第十一話
「これは連鎖クエストになるのか?」
「さあ? 条件が特殊だから違うんじゃないかな? もし、そうだったら結構意地悪だよ」
マリアがダンダクール武具工房で購入した初心者御用達の片手剣、ショートソードで目の前のゾンビに斬りつけながら俺の質問に返答する。
確かに名も無き村と比べて、敵の強さが段違いだ。
俺の目の前にいるゾンビには、両指にはめたメリケンサックで顔面をワンツーからのショートアッパーをおみまいする。
ラストのアッパーで、ライトボールを追撃として発動させることも忘れない。
ボクシング映画ではこれで劇的に決着がつくんだが、俺の物理攻撃力だとすぐに何事も無かったかのように起き上がってくる。
……攻撃が遅すぎるから対処出来なくはないけど、ダメージが低すぎる。
このままの戦い方じゃ一回の戦闘に何時間かかるかわかったものじゃないな。
「しかしままならないな。武具工房なんて大層な名前なのに、まさかまんまの名前でメリケンサックなんてのがあるなんてな」
更に足払いをかけて、倒れたところをそのまま足で踏みつける。
そして、二匹のクロウが空中から追い打ちとして体当たりをかける。
最近一寸だけ連携が取れるようになってきたような気がする。
「そういえば……モンスターから武器とかを取る事は出来るのかな?」
「撃破と同時に消えるんじゃないのか? いや、途中で奪えばどうだろう?」
目の前にいるのはボロボロの衣服を身にまとったただのゾンビ。
今、試す対象はないな。
きっといるであろうRPGの代表格、ゴブリンやオークとかの敵勢の獣人達なら試してみる価値があるだろうけど……。
ま、暫くは様子見だな。
俺はゾンビが起き上がってこないように、その腹にライトボールを叩き込みながらダンダクール武具工房にいた時の事……つまり、ミカールの町に着いたのに、いきなりこんなクエストをこなす事になった訳をを思い返していた。
「私、この購入してくれたショートソードなんですが、この銀鉱石を使えばもっといいものになると思うんです」
マリアにショートソードを装備させながらぽつりと呟くルーナルミナ。
「銀鉱石? シルバーソードの事? でも、そんな情報は……」
銀を使った武器か……これはさり気なくクエストの一つになるのか?
しかし、ただの初心者用の武器であるショートソードを買っただけで起こるような物なのか?
「シルバーって事は銀の弾丸とかのように、吸血鬼や人狼とかに特攻なのか?」
「まさか! そんな便利な武器があったら世の中からヴァンパイアやワーウルフが絶滅してますよ」
MMOだしな。そんなバランスブレイカーな物が、こんな初期から情報で降りてくるわけないか。
「俺達がその銀鉱石を取ってきてもいいぞ」
「え!? そんな……」
「その後でいいが、この町を案内してくれないか? 何分着たばかりでな」
俺が辿り着いた結論は、新米鍛冶を守れ、からの派生クエストじゃないだろうか? と、言うことだった。
ならば、受けない理由はない。
町のことは何もわからないのに、また新しいクエストで町からでて外周にある墓地に移動するのだった。
「だから、何でそんなにポンポン決めちゃうかなぁ? もっと僕にビックリとか驚愕とかさせてよ。もし、シルバー系の武器が出来るならそれは凄い事なんだよ」
俺とクロウ二匹よりも早く、目の前のゾンビを倒したマリアが愚痴りながら俺に加勢する。
被弾率はクロウ含めて俺の方が低い。
別に悔しいわけじゃないぞ!
「決まりだ! 我が手に光は集まらん! ライトボール!」
ゲージと睨めっこしながら正拳突きとともに、スキルライトボールを発動させた。