カナミちゃんと小人さん
カナミちゃんはいつも空想をしている女の子。彼女の心の中は、まるで絵本の世界です。
現実には辛いことや悲しいことがたくさんあります。でも小鳥や花を眺めながら色々な想像をふくらませていると、嫌なことは全部忘れられるのです。
優しく、温かい空想の世界は、カナミちゃんにとって現実よりも幸せな場所でした。
そんな性格がもたらした奇跡でしょうか。カナミちゃんはある日、原っぱで小人さんを見つけました。空想が現実になったのです。
これで想像の中だけでなく、現実でもハッピーになれます。大喜びのカナミちゃんは、小人さんをお家につれて帰りました。
お母さんは男の人と遊びに行ったので、今日はお家に帰ってきません。なのでカナミちゃんは夜おそくまで、自分の部屋で小人さんを観察しながら絵を描きました。スケッチブックに夢をたくさんたくさんつめこみます。
夜の十二時になりました。そろそろ眠ろうとカナミちゃんがイスから立ち上がると、足元から「ギィィィィィィ」というすごい声が聞こえてきました。
ビックリしたカナミちゃんが足元を見ると、なんとそこにはつぶれた小人さんがいました。カナミちゃんはうっかり小人さんをふんづけてしまったのです。
そして彼女は思い知らされる…
実体を持って現れた小人が、都合の良い空想世界の住人ではなく…
辛いことや恐ろしいことが起こる…
現実世界の一部だということを…。
大嫌いな現実に空想を持ち込み、メルヘンな存在になりきることで何とか日々をやり過ごしてきたカナミ。しかし憧れの存在の死に触れることで、彼女は完全に目を覚ましてしまった。
突然、部屋中にガリガリという固いものを削るような音が鳴り響いた。ビクッと体を震わせ、周りを見回すカナミ。そして次の瞬間、彼女は「キャアアア!」と叫び声を上げる。
壁や天井を食い破り、憤怒の形相の小人達が次々とカナミの部屋に入ってきたのだ。カナミが潰してしまった小人の断末魔が、彼らを呼び寄せたのだろう。
カナミは部屋の外へ逃げるためにドアノブを掴もうとした。しかし小人に両足のアキレス腱を食いちぎられ、転倒してしまう。
床に倒れたカナミが激痛のあまり叫び声を上げようとすると、今度は喉を噛みちぎられ、声を奪われる。
苦悶の表情を浮かべ、喉元を押さえながら身体をよじるカナミ。そんな彼女に容赦なく、無数の小人達が襲い掛かった。
ある小人はカナミの眼球を引き抜き、またある小人はカナミの腹を食い破る。
カナミの肉体は、どんどん失われていった…。
いつしか彼女は、痛みを感じなくなっていた。視覚や聴覚も失われていた。命の灯は、今まさに消えようとしている。
しかし、現実世界から極限まで切り離されたその状況が、カナミにかつてないほど深く、濃厚な、空想世界を体感させることになる。
そこは楽園でした。現実に邪魔されることのない、とってもとっても幸せな空間です。
楽園には小人さん達もいました。カナミちゃんは素敵な世界に連れてきてくれた小人さん達に笑顔で「ありがとう」とお礼を言います。
もう不安や孤独に襲われる心配はありません。カナミちゃんはたくさんのお友達と一緒に、仲良く元気に遊び続けました。
楽園に…
永遠の夜が訪れる…
その時まで…