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第二十三話

 俺は荒野に立っている。


 地平の彼方まで見通せそうな位、周囲には何もない。


 俺の周りには頼りになる二十匹のクロウと、メルクリウスが変わらず飛んでいる。


 何があった?


 俺は子鬼の里の奥で、エリアボスと思われるモンスター、アーマードゴブリンを倒した。

 で、その後に現れた宝箱を開けた。


「確か、その後ペンダント……汚されし騎士の証が出て……未鑑定じゃなかったから、それを俺は装備した……それが失敗か? まさか呪われてたのか? しかし、何でその後ここにいるんだ?」


 周囲に道やイベントを起こすキーみたいなものがないので、考えてみるとここはクエスト用の特殊空間みたいなものなんだろうか?


「装備的なマイナス効果は…………特にないみたいだな。でも、+もない。意味ないじゃないか」


 しかし、何も起こらないんだが……何かクエストが起こってるなら、何で何も起こらない?


「と、思った先から…………何だ、まさか思考を先読みするのか、ラグナロクは!?」


 急に盛り上がる地面。その地面に殺到する俺の仲間達。

 クエストだろうに、もう攻撃フラグが立ってるのか……もし、これで相手がやられたら俺、何が起こったかもわからずじまいだぜ?


「人の形になったか? ええい! クロウ達が邪魔で見えんわ!」

「証を持ちしものよ。我が栄光と挫折の日々を聞くがよい」


 盛り上がった荒野の土は、黒い鎧を着た何かになり急に一人語りを始める。

 俺的には表示されたHPがどんどん減るのを見ながら、戦闘開始前に撃破されそうで意外に気が気じゃなかったりする。


「……我が騎士として最後の勤めは、死の定めを負った姫をこの身を賭して王国から救い出すことだけだった」

「いい話なんだけど、いいのか? もうHP半分切ったぞ?」


 話は止まらない。自分の騎士団から裏切られた姫を救い出し、元仲間をその手にかける所に話は続いていく。


「姫は我が故郷に避難してもらった。流石に簡単に、とは行かずその代償はこの身の致命傷をもって払うことになったが、我は死ぬわけには行かなかった」

「語りたいんだな。わかった。じゃあ、俺も本気でやる! 我は真理を見通す偽を託さん。複製!」


 話は終わらない。その心意気やし!


 ならば、俺もその話が終わる前にしとめてみせる!


 メルクリウスを三体分複製させると、戦力として追加する。


「故に我は闇に身を堕とした。聖騎士の身を捨てて姫の怨敵を全て滅する為、人を捨てたのだ」


 総勢二十四の個体が、全力で無抵抗の相手をフルボッコにしている。

 もう、2分位立つだろうか。この黒騎士のHPは1/5位になっている。


 しかし、硬いな。ここまで全力でやってまだ終わらないとは。

 ダメージ的には1000位与えてる筈なんだが……。


「そして、闇に身を堕とした我は、騎士団と場内の全ての者の命を奪った。その後、各国共同で組織された我の対策部隊に幽閉された」


 そこで初めて、この黒騎士はなんらかの動きを見せる……が、囲まれていて何をしたのか全くわからん。


 因みにここがその幽閉された場所って設定か?


「我を滅するに一人で来るとは大した自信だ。悠久の時を生きし古き化け物とはいえ、魔導師に遅れをとるほどこの身は落ちておらん! 魔導師よ、準備はいいか?」


 魔導師……ジョブのないこのラグナロクで、どうやって判断してるんだろう? 装備? スキル?


 クエスト自体が発動条件のあるものなのか?


 例えば魔法系スキルを持っていて、更にソロでアーマードゴブリンを倒したプレイヤーにのみ起こるクエストです、とか。

 いやいや、難易度高すぎだろ?


「本当にやるのか? 話を聞いてるとあんたに同情の余地は充分にあると思うが……」

「笑止。奪った命の重さを考えれば、我に出来ることなどない」


 何だかよくわからない返事が返ってきた。


「じゃあ、やるけど……後悔するなよ? (残HP的な意味で)」

「堕ちたりとはい、騎士に二言はない! いざ!」


 そして、囲まれている現状お構いなしに腰に差した長剣を抜き去る黒騎士。そして、同時に0になるHP。


「覚悟おおおあぁあぁぁあぁぁああ!!?」


 そして倒れ伏す黒騎士。なんか……一寸可哀想すぎて目も当てられない。

 こんなのあっていいんだろうか?


 当然の如くレベルが上がる俺達。俺なんか2レベルも上がった、どれだけ強かったんだ、こいつは?


 結局予想通りに戦闘にはならなかったな。









 さて、黒騎士は倒した。しかし、この荒野のフィールドからはいまだに抜け出せてない。


 帰れないのかしら?


「黒騎士のいた場所……黒い光が……これは…………メルクリウスと契約したときと同じ、生まれたばかりの精霊ってことか?」


 色からしても状況からしても、今の黒騎士の物だよな。

 これって、やはりサモンスキルのチャンスか?


「スキル、サモニング……」


 俺のスキルの影響を受けたのか、黒い光は捻れるように細くなるとそのまま消滅した。

 それに変わるように、先程の黒騎士が俺に頭を下げるような姿勢で現れる。


「俺の召喚獣になる、でいいのか?」


 黙って腰と下げた剣を俺に、捧げてみせる。


 しゃべらなくなっちまったな。でも、これは取りあえずイエスでいいのか?


「わかった。じゃあ、今後ともよろしくな」


 立ち上がった黒騎士は敬礼をすると、その姿を消した。

 そして、俺の前に新しい宝箱が。


「またか。今度は急にクエストに放り込まないアイテムだといいが……」


 どの道開けるのだが、何が起こっても言いように一応覚悟だけはしておく。


 そして宝箱を開ける。


「え? 中身なし? と、おわわわわわわわわわわわ」


 吸い込まれるような脱力感を感じて、俺は意識を失った。










「……ここは?」


 周りを見回す。召喚獣達欠ける事なく皆いる。


 場所は……目の前には宝箱。山の中の開けた道の一つ。


「ここは……アーマードゴブリンを倒した山か?」


 何だかわからないが、どうやら俺は戻ってきたらしい。


 とりあえず、先ほどの戦闘で黒騎士から、何かドロップしてないか見てみるか。


 うーん、特にないなぁ……お、汚れし騎士の証が約束の指輪に変わってる。


 効果は……HP、MPと、全ステータス上昇って……飛んでもアイテムだな、おい。


 それにしても……人型の召喚数は初めてだ。


 果たしてどんな活躍をみせてくれるのやら。


 期待を胸に、手にれたアイテムの鑑定の為ミカールに帰還する俺と愉快な仲間達だった。

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