やはりこうなるのね
まあ、ギルドマスターへの説明は省略
「・・・・え、ちょっと待ってほしいんだけど」
ギルドの二階にある執務室で、ギルドマスターのアーガレストは驚いた後少々頭の整理をした。
「依頼は終えた。それはわかる」
「で、その後観光をついでにした。それもわかる」
「古道具屋でミミックを従魔にした。ミミックは従魔になった例がないけど、一応モンスターだから従魔になってもおかしくないのはわかる」
「でも・・・・それが人の姿をとれるってのはわからないんだけどぉぉぉぉお!!」
叫んだあとギルドマスターのアーガレストははあっ、はあっ、はあっ、と、息を整切らした。
うん、ムリもないよねそりゃ。
「まったく・・・指名依頼を達成したのはいいけど、そのすぐ後にとんでもないことを持ち込んでくるとはどうなっているんだい?」
「それはこっちが聞きたいですよ・・」
何とか落ち着いたギルドマスターと、とりあえず話し合うことにした。
「ミミックが従魔になった例は初めてなのは別にいいんだけど、そのモンスターが人の姿になったというのが驚きだよ」
「まあ、ムリもないですもんね」
ハクロやヤタ、ミアン、アルテミス、などはまだいい。
もともと人型に近いモンスターなので、別に驚くようなことはない。いや、見た目が普通のとは違って美しいとか、希少種だとか、神獣種だとかいう点は別に置いておくとしてだ。
リーゼの場合は、ドラゴン系統のモンスターの中には人化して人と変わらない姿に慣れるものがいることは過去に確認済みなのでこちらもまだいい。
ロウは・・・・スライムは元々多種多様に進化して様々な物になるのでそれもまだいいだろう。
だが、エリー・・・ミミックが人の姿になるなんてことは物凄い驚きがあるだろう。
今まで確認されてもないし、そもそも確認しようにも迷宮限定モンスターで遭遇率が低く、「人喰い箱」と言われるほど人を食べるので近付くのも危険だからだ。
「はぁっ・・・本当にライ君は様々なことを持ちこんでくるよね」
もう何かをあきらめたかのようにため息をつくギルドマスター。
「私たちが言うのもあれなんですが・・・」
「・・・・我が君って、本当に何かしらの問題を引き起こしますよね」
うんうんと全員うなずいたんだけど・・・・なんかひどくないか?
「ご主人様が依頼で遠出した際に、何かしらの問題を持ち込んできている確率が89%デス」
ワゼがその確率を言ったけど・・・結構高いよね。
エリーは箱の姿になっていたが、何やら沈黙を守るようである。
「しかし、ミミックが人の姿・・・それも女性の姿になるのはどういうことなのかはミアンさんの言っていることであっているような気がするよ」
「やっぱそういう物じゃろうな」
ミミックは迷宮に来る冒険者たちを食べるモンスター。
当然、冒険者の方でも警戒はするようになってくるだろう。
それで油断させるために、人に近い姿になって誘うように進化したというのは納得がいくものである。
「ただ、その古道具屋の方でその姿が確認されていなかったところを見ると、その日の夜のうちにそんな感じに進化したということになるね」
「そういう事なんでしょうけど・・・これってどういう分類になるんですかね?」
進化してなったとすれば・・・ミミックの進化種扱いだ。
「そうだね・・・ミミックはその箱の外観で詳しい種類があるんだけど、現在確認されているミミックの種類は、『ミミック(普通の外観)』、『メタルミミック』、『ゴールデンミミック』、『ロイヤルミミック』。その希少種として『パンドラボックス』ってのがあるけど、そのエリーはこれらに全く当てはまらない・・・・新種のミミックとしての扱いだろうね」
結構あるんだな。
「ともかく、ロウの時のようなスライムの専門家じゃなくて、ミミックに関する専門家はいないからこの場合は新種のモンスターとして発表されるだろうね」
「でも、発表されたら発表されたで別の懸念があるんですけど」
ロウの時は、同じようなスライムがいないか探しまくった人たちが出たぐらいだからな・・・・。
エリーの例が出ると、迷宮へ行って同じようなミミックを探す人が出るであろう。
しかも、スライムの場合と比べて死亡率が高いのはシャレにならないであろう。・・・スライムの場合は、軽くて素っ裸になるぐらいだけど、ミミックだと軽くて「ぐちゃぐちゃ」だからね。
「いや、今のところ迷宮は国外の方にしかないようだからね。国内で見つかった場合は行く人が出るだろうけど、高ランク冒険者以外は国外に出ることはほとんどないんだよ」
「でも、それって結局迷宮へ向かう人が出るってことになりますよね」
「まあ、自分の命はその人次第だからね。そこはもうどうにもならないさ」
肩をすくめるギルドマスター。まあ、冒険者やるならそのぐらいの自己管理はしないとね。
「ま、そこは別に意図しても、ライ君・・・君ってなんかこう、人型のモンスターの美女ホイホイなの?」
「それを言われると否定しづらいんですけど」
いきなりそう言われても、否定ができない。
全員、きれいだし、可愛いし・・・・
「そのあたりはなんというか、私にとっては微妙ですね」
「・・・同意というか、なんというか」
「ウミュ?」
「兄様が誰を従魔にするのは別にいいんですけど、たまには可愛らしい・・・グリフォンとかフェンリルとを従魔にしてほしいです。あのモフモフ感、昼寝の時に良さそうで・・・・」
「いや、そのモンスターは結構やばい奴じゃからな?」
「それを言うならば、我輩たちも相当なものでありますが・・・」
「・・・・・」
全員一致の見解のようだけど、なんだろうこの感じ。
「まあ、私の『魅了の魔眼』に対しての耐性も持っているからね、変な女性にひっかからないと思いたいわね」
ルミナスまでなんか言ってくるんですけど。
「まあ、魔物使いに従魔が集まってくるのは自然なこととはいえ、こうも美女のモンスターばかりを集めているとそのうち『色魔』とか『リア充王』とか『ハーレムキング』なんかの異名が付きそうだよね」
ギルドマスター・・・結構ひどそうな異名を付けていないか?
「ついでにご主人様に言いますと、今ギルドマスターがおっしゃられていたのは大半の男性冒険者に言われています」
「え・・・・?」
ワゼの方からなんかとんでもないようなことを聞いたような気がする。
あれ?なんかよくわからないけどもはや何かが手遅れになっているのか?
「ともかく、とりあえず指名依頼達成ということは確認できたことにしておこう。これ以上この話をしていると収拾がつかなくなりそうだしね」
まあ、とりあえず依頼達成は確認されて、従魔の新規登録もできたけど・・・・・僕の評判って他の人にはどうとらえられているの?なんか怖い。
恐ろしい不安が残ったのであった・・・・・
すでに何かが手遅れなような気がする・・・・そう思うライであった。
なお、後日エリーに対してのファンクラブが結成されて、ここまで増えたので統合して「ライの従魔のファンクラブ」ができたそうな(非公式・無許可)。
ライが美女もとい従魔を加えてくるので、実は次はどんな美女もといモンスターが加わるのか賭け事も行われていたりする。
今回のエリーは大穴だったようで、当てた人は物凄く儲かったそうな。




