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第十三話

「どう見る? 意味ありげに墓石にもたれ掛かっている武装したガイコツ。怪しいと思わないか?」

「きっと、あれと戦闘になるんだよね? 胸元光ってるし……」


 ミカール墓地の最奥にある墓石。そこには言葉通りに下を向いた、アイアン系の武具で身を包んだガイコツ……スケルトンが座り込んでいた。


 ボロボロのアイアンソードやシールドを見ると、元初~中級の冒険者と言う設定なんだろうか?


 墓石がずれており、片手が中に入っている所を見ると、盗賊なんだろうか?


 今は動いてないが、どう考えても動き出すよな。

 しかも、武器しか買えずに防具は全て初期装備の俺達より明らかに良質だ。


「ここまで来たらもはや退けないしな。とりあえず反応する前に先制しよう」

「そうだね。僕も頑張るよ」


 距離が近づくにつれて、ガイコツがカタカタ震えだしている気がする。


 俺もメリケンサックを強く握り締める。名も無き村の森で戦ったボアには、俺達自体は戦力にならなかった。

 ここも明らかにボス系。今度は少し位マシになってるだろうか。


「マリア、ディフェンスを……って、しまった!」


 準備万端で先制攻撃を仕掛けようと思っていた俺達だが、一つだけ誤算があった。 


 サーチアンドデストロイを信条とする我が召喚獣様々だ。


 クロウ三匹は一斉にガイコツに飛びかかっていく。


「済まん、ミスった。マリア、先に出る! 俺はいい! 自分にディフェンスをかけたら来てくれ」

「わかった! 僕もすぐに行く」


 彼等は攻撃力1。三匹でも3だ。不意打ちで一気にダメージを与えたかったが、それではダメージだが低すぎる。


 やむなく、俺が先に攻撃出来るように駆け出す。


「……腐ってもカラスか……流石に追い付かん! 南無三!」


 MMOとは言えそこは所詮人間。カラスに人間が追い付くわけもなく、滑空体制に入るクロウ達。


 せめて、助走からの跳び蹴りで少しでもダメージを与えようと、両脚に力を入れて僅かにしゃがみこむ。


「はあああああ! 一撃……と、ととと……何だ? どう言うことだ?」


 クロウ達はスケルトンに目も向ける事なく、墓石の中に飛び込んでいった。


「シュール、お待たせ……あれ? クロウ達は?」

「あ、ああ。墓石の中だ。どうなってる?」


 急ブレーキをかけたから、足が少し痛い……ダメージになってやがる! リアルすぎだろ!


「あれは敵じゃなくて、ただの飾りって事?」

「でも、動いてなかったか?」


 墓地に静寂が戻る。


 全く意味不明だ。


 あのスケルトンの胸元のキラキラは銀鉱石じゃないのか?


 むしろ、普通に取って帰っていいんだろうか?


 そう言えば、サモンスキルでクロウを呼び出してる時は、頭上にアイコンが表示される。

 今は丸の中にカラスのマークだ。その下に小さく3、と数もでている。


 彼等は中で何をやってるのか?


「取っちゃっていいんだよね? あれ」

「わからんが……まあ、いいんじゃ……」


 霊感系は駄目なんじゃなかったのか? やはり、モンスターとしていれば平気なのか?


 やはり、女性はわからん。 


「いや、まて、マリア! 距離を取れ、何か来るぞ!」

「え、何!?」


 アイコン上に存在していたクロウ達が全て消滅した。

 つまり、あの中に何かがいるって事だ。


 そして、轟音とともに墓石が吹き飛ぶ。


「きゃっ!? 何、何があったの?」

「どうやら、本命はずっとあの中にいたらしい。クロウ達のサーチ能力は完璧だったって事だ」


 そして、ゆらゆらと半透明な存在。苦悶の表情を浮かべた真っ赤なゴーストが、絶望の雄叫びを上げた。


「なる程……不用意に近付いたら、今の爆発で一撃って事か」

「……シュール、有り難う……だから、もう離して、いいから……」


 現れたゴーストの迫力で失念してたが、距離が近かった為、マリアの手を取って抱き上げたんだった。


 良かった、力的な問題で落としたりしないで……。


「契約に基づき、我は汝を召喚する、クロウ! マリア、あれに、物理攻撃、効くと思うか?」


 マリアを下ろしてサモンクロウで三匹のクロウを呼び出す。


 先程の話がいきなり現実の物になるとは……。


「ええ!? 効かないの!? だって、さっきは……」

「あれは、嘘だ。今俺達が遭遇したら、勝てる可能性は低い」


 頭が回るのか、クロウは三方向から攻撃を始める。


 物は試し。俺は、左腕を振りかぶってゴーストに殴りかかる。


 殴る、ミス、殴る、ミス、殴る、ミス。


 ゴーストが俺を見ながら息を吸い込むモーションを取ったので、バックステップでとびずさる。


 俺の板場所は、ゴーストの吐き出した、明らかに不健康な何らかのブレスが襲いかかる。


「草が紫色になってる……毒か? マリア、駄目だ。やはり、物理は効果がない」

「その為に行ったの!? じゃあ、僕達は……」


 俺のライトボールでチマチマやるか、逃げるしかないな。


「でも、ゲージ減ってない?」

「ん? そうだな。少しだけ減ってるな」


 どう言うことだ? 攻撃してるのはクロウだけだが、クロウは普通に突っついてるだけだぞ?

 サモン系の使い魔は物理攻撃じゃないのか?


「まあいい、ダメージソースはクロウみたいだ。理由はよくわからないが好都合だ。あいつ等をメインにして俺達は見守ろう」

「……いいのかな? 僕、何もしてないけど」


 気にするな。元々打てる手はないんだから。





 大分ゴーストのゲージは減った。もう半分位だ。


 しかし、時間はとんでもなくかかっている。しかも、一撃でその方向のクロウが消える為、再サモンの山である。


 霊体と言う設定からか、HPが低めだったのが幸運と言うべきか。


「さて、マリア……もうMPがない。どうするか?」

「随分減らしたよね? 逃げ回って回復を待つ?」


 まあ、取れる手段はそれしかないんだがな。


「そうだな。夜のお墓の運動会としゃれ込むか」

「ね、シュール、あれ……」

「今更……逃げるなって事か?」


 このタイミングで今まで沈黙を保っていたスケルトンが動き出したのだ。


「位置が悪い……逃走経路に丁度立ってやがる」

「どうする? このままじゃ、ゴーストも……」


 く、最後のクロウもやられたか……このままじゃ挟み撃ちだ。ダメージ覚悟で飛び込むか。


 どっちに? ゴーストか? いや、駄目だ。もし、先程のブレスを受けたら……じゃあ、スケルトンか? 敵の強さは未知数だ。一撃の可能性もある。


 どうする? どうする?


「シュール! 来た!」

「なっ!? 衝撃波だと!」


 スケルトンが、己の剣からかまいたちのような衝撃波を飛ばしてきたのだ。


 スケルトンは飛道具ありか……詰んだな、これは。


 善戦はしたがこれ以上の結果は望めないな。せめて、マリアを脱出させようと衝撃波の盾になろうと動く。


「シュール! 何……待って、止めて!」

「隙をつくる。キチンと生かせよ」


 駆けた俺、叫ぶマリア……後でまた怒られるな、これは……。


 苦笑いしながら、移動する。


「………ん?」

「ヒュルオオオトオトオト!!!」

「シュール! 君はまた……!」


 衝撃波は俺にあたらなかった。当たったのは後方にいたゴーストだった。



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