閑話 ハクロの思い出話
ちょっと昔話
私は、物心がついたときから森にいた。
なぜこの森に私はいるのだろうか。その疑問はあった。
でも、すぐに生きるのに必死になってその疑問を考える暇が無くなった。
私を狙うモンスターが出てくるからだ。
最初、私の体は小さくてよく他のモンスターに襲われた。
スライムに飲み込まれそうになったり、ゴブリンにまるかじりされかけたり。
長い年月が経ち、私自身も成長して身を守るすべを身に着け、襲われるようなことはなくなった。
すると、考える時間ができ、私は森の中を探索したりするようになった。
時折、森の中に人間・・・というか、なぜかそうわかる人たちが迷い込んできた。
だが、本能的に姿をさらしたくなかったので糸で誘導したりしてさっさと森から追い出した。
しかし、年月が経つうちに人間たちによって森が切り開かれていったので、私は違う森へと引っ越した。
そこでまた長い年月を私は過ごした。
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・・・・・眠るとき、私はたまにある夢を見る。
この姿とは違う、でも同じようなモンスターである私の姿を。私であって、私ではない姿。
そして、そんな私のことを抱きしめてくれる人を見る。
何やら黒い衣のようなものをまとっているが、その人を夢の中の私は愛していた。
そして、その人も同じように私を愛してくれていた。
ほかにもその人を愛した者がいたようだが、顔すらまともに覚えていない。
でも、その人は必ず私の頭をなでて、抱きしめて・・・・
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そのあとにまた夢から覚める。
一体夢の私は何者だろうか。そして、その私が愛していた人はいったい誰なのだろうか。
疑問を持つもそのうち忘れてまた夢に出る。そんな毎日だ。
そんな毎日を過ごしていたある日、森の中で鳴き声が聞こえた。
人間だろうか?いつも糸を利用したりして適当に追い払ったりしていた。
だが、その時の私はなぜだが惹かれるかのようにその鳴き声の主のところへ向かった。
人間の子供が泣いていた。まだ幼く、なぜこの森でこうしているのか疑問になった。
だけどほっておけなくて、つい近づいた。
・・・そのあとに、私の蜘蛛の体の部分をまともに見たその子がおびえたのを見て少し落ち込んだが。
いつの間にか話せるようになっていたので、やり取りしているうちに、その子から「ハクロ」と呼ばれた。
・・・・ハクロ、懐かしい響き。どこかで聞いたような、そんな感じ。
その時、そのこと私の間には何かがつながり合ったような気がした。
まるで、昔から愛し合っていたかのような、そんな感覚が。
・・・いつの間にか、私はその子の従魔になっていた。そして、その影響か知らないけど、知らないはずの知識もいつの間にか頭の中に入っていた。
従魔になった後、その子の両親が来て、私を見て驚いたが、この子が一生懸命説明して、私の方からも話して家族となった。
ライという名前なのを知って、ライ様と私は呼ぶようになった。
村で一緒に過ごし、遊び、学び、たまにライのお母さんに叱られたり。げんこつは痛かった・・・・。
でも、私は従魔としてよりもライ様の家族として自然と過ごしていた。
たまに抱きしめたときに窒息させかけているけど。
風呂に一緒に入るのも拒否されるようになってきたし残念である。
いつしか、あの私であって私ではない夢を見なくなった。
だけど、たまに重なる時がある。
ライ様が、あの夢に出てきた私を愛してくれた愛しい人の姿と。
今はまだライ様は子供だけど、いつしか私への恋心が芽生えて、あの夢の中と同じように、私を愛してくれる時が来るのかな?
いや、もう十分に互いに好きだといえる。
姉弟のようにも、家族のようにも、恋人のようにも私は思う。
・・・たまに真夜中、ふと目が覚めたときに、私は寝ているライ様を見つめる。
そろりとハンモックから降りて、その顔をやさしくなでる。
そして、口を近づけたくはなるが、これは抑える。いつしかライ様自身からもらえるかもしれない日まで我慢である。
・・・私は思う。この人に一生ついていこうと。
もし、この世界で誰もが敵になったとしても、私はライ様のそばに居続ける。
それが、私が従魔になってからずっと心に決めていること。
そして、まるで生まれる前から約束しているかのような事・・・・・・・。
さて、次回から学校生活が開始されはじめるよ




