第三十四話
誰も倒した事のない、もしくは今まで情報が出た事のないクエストボスであるネクロマンサーネモを撃破した。
スガタとテイトは特に、その奇跡のような出来事に浮かれ回っていた。
「マジか、マジやんな! やったで、マジでやったんや! マジやでーーーー!」
「やりました! お兄さん! 私達、倒したんですね、あのネクロマンサーネモを! 外道者の私達が、お兄さんの力を借りて! 本当に、ほんっとうに嬉しいです!」
抱きついてくるスガタに、俺の手を千切れんばかりにぶんぶん振り回してくるテイト。
一寸だけスガタとテイトのやる事が逆ならいいのに……とか思ったのは秘密だ。
一応男性なもので……。
「そろそろ構わないか?」
「……済まんな。二人共、そう言う事なんだが、どうだ?」
さり気なく待っててくれている、申し訳無さそうなネモの言を受けて俺は二人にクエスト進行を促してみる。
「あ、は、はい、ごめんなさい……あの、お願いします」
「ああ……こりゃ済まんなぁ。さ、さ、遠慮なく……」
と、言う訳でずっと膝をついたままだったネモのクエスト進行が始まる。
「ワシが力で負けるとはな……しかし、こやつ等をこれ以上苦しめる訳には……」
こちらを睨みつけながらの迫真の演技。
「シュール、どないするん?」
「待ってもらってた、手前スルーするのも申し訳ないと思うがどうか?」
「私は~クエストに~参加した方が~いいと~思います~」
テイトと二人でスガタを見つめる。
「なんや、その目は……あかん、あかんよ? わいはこないや真面目な話、出来へんよ?」
じー。
「いや、マジに無理やねん、な、自分達ならわかるやん?」
じー。
「あんな……その……」
じー。
「……」
じー。
「わかったわい! やったるわ! じいさん! わい等はほんまにその死者に祈りを捧げに来ただけや、他意はないんや」
「何故だ? そんな事がある筈は……」
「冒険者は依頼を受けた事は必ず遂行する。ただな、それ以外の事はせんねん。じいさん、この意味わかるやろ?」
こいつ、意外とこういうの向いてるな。
「冒険者、か……ふ、ふふふ、面白い。お前達ならひょっとすると時代の闇すら払えるかもしれんな」
ひとしきり笑うと、俺達に向かって歩いてくるネモ。
「俺達が祈りを捧げても構わないのか?」
「好きにせい。指輪を持ちし物よ、お前とはまた会うかもしれんな」
そのまま歩き去っていくが、何故か俺には専用っぽいセリフを吐いてから去っていった。
黒騎士の指輪……連鎖クエスト系のアイテムだったのか?
すぐにクエストの確認をしてみる。
クエスト、闇の覚醒、をクリアしました。と、ある。
やはり、急に起こるんだな。
「お兄さん~お祈りを~しましょう~」
「あ、ああ、わかった、今行く」
既に墓石の前で準備万端のスガタと、俺を待って隣にいたテイトを見ながら俺のクエストを終えるべく、三つの墓石へ歩き出した。
今回のネクロマンサーネモとの戦闘報酬はスキルだった。
俺はサモンスケルトン、テイトは陣地作成で、スガタは両手持ちを会得した。
そして、更に俺はクエスト闇の覚醒のクリア報酬で約束の指輪の効果が強化された。
これは……よりMPに尖らせろと言う神のお告げかしら?
なんて言うか……呼んで呼んで呼びまくれって事かよ。




