第九話
「予想外だよ、こんなの」
「ここまでとは予想してなかったな」
ウネウネと迫ってくる三匹のストーンイーター達。
一匹にはマリアが、一匹には俺、残りの一匹にはニ匹のクロウが対処する。
1対1でも勝利できるクロウを二匹割り当てる。俺とマリアは特にダメージなく勝てるので鉄板の構成だ。
「はいはいはい! ミミズが俺を止められると思うなよ」
足払いから体勢を崩し、右手で掴み上げてハイキックをたたき込む。
そして、追撃として左手でフックを繰り返す。
ぐったりした所でストーンイーターを放り投げる。
「さて、マリアは……と、俺が手を貸すまでもないか」
既にストーンイーターは殆どHPは残ってない。
ならばと、クロウ達の方に移動する。
「やはり、速度はゆっくりか……」
ストーンイーターのHPは半分程、クロウ達は1/5も減ってない。
俺はそのまま飛び蹴りをぶちかました。
「アンサモニング、クロウ……アンサモニング、クロウ……これで残MP15。また、二匹クロウのサモンが出来るな」
「随分沢山モンスターいるけど……今日は誰も町の移動してないのかな?」
まあ、俺達8時からやってる訳だから……普通に考えて一番乗りじゃないだろうか?
「リポップの関係上、俺達の後なら安全に街道を進めるだろうさ」
因みに大分前にレベルが上がった。
魔法系スキルに不足が出ないようにする為、魔力を増やしている。
力2、知力3、魔力7、体力5、速さ1、運2
HP、23
MP、25
攻撃力、3
防御力、3
魔攻撃力、4
魔防御力、6
レベルは4。これで俺も名も無き村に入る事が出来なくなった。
戻る事はないが、これで確実に帰路がなくなったな。
意地でもミカールの町に行かないとな。
「そうだね。ねぇ、シュール、あれ……」
「ん? あれは……ビーが二匹か。プレイヤーが一人……」
蜂型モンスター相手に、俺達と余り変わらないレベルの服(村人の服とでも言えばいいのか?)を着た、しかも素手で相手をしている女性プレイヤーがそこにいた。
いや、あれは戦闘じゃないな。ビーが一方的にプレイヤーを蹂躙してる感じだな。
一撃のダメージが低いからなんとか生きてるけど、このままじゃ駄目だな。
「どうする? 行くか?」
「この時間じゃ、他にプレイヤーいないしね。シュール、いけるでしょ? 僕達までやられたらやだよ」
問題ないだろう? あのプレイヤーだって戦えるだろうし、俺にはクロウもいる。
「マリア、ディフェンスを」
「うん、わかった! 汝の身はいかなる力もはじく、ディフェンス!」
俺は自分の体に白銀の輝きが収縮するように降ったのを確認すると、クロウを二匹呼び出してビーに向かって走り出す。
「おい、しゃがめ!」
「え? きゃ!」
俺の声に反応してじゃなくて、走り寄る俺に驚いたようにしゃがみ込む女性、ネームはルーナルミナとなっている。
俺に脅えてるようで一寸ショック。
しかし、それは顔に出さないようにして、左右の手で綺麗にビーを掴むと地面に叩きつける。
「弱い者いじめは終わったか? 蜂さんよ? さあ、懺悔の時間だ……」
手を離した俺は、交互に拳を繰り出しながら後続のマリアとクロウ達が来るのを待った。
「有り難うございました。あのままだったら……私……」
「気にする事じゃない。ラグナロクは助け合いだろ? 俺はシュールだ。ルーナルミナ、君もレベルがいくつかは知らんが、俺達と大差ないだろうしビー二匹は死亡フラグだろう? 時間も時間だし、運が良かったな」
「間に合って良かったよ。僕はマリア、ルーナルミナさんだね、よろしくね」
女性同士だから話が弾むんだろう? 軽く疎外感を味わった俺は、一歩下がった位置からその話に耳を傾ける。
そんな中、頭上に表示あり……履歴確認する。
クエスト?
今まで無かったし、また臨時クエストか? 内容は……新米鍛冶を守れ、か。この中に新米の鍛冶屋がいるって事か。周りを見渡す。マリアとルーナルミナ、クロウがいる。
クエストって事は、彼女しかいないよな。実際守ったし……なら、ルーナルミナはNPCなのか?
「ルーナルミナ、お前は鍛冶職人なのか?」
「いえ、そんな、職人なんておこがましいです……シュールさん達も見てたでしょう? 素材の一つも自分で取りにいけないんですから」
「え、なに、どういう事?」
マリアはよくわかってないみたいだ。
臨時クエストについて説明する。
「こんなにリアルなんだぁ。僕と話してても全く違和感なかったよ……」
「これが世界一のMMOと言える所以なのかもな」
しかし、こんな所にもNPCから始まるクエストがあるなんて……しかも、マリアが会話をして尚違和感がないなんて……。
流石は世界一!
「ルーナルミナ、俺達はミカールを目指してるんだが、君はどうする?」
「は、はい……今のビーに鉱石を入れる用の袋をやぶられてしまったので……あの、よろしければご一緒させてもらってもいいでしょうか?」
ここでの返答が、クエストの受諾になるのか?
「場所はミカールの町で相違ないんだな?」
「はい、流石の私でもミカールまで行けば一人でも帰れますから」
「確かにそうじゃなきゃ生活出来ないしね」
断る理由もない、俺達はこの鍛治の少女ルーナルミナと共にミカールを目指すことにした。