第二十六話
黒騎士用にダンダクール武具工房で、皮の鎧(320ゴールド)とスマートバックラーと言う木の盾、バックラーより格上の一寸いい盾(250ゴールド)を購入した。
人型の召喚獣は武器防具が装備できるらしいから、表記以上の力がある筈。
武器はアーマードゴブリンから手に入った長剣、ユニークのファニーフェイスがあるからいい。
ただ防具だ。黒騎士が装備出来るのは鎧と盾のみ。
流石に防具までは持ってない。
出来るなら俺の村人の服を渡してもよかったんだが、防具なしは実質変態裸仮面になってしまうから出来ないみたいだ。
つまり、買わなきゃ行けないのだ。
盾は黒騎士の特徴だからだろうな、サポートキャラがそんなにたくさんの部位装備出来たらバランス壊れるだろう?
仕方ないので初め位は買うか、と思って買える中で安めの物を買ったが……。
実践的な物は、金銭的な問題も勿論だが、子鬼の郷みたいに、一回のレベル上げで未鑑定品が手に入るから買わなくてもいんじゃね? とかも思ったのが理由としては大きい。
アイテムがモンスターから手に入らないのはやはり初めだけだったんだな。
事実かなり手に入ってるし。
で、装備に使ったゴールドは570。2303ゴールドだったから残金1733ゴールドになった。
HP回復薬が80ゴールド、MP回復薬が120ゴールド。
最低3個ずつ買うから240ゴールドと360ゴールド。600ゴールド引いて残金は1133ゴールド。
もう資金に余裕はないな。
自分の防具も装備してない部位は買おうかなぁ、とか思ったりおもわなかったりするが、きっとこの感じだと買わないだろうなぁ、と思う。
まあ、取りあえずは困ってはいないからいいけど。
俺は装備している子鬼の木の杖を見る。この何の飾りもついてない初期の杖を地面につきながら歩けば……魔法系のキャラクターに見えるかな?
いや、服装からするとお爺ちゃんとか怪我をした人にしか見えないかな?
……やっぱり防具揃えよう。
子鬼の木の杖。
明らかに魔法系の俺が、何故知力が下がる武器をつけるかというと……理由は簡単、折角のマジックだから装備したかったから。
後は近接戦闘になった時に、メリケンサックより射程のある武器を使いたかったから。
本当は遠距離攻撃出来る物が楽でいいんだろうが……いや、どうせクロウ達に囲まれて狙えないだろうから何でもいいっちゃいいか。
でも、そう考えるとそもそも武器を変える必要がなくなるが……。
何があるかわからないので、とりあえずメリケンサックも売りはしない。
保険とも言えないような策であるけど。
ダンダクール武具工房から出た俺は、ギルドで相変わらず討伐系のクエストを探していた。
「もう、ミカール周辺だと目立ちすぎて駄目だな。カラス20匹に、実際本人なんだが、明らかにクエストボスと同じ格好の黒騎士。それに空を飛ぶ剣のメルクリウス。こんな大所帯、下手に注目されるのは避けたいな」
こんな状況が他のプレイヤーにバレたら、バグを利用したチーター野郎なんて言われて、陰口、嫌がらせのオンパレードだ。
それだけは避けなくては。
別に悪い事をしてるつもりはないが、きっとそれを色々言う奴もいるだろうからな。
と、すれば、場所は出来れば人知れず篭もれるダンジョンとか山奥とかが近くにあればいいんだが。
仙人か世捨て人か、俺は……。
「討伐系が少ないなぁ……あってもこの辺だけだし……お、スカーヴ山脈でのオークワーカーの討伐……って、スカーヴ山脈って何処だ? そもそもオークワーカー所かオークすら知らないし……何だ、クラスB以上限定か。じゃあ、俺には無理だな」
「あの~スミマセ~ン~」
今日のクエストはろくな物がない。
そんな事を考えてた時、何やら随分間延びした声に話しかけられる。
振り向くと、そこには一組の男女がいた。
男はブロンズメイルと思われる銅の鎧に身を包んだ短髪で少し毛深い感じの軽そうな奴。
女性は見た目お嬢様って感じで、ウェーブのかかった長い髪に、整った日本人離れした顔つき。
二人とも種族が違うのだろう。俺と同じヒューマンやマリアと同じホビットでもなさそうだな。
「自分、一人やろ? わい等と緒にクエストせえへんか?」
「何だ、お前、そのエセ関西弁は? 言葉とイントネーションを学んで出直してこい」
何だか、今までこんなコトは無かったのだが、初対面の相手にいきなりフランクに罵声を浴びせてしまった。
「まあまあ~お兄さん~スガタの頭がおかしいのは~いつもの事なので~気にしないで~下さいね~私はテイト、種族はエルフです~今から~人数指定のクエストを~やろうと~思うんですけど~後一人~レベルの~合う~ソロの方が~ないんです~」
男の方は、俺やテイトに散々言われてギルドの床にのの字を書いてる。
めめしいやつだな、メンタル弱めだし。
しかも、この間延びした話し方の子は……微妙に毒舌家だな。
さて、どうするかな
「そうか、わかった。そっちの男の頭がおかしいのは気にしない。で、お前達のレベルは幾つなんだ?」
「貴方の~レベルを~確認しようと~思って~いたんです~私は~レベル~12に~なります~」
俺と同じか。多分そっちの男も同じくらいだろう。
やるのはやぶさかでもないが……微妙に加減しながらやらないといけないな。
ゲームで村八分なんてとてもじゃないけど笑えない。
いきなり先程考えてた危険に直面するとは……。
一体何処までの力でやればいいかな?
程々って難しいよな、ま、既にどうやってプレイしようかなって考えてるんだからやる気満々って事だしな。
「俺の名はシュール、ヒューマンだ。レベルもテイトと同じ12だ。テイトさえ良ければ喜んで参加させてくれ」
「有り難う~じゃあ~一緒に~やりましょう~」
「おーい、わいはスガタやで~種族はワーウルフや~レベルは11のナイスガイなで。あんなぁ、わいの事も忘れんといてや~」
こうして俺は、黒騎のレベル上げの前に初見のプレイヤーとの初パーティーをする事になった。




