残夏
夏の残り香、ふと香る。
その微かな記憶に、あなたは何を感じるのでしょうか?
わたしは、あなたを感じます。
世巫女は座っていた。太陽が一日の仕事を終え、家路にゆっくりと帰る帰宅途中、世巫女はのんびりと公園のベンチに座っていた。
今日は、会えるのかな?
そんな淡い期待を胸にぼんやりと太陽を眺めていた。
ここ最近、世巫女はこうして公園のベンチで太陽を眺めては、考えるのであった。
時は九月、季節は秋、時間は夕暮れ。
世巫女の心は揺れていた。
もう帰ろうかな?
いつまでもこうしちゃいられない。わたしも帰らないと。
それでも世巫女がずっと座っているのには理由がある。
あなたに会う為に。
秋になると思い出す。冬になり、春が来て、夏が訪れる。そのたび、世巫女は自分がずっとこうして公園のベンチに座っていることに、ただただうんざりする。
わたしも歩かなきゃ。
そんなことを考えながら、ただただ空を眺める。
時刻は夜。
世巫女は空を眺める。
天には満月。
あるはずの無い花を空に探す。
いるはずのないあなた。
夜空に花が咲いたその時、あなたは横にいた。
わたしは、秋の匂いに包まれながら、ただただ花を探していた。