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第十五話

「シュールはまた魔力に振ったの?」

「まあな、サモンクロウの連続召喚が当面の目的だからな 。だが、知力や速さにも振ったぞ。流石に速さ1は抵抗あるし……マリアはどうなんだ?」

「僕? 僕は当然体力だよ。速さがどんどんあがるから、体が軽くて仕方ないけどね」


 そう言ってジャンプしまくる我がパーティーメンバー殿 。


 こんなゴーストの最後っぺの大爆発跡地で器用なものだ。

 えぐれてクレーターみたいになってる爆心地や、粉々になった墓石に倒れて修復不可能っぽい墓石。


 マジで運営お払い行けよ?


 それにしても、速さってそんな重要なのか? 

 そこまで変わるとは思わんが。


 まあ、重心や今までの自重も含めた動きやすさもあるから 、別に変えようとは思わないけど。


「で、さ……銀鉱石はどこにあるの?」

「可能性としてはゴーストのいた墓石の中か、スケルトンのいた辺りだろう」


 スケルトンが首に下げてた何かは、全くを持って違う可能性が高いがな。


「シュ、シュール……」

「何だ、もう見つかったのか? そこって事は、まさかのスケルトン所持か?」


 スケルトンが最後に立っていた場所で何やら立ち止まっている。


 意外に早く見つかったな。


「で、それは俺も所有出来るのか?」

「違うよ、シュール。これ……」

「へえ……これもクエスト用のドロップなのか?」


 近付くと、俺にも「それ」は視認出来た。


 地面に突き刺さる鉄の刃。


 そう、スケルトンが持っていたアイアンソードだ。


「これ、いいのかな?」

「いいだろ。戦績の報酬みたいなものだ。ショートソードより全然強いだろ? 使いなよ。俺には必要ないし」


 何度も俺を見ながらその剣を手に取る。


 俺はまた、銀鉱石探しに移る。


「シュール! これ、アイアンソードじゃない!」

「なんだ? ロングソードだったのか? まあ、どっちにしても今のより攻撃力あがるからいいんじゃないか?」


 ゴーストの墓石跡に手を突っ込む俺。当然、話半分である。


 ないなぁ。まさか実はクエスト関係ないただのエリアボスだったら寂しいものがある。


「違うって! これ、ユニークアイテム! 鑑定しないとわからないけど、間違いない!」


 俺は顔を上げる。


 どうやら、銀鉱石以上に価値のあるドロップだったらしい。



 アイテムはレア度によって、分けられている。


 ノーマル、マジック、レア、ユニークの四種類。

 ノーマルはその名の通り通常のアイテムの事。


 マジックはその通常アイテムに付加効果がついたもの。付属する能力、数値はランダム。

 レアもマジック以上の数と数値付加がつくが、同様ランダム。


 そして、ユニークは武器の名前や付加、数値が初めから決められている物。主に神話等に出たような伝説級の武具はこれにあたる。


 そして、NPCはノーマルしか作れず、プレイヤーもマジック以上のものは作れない。


 基本未鑑定の状態で発見されるから、それまでは素体の武器と変わらないんだけど。


 ラグナロクでは、武具のドロップ率が低いみたいだからどれだけの価値を持つかわかると言うものだろう。


「運が良かったな。どんなものでも、これで暫くは防具を揃えるのに専念できるな」

「でも、本当にいいの? ユニークだよ?」


 使わないものまで専有を主張しても仕方ないだろうに。

 そんな事より、早く銀鉱石を見つけてクエストを終了させたい。



「ありがとね。じゃあ、僕が使うね」

「ああ、そうしろ……と、これか?」


 


 クエストアイテム、銀鉱石はゴーストの墓石の中にポツンと置いてあった。

 いくら何でも雑じゃないか?


 なんだか尻切れトンボみたいな終わり方だな。


「それにしても……結局スケルトンの持ってたのは何だったんだろうな?」

「さあ? まあいいじゃない? 僕も早く戻りたいし」


 ミカールへの帰り道、ルンルン気分で浮かれてるマリアを、なんだか暖かい気分で見つめながら俺は街道を歩いている。


 何だろう? 父性? ホビットってちっさいから子供にしか見えん。

 学生だろうから10実際子供だろうが。


「どんなユニークかは知らんが、オートで自傷行為ダメージを受ける機能が付いてなければいいな?」

「あう……そんなのあったら、僕使えなくない?

自分の攻撃でダメージ受けてたらパーティーの盾になれないよ……」


 考えてなかったのか? 


「煽ってなんだが……はやる気持ちもわかるが、まずはクエストを終えることが先だからな」

「わかってるよ。僕、そんな自制心のない子供じゃないから!」

「さ、もうすぐ町だな。気合いいれていこう」

「あれ? シュール? 何でスルーなの? ねえ、シュール……」


 さて、よくよく考えたら、俺、このクエストで何か得するんだろうか? 銀鉱石を使うのはマリアのショートソードだし、手に入ったのはマリアにピッタリのユニークの剣。


 ああ……気がつかなきゃよかった。


 こんな事で不公平を感じるなんて……自分もだが

子供は面倒くさいな。







 ミカールに戻った俺達は、ルーナルミナの所で手に入れた銀鉱石を渡していた。


「本当に取ってきてくれたんですね!? 有り難うございます! じゃあ、早速お二人の武器を作ります……と、シュールさんは剣じゃ無かったですね……私、剣しか出来ないんですけど……」

「俺のもあるのか? ここで買ったこのメリケンサックしかないな……どうするか?」


 メリケンサックはこの工房で一番安いアイテムだ。

 だからこれにしたって言うのもあるが……ゴールドには若干余裕はあるから、質を上げてくれるなら一番安い短剣のナイフでも買うか?


「僕のを上げようか? 僕にはこの聖剣マリアスペシャルがあるから」

「変な名前をつけるな。まだ、未鑑定のただのアイアンソードだろ」

「そんな訳にはいきません! お二人にお持ちいただいたのに私のせいで準備出来ないなんて、職人としての矜持が許しません!」


 おお、熱い。立派な職人の思考ルーチンをお持ちで。


 じゃあ、やはり買うしかないか。

 短剣ならリーチの関係で、少しは素手に近い感じで戦えるかな?


「じゃあ、このナイフを買わせてもらう。これを使ってくれ」

「そんな! わざわざその為だけに工房の武器を購入してもらう訳には……」


 なんだ? じゃあ、どうすればいいんだ?


「あの……じゃあ、シュールさんには私が打った剣で鍛治をしますね」


 そう言って奥から両刃の片手剣を持ってくる。


「サイフォスです。私、まだまだ見習いだからこの位しか出来なくて……」

「よかったね、シュール。はい、ルーナルミナ。私も、これ」


 マリアのショートソードも受け取ると、二時間後に工房に取りに来てください。と、えらく申し訳なさそうに、しかし機械的に言って工房内にルーナルミナは消えていった。


 得したな、俺。



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