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STO ― 昭和東京オペレーター物語 ―  作者: TAM-TAM
Final Stage.たったひとつの冴えた空中殺法
39/41

Epilogue.(1)帰還


「それでは~、各パーティのリーダーさんは、点呼をお願いいたします~」


 翌日の午後、場所は最初の説明会の時に使用した大会議室。遂に島津達“STO”プレイヤー達が元の日本へと帰還する時を迎える。


 昭和史に残る大激戦の末、遂に暗黒の巨人アロガントを倒した“STO”プレイヤー一同はその夜に生協の駄菓子とジュースを消費し尽くす勢いで大宴会に突入した。

 そして翌日の今日、午前が急遽全員自由時間となったので緒賀が強く主張していたネカマ風呂計画を実行する流れとなったのだ。


 一部のネカマ達がツヤツヤの笑顔で帰ってきたのを見て男子達や腐女子が興味津々だったが、「ネカマは大抵恥じらいが欠けてるから実物見ても興ざめで面白いもんじゃ無いと思うぞ」とは途中でのぼせて倒れた堀井を背負って帰ってきた島津の弁。


 それはさておき、各パーティの点呼も完了し、昭和(こちら)の日本へ呼ばれた時と比べて一人少ない人数が計上された。


「本当に、本当に感謝感激雨あられでございます~」

「いや~、ホント君たちは日本の救世主だよ! 教科書に載せて末永く語り継ぎたいところだ!」


 こちらでのナビゲーター役のHAR(ハル)と若木学人文部大臣とが、最後に一人ずつ手を握りながら挨拶の言葉を述べる。


「まだ残党は居ないとも限らないですし、復興だって大仕事です。本当に大変なのは、むしろこれからかも知れませんね」

「なあに、未来への希望があれば人は何度でも立ち上がるよ。歴史が証明済みだ」


 控えめな山路の言葉に、若木大臣がニカッと眩しい笑顔で応えた。

 そう。空襲で焼け野原になっても、原爆で何もかも吹き飛ばされても、台風や地震で壊滅的な被害を受けても、日本は過去幾度も復興した経験がある。今回もきっと、人は未来を向きながら瓦礫を片付け地盤を整え、新しい町並みを築いていくことだろう。


「なあ、ハルさん、オレはこの身体気に入ったンだけど、持って帰っちゃダメか?」

「申し訳ございません~。駄目と言いますか理論的に不可能です~。前にも申し上げました通りこちらの日本は皆様方の日本と時空が異なりますので物質的なやりとりが出来ないのですよ~」

「いや、諦めんぞオレは! 不可能な事こそ気合いと根性で何とかするのが古くからのお約束!」


 隣で緒賀が吼えているが興味無いので他人のフリをしつつ、島津はもはや着慣れたブレザー制服の内ポケットから最後のタバコ型チョコを取り出して、口に含んだ。


「ま、貴重な体験はできた。それなりに面白い1ヶ月だったよ。向こうに帰ったら誰も信じちゃくれんだろうけどな」

「あー、なんか帰るのが恐いわね。仕事とかどれだけ溜まってるかと思うと」

「……言っちゃ駄目だ」


 恐ろしい未来図を提示してきた悠里を神野が黙らせ、そのまま後方に下がり次のパーティにHAR(ハル)達との会話権を譲る。


「じゃあ、HAR(ハル)も大臣も元気でね」


 共に激戦を戦い抜いた戦友、『姫様のお茶会』のオペレーターの釘屋は、一瞬複雑な表情を浮かべつつも無理やりいつもの強気な笑みを作って言った。


「あ、あのっ、あまりお役に立てませんでしたが、この経験は今後の人生に活かしますっ」


 大学生パーティ『明大第三古典部』のガンナー堀井は、最後まで初々しい清純派枠に収まっていた。


「私もこの身体とお別れするのはお名残り惜しいですが、ひと時の淡い夢、堪能しました」

「後半は戦線離脱したのが悔しいけど、少しでも日本を守る助けになれてたなら嬉しい」

「俺達は消える訳じゃない、新たな戦場に旅立って行くだけだ。皆の心の中でいつまでも生き続けるのさ」


 戦いの終盤で何度か力を貸してくれた『お姉さんの保健室』『銃撃少女帯』『グングニル』の面々も、それぞれの言葉でHAR(ハル)達に別れを告げる。


 やがて、帰還の準備が整い、HAR(ハル)の表情がきりりと引き締まる。


「それでは、時空相転移装置、起動いたします~」


 安全の為に若木大臣を外に出し、会議室の中心に設置されたアマチュア無線機のようないかつい機械のスイッチを入れた。


「皆様は椅子におつきになって、睡眠欲に身を任せて下さい~。寝て起きたら、皆様の故郷の方の日本でございます~」


 HAR(ハル)が言葉を言い終えないうちから、島津達の瞼が重くなっていき、そして……





 この日をもって、“全国高校サバゲー部特別合宿”略して“全サバ特”の活動は終了。部員達は皆帰還したと伝えられる。

 その後『災害対策支援』の名目で現地入りした自衛隊の活躍により、僅かに残っていた侵略者(インベーダー)の残党も駆除が完了し、日本政府は事態の収束宣言を出した。

 本格的な復興が始まり、日本国民達は少しずつ元の暮らしを取り戻していく。


 そして後日、銀川総理により“全サバ特”に国民栄誉賞が贈られた。

 しかし、マスコミ関係者やジャーナリスト達がどれだけ調査しても、その“全サバ特”を構成していた少年少女達の素性は謎のベールの向こう側だったと言う――



※ネカマ風呂シーンは、本編に入れるには過激で本作のハードボイルドな雰囲気を損なうことになるため、需要とか時間とか執筆意欲とかが揃いましたらノクタ


* おおっと *


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