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プロローグ

「力が、欲しい?」

突然の言葉だった。彼は呆然と目の前にいる女を見上げる。彼は首を傾げる。力とは、なんだろう。

「何者にも屈しない力、常軌を脱した力。それを私があなたに授ける。代わりに少しばかり働いて貰うわ」

女の言っている言葉の意味がよく解らなかった。抽象的な言葉の内容に、少しばかり混乱する。しかし、何者にも屈しない力、というのには少し興味を持った。

彼は、女の言っている事を利害しないままに首を振った。

男は知らなかった。

悪魔は、心のすぐ背後にいる事を。


闇夜に銀閃が煌めく。銀閃を煌めかせているのはまだ若い青年だ。カーゴパンツをブーツインし、タンクトップの上からシングルのライダースを着ている。色彩は全て黒で統一されており、銀閃がより一層輝かしく見える。よく締まった四肢を動かし、驚く程に鋭い銀閃を、右手で持った刀で煌めかせている。

青年は独りで素振りをしている訳ではない。銀閃を、対峙している敵に向けて放っている。

対峙している相手は黒い全身をモヤモヤした黒い何かで覆っていた。充分な殺傷能力を持った鋭い爪を使って青年に攻撃を仕掛ける。

一進一退の攻防である。お互い、一撃が決まらず、長期戦になっている。

青年の息が上がり始める。対峙する黒い相手はそのような素振りを一切見せていない。

「あっ!」

青年が声をあげる。足を縺れさせて転倒する。刀こそ手放さなかったものの、両手を地面についてしまった。あまりにも大きな隙だった。

黒い相手が青年の首筋目掛け爪を突き出す。首の肉を抉る、その刹那。

ドゴゥンッ!轟音が黄昏時に鳴り響く。

黒い何かは、火だるまになり悶絶する。その隙に、青年はその首目掛けて銀閃を放つ。

ゴトリ、と首が落ち、黒い何かは動きを止める。

「瑠衣」

青年の静かな声を受けて、大分離れた所から華奢な女が現れた。鮮やかな赤いドレスは非常に人目をひく。だが、それ以上に彼女自体が目をひく。

雪のように白い肌。川のようにサラサラと動く髪。宝石を埋め込んだように煌めく瞳。男女問わずに引け目を感じてしまうくらいの美女であった。

青年はそんな瑠衣に怒りの目を向ける。

「手伝うのが遅いじゃないか」

静かな物言いに、明らか過ぎる敵意を込めていい放つ。端正な顔立ちが台無しであった。

「あの程度の敵、きよくん独りで充分と思ったの。ごめんなさいね、あなたには荷が重かったみたいね」

ビキッ、きよ、と呼ばれた青年の頭に青筋が浮かぶ。長期戦で疲れ、かなりフラストレーションが高いのだ。それに加えて瑠衣のこの人の感情をいちいち逆撫でする言葉を受けて、怒りが激化する。

「あぁー?てめぇ、サボっておいてなんだぁ、その物言いはよぉ?てめぇのその魔法だって、俺が時間稼がなきゃ、その辺のつまんねぇ売れねぇシンガーの歌詞の方が三倍は楽しめる意味のねぇ言葉の羅列だろぉがよ?」

犬猿の仲。なんだかんだ組んで「仕事」をする二人は「組織」からそう呼ばれていた。

相性は良い上に、二人とも腕が立つ。そのクセ性格の相性は最悪。それが彼らの欠点であった。

「あなたの感性は非常に下品だものね。合わなくても仕方ないとは思ってるわ」

売り言葉に買い言葉。瑠衣は飄々と言い放つ。

「じ、上等だぁっ!」

きよの怒号とともに、二人のケンカが始まった。


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