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愛しい二人

作者: 沢まやこ

「だから… … 来ないでって言ったじゃんかぁ」


目にたくさんの涙をため、情けない声をあげる私。

季節は夏。ジワジワ鳴く蝉の声があたりに弾けていた。

私の視線の先には、小さな男の子が呆然と立ち尽くしていた。

男の子の震える瞳には、死体が。

私の殺した死体が、映っていた。


そう あの日から私「天谷美月」と君「倉木碧」はずーっと一緒なのです。

君は私と一緒にいてくれるのです。



季節は7月。夏休みの真っ只中。帰宅部である私と君は、補充が終わった後にすること

がなく。ただ、屋上へと続く階段に座っていた。二人の他に誰も居ないからだろうか。

階段は妙な静けさを放っている。


「今 なんじー? 」

「12時20分 あと電車まで一時間近くあるね」

「… …暑いし、ひまだなー」


私は切って良かった とミディアムヘアを弄りながら、碧の後ろの一段に身体を横たえた。

私の側で碧の微笑む気配はしたものの、言葉を発することはなく。相変わらず、蝉の声が

ぼんやり響いていた。それと共に耳に入ってくる音。地面を突き上げるような足音、

笑い声。そして元気の良いかけ声。この高校、武長高校の生徒達が生きている音だ。

 

私は手を額へと動かし、頭を碧のほうへと傾けた。彼は一段に腰を掛け、手を膝の上に乗せ

ていた。何をするわけでもなく、ただ座っている。


人気のない場所にいる二人きりの男女。その二人は親しげで、余計な会話をすることもなく。

なんて言葉を並べると、二人は普通のカップルのようなのだが… …。断じて違うのである。

それと同じで、いたって普通に思えるこの夏も日常も私自身も普通ではないのだ。


「碧 今日って病院に行く日だよね?」

「そうだよ あ また注射だね」

碧はそう言って軽く笑った。私が痛みに弱いことを知って笑っているのだ。

ムッとした顔を作ったものの碧はこっちを見てくれず、少々虚しさを感じる。

私は花がしおれるように、真顔に戻った。


「あんまり行きたくないけどな もう薬がないしなぁ」

「そう それに、早く病気の原因を解明したいでしょ? 」


その言葉に応えない私。碧は直ぐさま後ろを振り向くと、苦笑いを浮かべて「ごめん」と言った。

怒って答えなかったわけじゃない、応えられなかったのだ。「そんなんじゃないよ」と

私は碧に言ったのだけど、碧はまだ困ったように笑っていた。


私は病気を患っているのだ。多分先天的なもの。

 

それははおそらく「脳の病気」である。そして、それは非常にナイーブな問題であり、軽々しく触れ

られたくない事柄だ。だから、私の病気については、私の家族と碧しか知らない。


それはつまり「心を許せる人がそれだけしかない」という意味で。私が他人に心を開ける性格でない

ことを暗示しているのである。私は友達を作ることに抵抗を、少しの恐怖を感じるのだ。


恐らくカウンセラーの大半は、それに対し「何でそう感じるのか」と聞くのだ。

待っていたかのように、私は答える。たった一言「病気のせいだ」と。

詳しく話し出したら、私の口は一日中言葉を吐き続けるだろうからだ。

それは、愚痴だったり泣き言だったり。前向きな言葉はきっとない。


私と病気はそんな関係だ。切っても切り離せず。私は様々なものを奪われる。



「そろそろ時間だよ」

碧は腕時計を見ながら、ゆっくり立ち上がった。私もその動きにつられる。起こす体がだるく、重かった。やはり病院は嫌らしい。

心が認めずとも、体は正直だ。私は大きく息を吐き、一気に階段を駆け下りた。



「 つまり どういうことですか?」

私の無機質な声が響く、診察室。医師|(駒木由雄)と私は向かいあって座っていた。碧は私の後ろに控えており、その他の者は誰一人としてこの空間にいない。 私の真ん前に座っている駒木は、嫌に神妙な

