第三十五話
クエスト、誇り高き死者に安らかな眠りを、クリアして幾ばくかのゴールドをもらう。
そして、ミカールの街の宿屋でスガタとテイトと一緒に会得したスキルについて話し合う。
「スガタの両手持ちはどうなんだ?」
「これは行けるで! 武器を両手で持つと攻撃力とクリティカル率にボーナスが入るんや、しかも高倍率やで! レベル1でクリティカル率5%、攻撃力20%も増しになるんやで、これでワイの時代がきた! キタキタキタキタ来たでー!」
「……煩い」
「でも~盾は~どうなるの~?」
「勿論無理や! でもええねん! んなのは些細な事や!! わいはこの両手持ちでワーウルフの星になるんや!」
まあ、持ち方を変えるだけで攻撃力があがるなら確かに良スキルだよな。
でも、盾のダメージ軽減も侮れない筈。
片手武器で片手+盾と両手を使い分けるのか、それとも両手武器一本でいくのか、どちらにせよ今までのスガタじゃないよな。
ひょっとしたら、本当にワーウルフの星になるかもな。
「わいは神に愛された男の中の男だからええけど、テイトのスキルはどないなん? なんやっけ? 焼き肉弁当?」
「……お兄さん~私の~陣地作成は~ですね~」
「ああっ! 無視されるのが一番辛いねん!」
「一定範囲の~仲間を~効果時間~HP~MPを規定量~回復させる~スキル~です~」
とりあえずスガタの両手持ちの有用性はわかったが、テイトのはよくわからないな。
つまり、どう言う事だ? 回復魔法型スキルって事か?
「違います~陣地~ですから~その間は~非~戦闘空間に~なる~みたい~です~」
「なんだそれは……つまり外で敵との戦闘中にすら、安全にしかも、HPMP同時に回復するって事か!? それは有り得ないスキルだなぁ」
「レベル1~ですから~10秒間に~10%しか~回復~しない~ですけど~」
十分じゃないのか?
「お兄さんの~スキルは~どう~なんですか~?」
「俺? 俺のは……普通だ。他の召喚獣と変わらないが……ああ、再生能力(微)があるな。10秒でHPが1自動回復するスキル持ちだ」
「んなこと言われたって、わい等にはサモンスキル自体がわからんねん」
あーそう言えばそうか。俺はスキルは殆どサモン系しかなかったから思いつかなかった。
「能力的にはモンスターとして現れるスケルトンと思ってくれればいい。HP、攻防値が低いからスキルが何処までいきるかは不明だな」
「でも、レベル上がれば強くなるんやろ? 便利やなぁ、シュールはそれ以外にもサモンスキルがあるしなぁ……」
……確かに言うように俺は大軍で押すような戦闘をするのが一番良さそうだよな。
しかし、そうすると俺は一生ソロプレイヤーになるが。
「そう言えば~お兄さんが~前に~話してた~事に~ついて~なんですけど~」
とりあえず新しいスキルの報告が終わった俺達は、今更ながらフレンド登録を済ませ、次の話題へ話はシフトして行っていた。
先程二人と話してた事がある。
俺の中で起こっている召喚獣が大量にレベルアップする訳のわからない不具合。
それを話した所、不具合であるだろう事は全員一致で認められた。
しかし、それだけじゃ話は終わらなかった。
「俺が見てるだけってのは変わらないんだよな」
子鬼の郷に入ってすぐ、通路にいた単騎で徘徊してたゴブリンに、複製も含めた四体のスケルトンが襲いかかる。
ダメージを負いながらも、ひたすらに殴りまくるスケルトンを適当にサポートしながら、暇なので先程の話の続きを思い返す。
不具合の原因については、意外に簡単に予測がたてられたのだ。
「それは~皆さんに~経験値が~入ってるからじゃ~ないですか~?」
と、テイトが言った事から始まった。
「ああ……そういや経験値関連のなんかがこないだあったなぁ」
要約すると、同じ召喚獣全員に経験が入ってるのでは? との事。
例えばサモンクロウで20体クロウを呼ぶ。そうすると、通常は敵から入る経験値はサモンクロウと言うスキルで呼ばれたクロウ全体に入る。
しかし、一体一体に別個に経験値が入ってるのでは、と言う事だ。
つまり、20倍の経験値になる。
同じ理由で複製も、複製自体の経験とその対象への経験に×複製数分の経験値が増加してると考えられる。
正直それ以外有り得ないレベルアップなので、二人と別れてから、試しに子鬼の郷に来てみたのだが……。
「当たりだな……それにしてもあり得ない事だらけだ。こんな事がわかってまったら……」
四体でゴブリン一体を撃破。その間に複製三回、サモンスケルトンを6回使った。
そして、格上だった為、あがるサモンスケルトン。
何度か繰り返しそのレベルは8。大した苦労もなく7レベル上がったって事だ。
サモンスケルトン
レベル、8
消費MP、10
召喚数、2
HP22
攻撃力、6
防御力、3
一回の戦闘でこうである。しかも、何気にまた、召喚数増えてる。
ここでなんとなく確認したい事が出来た。
今度はこっちが格上なのでそうそうやられる事はないだろう。
複製が時間切れで消えたのを確認して、二体目のサモンスケルトンを呼び出してまた単騎のゴブリンに差し向ける。
殴る、殴る、斬られる、殴る、殴る、斬られる、を繰り返して今度は比較的早い速度でゴブリンを撃破する。
流石にレベルは上がらない。なので、次のゴブリンを探す。
やられたら再召喚を繰り返して、撃破を続ける。
そしてレベルアップ。レベル9になった。
……召喚数は増えないか。
俺、何故か召喚可能数が即座に増えてたからひょっとして、と、思ったんだがな。
まあ、区切りもいいし落ちる前にレベル10まで上げていくか。
迂闊にも単騎行動中の哀れなゴブリンを探して、俺は……俺と骸骨達は岩で囲まれた獣道を徘徊しだした。
「スガタじゃないけど言わせてもらうぞ、俺の、いや、俺達の時代がきーたーぞー!!!」
スケルトン二体と子鬼の木の杖を装備してる俺、計三体で撃破したゴブリン。
そして上がるサモンスケルトンのレベル。
レベル10だ。能力値は……。
サモンスケルトン
レベル、10
消費MP、10
召喚数、3
HP24
攻撃力、7
防御力、4
と、なっている。
ここで、俺が大騒ぎしたのは召喚数だ。
サモンクロウとは違い、召喚数が増えたのに能力値が下がってないのだ。
つまり、ただ純粋にプラス効果しかない。
能力的に低下したにしてはステータスが高いな、と、思って少しづつレベルを上げたのだが……。
召喚数上昇はレベル×5の倍数なのか?
まあ、いい。これならスケルトンは俺の中で、最強の先鋒になる!
当然のように三体召喚して、モンスター出現時は複製も使いレベル上げにつとめる事にした。
ログアウトは遥か先の話になりそうだった。




