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第一話

「……なにこれ?」


 希望を胸に、目の前に広がる景色を見た俺の第一声は疑問だった。


 人気・プレイ人口共に世界一と言われた超広域MMORPG「ラグナロク」。


 詳しい情報は悪、と何も調べずプレイを始めた俺が初めに見たのは、今にも朽ち果てそうなボロボロの木造家屋が立ち並ぶ村だった。


「確かに、現実と全く変わらない世界は凄いけど、何でこんなに荒廃した世界な訳?」

「ねぇ、君、ビギナーだよね?」


周りには、俺と同じような初心者と思われる軽装のプレイヤーが何人もいる。


皆共通して訳わからんみたいな顔してるな。


そういえば、俺、何も装備してないけど……メニュー欄に何か書いてあるかな?


「ねえ聞いてる?」

「ええと……まずはメニューを開いてっと?」


メニュー画面は……お、開いた。口に出さなくて思うだけでいいのか。便利だな。


項目は、アイテム、スキル、ステータス、クエスト、パーティー、ログアウト……アイテムでいいのかな?


「何も持ってないな。武器防具はおろか消費型アイテムも持ってないよ……まさか、裸?」

「そんな訳あるか! シュール! 話をきけぇぇぇぇ!」


 本当だ、服は着てる。最低限の見た目は保証してくれるんだな。


 ん? 誰? 呼ばれたような……。


「確かに俺はシュールだけど、誰だ?」

「ここよ、ここ」


 周囲を見回す……俺の事を見てる人、誰もいない。幻聴か……いや、まだ精神を病むような生活はしてない筈。


「……気、気のせいだな。そうだな、そうに違いない」

「下よ、下!」


 声の通りに自分の下を見ると、そこには肌の黒い短髪の女性プレイヤーがいた。


「あや、人がいたのか。これはごめんな。俺を呼んだのは君か」

「……そうだよ、僕だよ。君はビギナーだよね? って聞いたの」


 なんでわかったんだ? まだ、プレイ10分にもなってないけど……。


「……あんた、体は大人、頭は子供の名探偵?」

「違うよ。この名も無き村にいるのは初心者だけ。その中でも、驚きを表すのは始めてすぐのビギナーだからそう思っただけ……それにそれじゃあ、ただの夢見勝ちな美女じゃない」


 自分で言うか? 痛い人だな。まあ、容姿はリアルの自分をスキャンして決定されるから、美人ではあるけど……むしろ、ボーイッシュで可愛いって感じ?


 それに名も無き村って……なんて名前だ。運営手を抜きすぎじゃないか?


「まあ、どうでもいい事だな。俺は君の言う通りビギナーだ。とりあえず先に質問があるが、聞いてもいいか?」

「いいわよ。何かしら?」

「なんで、俺の名前、わかったんだ?」


 変な顔してる。聞くこと間違えたか?






 何でも名前だけは他のプレイヤーにもわかるようになってるらしい。

 PK(プレイヤーキラー)対策らしいが……その為、このプレイヤー名の表示は、如何なる手段を用いても非表示には出来ないとの事。


 この娘の名前はマリア。ホビットとか言う小人の種族を選んだらしい。


 ホビットってなんだ?


「で、俺になんの用なのだ? 貴様の態度次第では聞いてやらんでもない」

「なんでそんなに偉そうなの……シュール、僕が君にこの世界の手解きをしてあげるよ」


 なんだ、急に話しかけてきて馴れ馴れしい娘だな。それにどや顔か。俺とレベル2しか違わないレベル3の癖に……。


「いや、結構だ」

「うん、よろしい。じゃあ早速……って、なんで!?」


 それは当然癪だからだ。


「わざわざ、ご親切にどうも。だが、俺は何でも自由に出来るラグナロクだからこそ始めた訳だ。だからどこまでも好きにやりたい。済まんな……」

「そう……それはまたキツいと思うけど……シュールって面白いね。僕とフレンド登録しよ?」


 今の話を聞いて何故そうなる? ひょっとして惚れたか? モテキ到来か?


「僕もまだレベル3だし、この村にとどまる予定だから。もし、初心者用の説明が欲しくなったら僕にやらせて欲しいんだ」

「何故だ? そこまで俺に拘る理由はなんだ? 正直面白いとかいわれるとGMコールしたくなるが……」


 違うな、これは。だが、何か裏がある感じだ。


「ああ、ごめんね。そんなつもりで言ったんじゃないよ。シュールとなら楽しい冒険が出来るかな、と思っただけだよ」


 他意がない? そんな馬鹿な。そんな奴がこの世にいるのか? 俺の周りはやるかやられるかの人生だったのに……。この子は特別なんだなきっと。


 それにしても、よくわからん事を言ってたな。村に居られる? レベル3?


「それに、シュールに声をかけたのは、クエストで開始初日のプレイヤーに、決められた情報と経験を積ませるって言うのがあるからだよ。この村じゃ出来るクエストが少ないから……先に説明すればよかったね。ごめんね、シュール」


 よかった……ちゃんと理由があった。もし、全く理由なく親切にしようとしていたなら、俺の人生が否定される所だった。


「君も面白いな。よし! マリア、君とフレンドになろう。それにもし必要になったら、君に質問させてもらう」

「本当! やったあ、! じゃあ、決まりだね。シュール、これから宜しくね」


 なんだか知らないが、いきなりフレンドが出来たな。


 まあ、理由はわかったので、もうクエスト受けてもいいんだが……先程の俺の言葉は嘘だからいいだしにくい……。


 ま、いいや。細かいことは気にしない。


 とりあえず、NPC(村人)に話を聞く事から始めるか。


 マリアと別れて俺はNPCを探して徘徊を始めた。


 何で、マリアは俺に話しかけたんだろうな。周りにはこんなに初心者がいるのに。



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