね、孤児院から来たんですよ」


 ・・・・一番重い話だった。


 両親に幼い頃顔もわからない頃に捨てられ、その時から孤児院で過ごしていたという。


 最初のころはいじめられもしたが、そのうちいじめもなくなった。


「その時に、よく遊びに来て下さったのが冒険者の人たちでして、それで恩返ししたいなと思って、様々な怪我などを治せるようなのにつこうと思って」



 回復魔法とか薬草の事とかで学んで、現在一生懸命努力をしているそうだ。


 話を聞いていい話だなと思っていたら、ザンオが横で物凄い号泣していて僕とバンジーはぎょっとした。



 ・・・ザンオが泣き止んだところで、僕の話をした。



「~~というわけで、魔物使いの冒険者になろうと思ったわけだよ」

「なるほど、一番普通だな」

「普通だったねくひっひっひ」

「普通ですね」


 ・・・・なんだろう、この微妙な評価。


 話しているうちに、いつの間にか僕らは眠っていたのであった・・・・。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「全員それぞれうまいことサバイバルしているな」

「サバイバルシテイルナー」


 深夜、上空をヤマちゃんに掴んでもらって飛んでいるバッバンノ先生の姿があった。


 上から見れば、あちこちで生徒たちが焚火をして寝ていたりなどの姿が見れる。



「ああしてみると、うちらの若い頃を思い出すわ」

「若い頃って・・・」


 その横には、魔法使い科担当教師のエリア先生が飛行魔法によって飛んでいた。



「『現在、森の中に危険なモンスターの姿は見られず』・・・・灯火信号解読したわよ」

「あっちはあっちで飛べないからな」

「トベナイカラナー」


 戦士科、癒し科担当の先生たちは飛行ができないので、こうして森の中を歩くことによって生徒たちの安全を見回っているのである。今は夜なので、光る魔道具によって信号を上空に送って知らせているのだ。


 危険なモンスターは、この森では出現が余り確認されていないが念のためである。


 モンスターはいつどこに現れるのかは分かっていないこともあるのだ。


「ん?あの灯火信号は・・・癒し科のリーマア先生からか。『魔物使い科の生徒のアラクネの罠に引っかかりました』・・・・うわぁ」

「生徒の従魔の罠に引っかかるとは・・・情けない」

「ナサケナイー」


 とにもかくにも、先生を罠から助けるために二人はその場に向かうのであった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


同時刻、先生二人が飛んでいた方向とは別の方向から飛んできているモンスターがいた。


「・・・・こっちかな?」


 なんとなく、本能的にわかるようなそんな気持ち。


 説明が付けにくいけど、昔から知っているようなそんな感じ。


 惹かれるような、呼ばれるようなそういった不思議な気持ち。



 その正体が何か確かめるために、そのモンスターは両手の黒い翼を羽ばたかせて、その場所へと向かって飛ぶのであった・・・・。













仕掛けた罠:踏みつけ式、線を切ったら発動式、引っぱったら作動式など様々。

今回、癒し科の先生がかかったのは踏みつけ式。

ブービートラップともいうのかな?

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