表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/38

第五話

「スキルって凄いな。挑発が慣性を無視して、目標に向かわせるスキルだとは思わなかった。一寸侮ってた」

「僕もパーティーは初めてだから、あんな仕様だと思ってなかったよ。一人でやってた時は変わらなかったし」


 先の俺達が全滅したラビット戦。

 そこで使われたマリアのスキル、挑発。

 それは、空中で俺に迫っていたラビットの向きを、マリアの方向に変えさせる程の力があったのだ。


「シュールも何か覚えてないの? 初めの一個目は覚えやすいって言うけど」


 スキルねぇ。そんなの覚えた感じはしなかったが、マリアのスキルが優秀すぎるからもし覚えてても気後れするよな。


「どれどれ……ん? なんかあるな、二つ」

「二つも!? 凄いよ! 二個目からは中々覚えられないのに」


 ふーん、運がいいんだ? でも、使えない奴だったら……。


「何々……ライトボールとサモニングだと」

「ライトボールって魔法じゃない!? 凄いじゃない! 僕が知ってる中で、魔法を使えるプレイヤーはいないよ! レアスキルだよ」


 いや、名も無き村じゃ皆一個から二個しかスキル覚えないんだろ? じゃあ、魔法系を習得する確率はそう高くないだろうよ。


 とりあえず、スキルの説明は……ああ、あったあった。


 ライトボールはマリアの言う通り魔法だな。光属性か。

 一昔前のゲームだと、光属性は選ばれた奴しか使えなかったりするんだけど……MMOでそれはないか。


 サモニングは……召喚術? 契約したモンスターを呼び出して己の従者とするスキル……便利だな。


「……だってよ」

「凄い、凄いよシュールさん! 僕、ログインしてない時はいつも攻略掲示板みてるけど、サモニングなんて見た事ないよ。モンスターをなつかせるテイマーがあった気がするけど、余りに大変で死にスキルになってるみたいだし……」


 この娘は……学生じゃないの? まさか、引き籠もり? 触れないでおこう。人には触っちゃいけない事もある。


「……ええと……そりゃまたなんで?」

「基本はモンスターを弱らせて、好物の食べ物をあげるの。そして、スキル、テイマーを使うと低確率でなつくんだって。でも、定期的に食べ物を上げないと野生に帰っちゃうんだ。あんまり言うことも聞かないし、急にテイムが切れる事もあるみたい」


 それは……確かにめんどい。

 しかも、いつ寝首をかかれるかわからない状態なんて……そのテイマーのプレイヤーには同情する。


「じゃあ、とりあえず同じようにモンスターを弱らせて、サモニングを使って見ればいいのか?」

「わかんない。でも、それで何かあったら見てればわかるんじゃないかな?」


 だな。よし、いってみるか。その辺の村の外に。







「ラビットだね。仕返し?」

「エンカウントしただけだが、1匹でいるなら都合がいい。俺のライトボールと、サモニングの錆にしてやろう」

「仲間にするなら、錆びにしちゃ駄目だと思うけど……」


 揚げ足を取るんじゃないよ、この娘ったら。


 ピョンピョン跳ねてるラビットを見つけた俺は、左手をラビットに向ける。


 まだ、気づかれてはいない。


「スキルってどうやって使うんだ? メニューからでいいのか? スキル、スキル、と……ライトボール……と、あったあった。おお、手が光出した」


 アニメのエネルギー弾みたいに、手のひらで球形になる。


「よし、まずは一撃! 行け! ライトボール!! ほ、はっ! ……ん?」


 なんか、手から離れないんだけど……何これ? 昔、ガチャガチャでこんなのあったよな。ネバネバの。


「シュール。頭の上に呪文が浮かんでるでしょ? 魔法系スキルはそれを唱えないと駄目らしいよ」


 ん? 呪文……これか……これを言うのか? 本気で?


「これを、口に出すのぉ? なんか、とても恥ずかしいんだけど……」

「ゲームで恥ずかしがってどうするの!? 不特定が売りでしょ。僕が見たいんだから、早くしてよ」


 く、こんな近くに暴君がいたとは……。


「……光は……まらん」

「聞こえないよ? それに発動してないよ」

「我が手に光は……」

「はーん、聞こえんなぁ」

「……ええい! 我が手に光は集まらん! ライトボール!!!」


 羞恥プレイにきっと顔面は真っ赤だろう。しかし、俺は耐えきった。Sのパーティーメンバーの嫌がらせに勝ったのだ。自分で自分を褒めてやりたい。


 俺の呪文を受けて、左手に宿る光の玉はスキルライトボールになり、ラビットに向かって放たれた。


「…………マリア」

「そういう仕組みなんだ……」


 ライトボールは放たれた。それは確かだ。しかし、俺の拳のリーチと同じ位の距離で消滅した。


 当然、ラビットには当たってない。と、言うか到達してない。


「しかも、気づかれたし。魔法は消える、Sのパーティーメンバーには羞恥プレイの強要をされる、MPはすっからかん。このやるせなさは何処にぶつけばいいと思う? マリア」

「ほら、ラビット、ね? 来てるから、あれにね? 僕はそれがいいと思うな、うん」


 とりあえず、マリアの処遇は置いておくとして、駆け出してラビットの攻撃モーションより早く、飛びげりをぶちかました。






「さあ、きりきり説明してもらおうか。Sっ娘ホビットめ」

「僕は別にSじゃ……って、女の子に何言わせるんだよ、もう!」


 それは重要じゃない。むしろ起こった事の説明を早くしろ。

 結局、サモニングを使う暇(MPが0だし)も無かったし。


「ええと、MPが空になったのはシュールのMPが低かったからだよ。撃てただけ良かったと思うけど。ライトボールが消えちゃったのは、多分それが素体のスキルだからだと思う」


 素体?


「スキルは、そのスキル内で効果や時間とか沢山の項目毎に分けられてるんだ。覚えたてのスキルはそれが全部最低の段階で始まるから……僕の挑発も、初めは効果範囲は目の前だけで、効果時間は5秒、パーティーは初めてだからわかんないけど、対象から僕に目標を変える確率も低かったと思う」


 つまり……ライトボールに関しては何だろうな?


「今の感じだと……射程は影響してるみたいだが?」

「後は多分、威力と詠唱速度、消費MPとかかな?」


 スキルは表記こそないが、個別でレベルが存在しているらしく、その中からランダムで上がっていくらしい。


 つまり、運が悪ければ俺のライトボールは、近接専用魔法になるって事だ。


「MPとHPの回復は、アイテムと宿以外には出来ないのか?」

「一定時間で自然回復するけど、他には聞いた事ないよ。今のシュールならすぐに回復するよね」


 まあ、そうだが……皮肉か? 仕返しのつもりか?


 ま、なるようになるか。


 折角覚えたし、出来るだけメインに据えて戦っていくか。


 俺、魔法使いへの第一歩、始まる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