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第二十五話

「シュールさん、これで後はユニーク品質の剣の鑑定だけですね」


 一瞬だけ周囲に張り詰めた空気が漂う。何でだ?


 そして、ルーナルミナの声に合わせて何処からか紙吹雪が舞う。


「これ(紙吹雪)……何処から出したんだ?」

「これ(小手)ですか? 折角のユニーク品質の鑑定ですから、私も装いも新たに全力を尽くそうと思いまして……」


 いや、それこそ何時出した? 言われるまで気づかなかったわい。

 て言うか、紙吹雪にツッコミなしか!?


 いやいや、そもそもマジック鑑定の時に気合い入れるって言ってたのに、まだ全力じゃなかったのか!?


「そ、そうか……じゃあ、よろしく頼むな」


 なんて、思ってても言えない。なんて健気な俺。


 あんな目を輝かせて頑張ります! みたいな態度とられたら、俺からそのやる気を削ぐような真似出来るわけないだろう?


 比較的一般的な良識を持つ俺には、この天然NPCの相手はダメージがでかい。


「はい! 任せて下さい!」


 笑顔で言ってくれる分にはいいんだが、一つだけ気になる点が……。


「すまん。話の腰を折って悪いが、一寸だけ待っててもらえるか?」

「え? はあ、あ! そこは入ったら駄目ですよ……」


 俺はカウンターを乗り越えると、ドアに隠れるようにしている男達に話しかける。


「お前等は何だ?」

「俺達はこのダンダクール武具工房の職人だがそれがどうした?」


 どうしたって……どうするわい! 


「そんなのはお前等の服装から予想が付くわい! 俺が聞きたいのは、何でお前等が大漁旗やマラカス持ってルーナルミナの背後に潜んでるのかって聞いてるんだ!」

「ちっ、見つかったか!」


 見つかるわ、そんなでかい男達がちょろちょろしてたら。

 紙吹雪もこいつ等の仕業か。


 ファンクラブって言う設定か?


「あのなぁ、俺達は……」

「待つがいい。時が惜しい、俺から説明しよう」

「親方!」


 親方って……ここで一番えらい奴か!?


「俺はダンダクール=ライジング。いつも、ルミが世話になってるな」

「あ、ああ。俺はシュール。で、これは一体何なんだ?」


 この親方、でかいよ、でかすぎるよ。どこかの世紀末覇者の人だよ。

 こんなの勝てる気がしない。


「何、遊んでる訳でもふざけてる訳でもない。ルミと貴様の為だ」

「どう言う事だ? 何で、ファンクラブ活動が俺の為になるんだ?」


 本気でやってるなら尚、救いがたい気がする。


 ここの長が参加してる段階で、もう手の打ちようが無いだろう?


「ルミの才能故だ」

「惚れ込んでこんな事をやったって事か?」


 集団ストーカーってやつか?


 むしろ、ルーナルミナとその他大勢で分けてるって、イジメじゃね?

 イジメイクナイ。


「ルミは生まれ持った才能故に、俺の教えなくても全ての武具の鑑定と創造スキルを所有していた」


 それは確かに凄いな。伊達にクエストでユニークを作るだけあるな。

 でも、親方(世紀末覇者)からは未熟者扱いされてたって……やはりイジメか。


「しかし、それ故に失敗した時アフターフォローが出来ぬ」


 何でも過去に工房崩壊の危機があった(という設定があった)らしい。


「その為、僅かでも成功の可能性を上げ、一人前の鍛冶職人とする為、俺達が尽力しておるのだ」

「だから、シュール殿。どうか、ルーナルミナちゃんに沢山のアイテムの鑑定をさせてあげてくれないか?」


 うーん。これはクエストなのか? でも、今の

だと、失敗の可能性があるって事じゃないか?


 確認してみる。


 あーあったよ。新米鍛冶士とゆかいな仲間達1。


 1って、連続クエストか。

 どうせ鑑定するなら意味がある相手の方が得だよな。

 流石に失敗してもロスト(消滅)はしないだろ。


 クエスト内容はユニークアイテム3個の鑑定。


 難しくね? 俺は今1個とマリアが1個待ってるから後1個だけど……他のやつはレアリティが一番高い未鑑定アイテムを3個だよ?


 鬼畜クエストめ。


「まあ、別にいいけど……」

「うむ、感謝する。では貴様はもう戻れ。俺達の事を悟らせるな」


 もう無理じゃね?


 とりあえず言われるままにルーナルミナの所に戻る。


「お帰りなさい。シュールさん。誰とお話をしてたんですか?」

「あ、ああ、ただいま。世紀末……じゃない、ダンダクールさんに呼ばれてね……」

「そうですか……って、今回は仕方ないけど、鍛冶士じゃない人は入っちゃ駄目ですからね」


 呼ばれたって言っても駄目なのか?


 この子の基準って恐ろしい……。


「ああ、すまんね。じゃあ、早速頼む」

「はい! じゃあ、行きます……スキル、剣鑑定……」


 今までは鑑定するアイテムを見てたが、今は周りで色々やってるストーカー職人達が目に入ってしまう。


 紙吹雪をまき続ける奴や力一杯大漁旗を振る奴。小声で大合唱のフリをする職人等……あの世紀末覇者も参加してやがる。


 やっぱり集団ストーカーじゃないか。


「出来ましたよシュールさん。これはファニーフェイスですね」


 成功したらしいが、それがどうなのか俺にはわからない。

 受け取った金色の剣。一寸金ピカすぎて悪趣味な感じもする。

 恐る恐る装備するしてみる。


 効果は……攻撃力15、防御力5、恐慌付与、混乱付与、運アップ(微)。


 これはまた……極悪な剣だな。混乱と恐慌は状態異常なんだが、混乱はその名の通り、敵味方の区別がなくなり誰彼構わず襲いかかる状態。魔法系は魔法を使わなくなるらしい。で、恐慌はテラー。恐怖を敵に与える。敵が逃げるようになるって事らしいぞ。


 丁度いいから黒騎士にでも装備させるか。


 メニュー、設定。黒騎士に、装備……ファニーフェイス、と。


 よし、これでいい。


「ありがとう、助かったよ。お陰でいい物が出来たよ」

「いえ、私なんて……シュールさんの助けになれたなら良かったです」

「なあ、ルーナルミナ。あいつ等はいつもあんな感じなのか?」


 後ろで抱き合って喜び合っている鍛冶職人(集団ストーカー達)を指差す。


「皆さんですか? 私もよく見ますね。以前聞いてみたら、凄く嬉しいことがあるとああやって喜びを表現するそうですけど……」

 今回は、鑑定の成功か? むしろ、工房が無事だった事を喜んでる奴もいるみたいだな。

 自分の仕事道具を頬ずりしてる奴もいる。


 なる程、皆が皆集団ストーカーじゃないのか。


 難しい、繊細な問題だな。


「そうか、わかった。最後に、残金で買える盾と鎧を見たいのだが……」


 落ち着いた俺は、自分は後回しで、人型のサモンスキルの、黒騎士が装備出来そうなアイテムを見せてもらうのだった。

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