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第十二話

 NPC、ルーナルミナの依頼で、銀鉱石と言うアイテムを探してミカールの町の外周にある墓地に来ている。


 因みにこの町に来てすぐなので、ゲーム開始後のチュートリアル的な物が一切わからない。


 それも、クリア報酬としてNPC、ルーナルミナに教えてもらえる事になっている。


 こんなイレギュラーな交渉が成功するなんて、ラグナロクのNPCは、皆、社員か人工知能のどちらかなんだろうか。


「飛行生物対決だな。行け! クロウ!」

「自動サーチだから、言われなくても行くと思うけど……どうしたの、シュール? 急に」


 ……たまには熱くなってもいいだろ。


 クロウの向かう先にはバット(コウモリ)が二匹。


 やはり敵は強い。タイマンだと見る見るうちにクロウのHPがなくなる。


「1/4位しか減らせないか。敵がコウモリだと、予想されるこっちの被害は?」

「僕に聞くの!? ええと……盲目、毒とかの状態異常や仲間を呼んだり?」


 意外にかかる被害はでかいな。状態異常の回復薬とか持ってないし……このまま、クロウに頑張ってもらうか。


「あ、やられた……じゃあ、行くよ……って、シュール?」

「契約に基づき、我は汝を召喚する。サモンクロウ×2! 後、三回やれば倒せるんだろう? じゃあ、そのまま頑張れ」


 こちらに向かう前に、新たなクロウを召還してバットに差し向ける。


 タックルやくちばしの応酬が行われる。


 そして見てるだけの俺。楽だ、楽すぎる。


「これがサモン系スキルの真骨頂なのか? 敵に近付かせる事なく、俺は指一本動かす事必要なく殲滅させる……素晴らしい。しかし、満足に行っていくにはまだまだMPが足りないな……サモンクロウ!」


 お、バット一匹が落ちた。クリティカルでも出たか? ヒクヒクしてる。結果、これで二対一になったか。

 

「決まったな。どうやらバットは耐久度が低いみたいだ……と、レベル……いや、スキルレベルが上がったか」


 最後の一匹が消えたのを確認してから履歴を確認する……上がったのはサモンクロウか。上昇内容は……召喚数の増加? またか!?


「シュール、何が上がったの? 意地悪しないで僕にも教えてよ」


 別に意地悪してる訳じゃないが……。


 俺はマリアに答える事なく、三匹目のクロウを呼び出す。


「おおーー、また呼べる数が増えたんだ。凄いね、サモンクロウはまだレベル3だよね? こんな召喚数増加だけしか上がらないなんて、レアな事だよ」

「レアか……呼べる数は増えたが、HPは8から6になって攻撃力は2から1になったぞ? 相対的に合計ダメージが下がってないか?」


 二匹の時の一回のダメージは4で、三匹の一回のダメージは3だ。HPも下がった事で、死にやすくなったし……もし次レベルが上がって攻撃力0になったら、俺はサモンクロウをどうやって活用すればいいんだ?


「そうかなぁ? 飛んでるし素早いから、攻撃を回避されにくいと言う利点を考えれば、長期的に見て最大ダメージは上がるんじゃないの?」

「上がったものを不満言っても仕方ないからな。そうである事を祈ろう」


 今、考えても仕方ない。もしそうなったら敵をサーチする為にしか使えなくなるが、上がってから考えよう。


 願わくば、次からは召喚数以外が上がるように……。







 見渡せる位の広さしかない墓地を、俺とマリア、それに三匹のクロウが進んでいく。


 敵は少なく配置されてるのか、目に見えるレベルでは存在しない。

 これならゆっくりと捜索に移れそうだ。


「で、どうやって探すんだっけか?」

「銀鉱石? さあ? 銀鉱石はこのミカール墓地にあるらしいし、クエスト専用だと思うんだ。だから、見て回ればさり気なくわかる場所に置いてあったりしないかな?」


 頭上を飛んでる三匹のカラスと一緒に、データ上の話なのに何だか申し訳無い気持ちになりながら、誰かの名前がかかれた墓石やその周囲を念入りに調べていく。


 もし、墓石をどけて中を調べろ、だったら流石に面倒だな。

 力にポイント振ってないから、墓石どかせるかが心配だな。


「シュール。クロウが増えて大変って、さっきは言ってたけどさ……」

「ん? 言ったな……」


 どちらも手は止めない。しかし、お墓にいる、と言う事実にマリアが普段より饒舌に口を動かす。


「でも、こんなに沢山のカラスさんがいたらね、寂しくないよね」

「騒がしくはあるな。常時出し続けるには、一寸問題があるがな」


 要は怖いのだ(特にマリア)。


 虚勢じゃなく、俺は全然平気なんだが……。


「怖いか?」

「……うん。だって、罰当たりな事したらお化けが出るかもしれないじゃない?」


 それは、どっちの話だ?


「リアルか? ラグナロクか?」

「うう……どっちもだよ。今だって、もしログアウトして目の前に何かいたらと思うと……」


 ラグナロクなら、ゾンビもいたしモンスターとしてゴースト位いるだろう?


「そんなものか? 確かにリアルでの墓地探索なんて俺も遠慮したいがね」

「当たり前だよ! そんな怖いこと!」


 怖いかどうかは置いておいて。


 警備体制の手薄な墓地は、単騎で行ったらどんな危険に巻き込まれるかわからない。君子危うきに近寄らず、と言うしな。


 これも価値観の違い……いや、俺の反応が多分一般的じゃないんだろうな。


 しかし、ゾンビは平気なのに何でゴーストは駄目なんだ?


「ここのゾンビはリアルだったけど、ゲームってわかってるし……シュール、忘れてない? 僕、女の子なんだよ?」

「そうだな。確かに怖いな。ま、ラグナロクなら、まず確実に存在するし、戦闘になるだろう? その点だけなら安心じゃないか?」


 残りの墓石は三つ。一番奥に何かあるな。


「何が安心なの、全然安心じゃないって!」

「いるかいないかわからないような不確定な事象がないだろ? しかも、自身の手で確実に対処可能なんだから」


 物理無効の可能性があるから、今でたら、威力の低いライトボールしかない俺達じゃ逃げるしかないが。


 わざわざそんなこと言って無駄に怖がらせる事もないし。


 これでも、俺は配慮も出来るのだ。


 そして、ミカール墓地の最奥である墓石まで辿り着いた。

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