けれど肝の据わった瞳で私を見ていた。


いつもは薬を貰うだけである来院。しかし、今日は違った。治療法変更の説明を受けたのだ。その方針が気に入らなくて、私達は今ここで談義をしている。


「ですから 気に障る内容だとは思うんです。 先に謝ります、申し訳ありません

つまり、他の大きな病院の医師達を紹介しますから、その方達にみて貰うのはいかがですか?と

本当に申し訳ないのですが、私の力量では美月さんの病気を完治させるのは難しいようです」


いつもは気さくな振る舞いの駒木なのだが、今日は全てが堅苦しい。そんな様子を見ると

『自分の病気が悪化したのではないか』そんな不安を掻き立てられずにはいられなかった。

私はしばし閉口した。訳もなく視線を落とし、横髪をいじる。仲を深めたはずの駒木と

神妙な顔で早いテンポで、話をするのは嫌だった。


「… …先生、私の病気 悪化したんですか?」

「いや、そういうわけではないです。安心してください」


医師はニコリとも笑わず、右手を左右に振った。

じゃあ何故? その気持ちをそのまま言葉にする。


「じゃあ、何でですか? きっと他の医者達が私を検査したって、一緒です。

 きっと今更何も分からないと思います」


「そんなことはないですよ 美月さん。

 大きな病院に行けば、設備は整っていますし腕の良い先生方も大勢います。

 より質の高い治療が受けられますよ」


遠回しに『この病院で治療を続けたい』と言ったのだが、駒木には分からなかったようだ。

それとも分かっていてわざととぼけているだろうか。

でも、それはどうしてだろう。そこまでして、私の治療を続けたくなくなったのか。


私はまた、視線を下に向けた。とても親身に接してくれた人だから、何故こんなことを言うのか

疑問に思う。それと同時に「嫌われたのだろうか」という、妄想が生まれ落ちた。


パンパンに膨らんだ妄想は、リアルな焦燥感へと姿を変えた。

心が鉛に変わったかのような錯覚を受ける。

『何故、転院を勧めるんですか?』そう聞けたらいいのだが。

駒木に酷く拒絶されている気がして、言葉が喉につっかえた。


私の上下の唇は、とても仲良しなようで、心の霧を晴らす術を私は失っていた。

 秒針の、時を刻む音だけがあたりに響く。重たい沈黙は、私に纏わりついてきた。

『このまま承諾してかえってしまおう』その選択肢を選ぶのに時間はかからなかった。


「じゃ」


「失礼ですが、先生。単刀直入に質問をさせてください」


私の声を塗りつぶすように、碧が声をあげた。失望に覆われていた私は、希望の光を見上げるように

碧を見上げた。いつの間にか、碧は私の隣に立っている。


「先生が美月に転院を勧めるのは何故ですか?

 先生は、有名な医師達にも劣らない敏腕です まさか美月の治療ができないわけじゃないでしょう

 

 美月は、この病院で治療を受けたいんです」


碧は、医師の瞳をじっと覗き込んだ。医師は何も言わず、彼の瞳を見返す。

心の内を晒してくれるか? 少し期待したのだが。医師の口に浮かんだ嘲笑じみたものが

私のそれを打ち砕いた。


「美月さん あなたは早く病気を治したくはないですか?私はそう思って言っているだけですよ

まだ時間はありますから、ゆっくり考えておいてください。親御さんには電話をしておきますから」


「… …はい」


もう、医師に何も言い返せすことは出来なかった。

親しくなった「つもり」だったのかな。そう思うと、胸がチクリと痛んだ。



 「夕方なのに、暑いね」

碧はポツリと呟いた。


「そんな当たり前のこと言われても困る」

私は、ジャングルジムに腰掛けながら返事をする。


私達は今、まるで忘れ去られたかのような公園にいた。あたりに広がっているのは、古びた遊具と

まばらにに草の生えた地面。そして、ポツポツ落ちている色褪せたゴミ。

公園周辺に茂っている鬱蒼とした木々が、より寂寥感を強調していた。


何故、病院の帰りにこんなところに来てしまったのか、自分でも良く分からなかった。碧は

「何処か買い物にでも行こうか」と言ってくれたのだけど、賑やかなところに行くのはどうにも

嫌だった。そうして、碧の提案を「いやだ、いやだ」と断り続けて。吸い寄せられるようにこの公園に入ってしまったのだ。


ポツリ、ポツリと。まるで心から零れた言葉を拾うように。私達は会話をしていた。


「私、きっと留年しちゃうね。碧とも離れちゃうし 嫌だな」


「大丈夫だよ、そんなの。僕が一緒にいるよ」


なだめるような口調だった。私は言葉を返さずに、ただ地面を見つめていた。


「ねぇ 美月 突然だけど質問してもいい?」


「なに?」


少し間をあけ、碧は口を開いた。


「どうして病院で、『転院は嫌です』て主張しなかったの?

 先生とは親しいのに」


「… … 碧は先生の態度がいつもと違うのに気付いてたでしょ

 それを踏まえて、何で自分の感情をぶつけなかったのか って聞きたいんだよね?

 そんなの、先生に悪いからだよ」


「もっと詳しく」


サラリと要求してくる碧が、憎たらしくて。私は碧の足を軽く蹴った。  


「確かに私と先生は親しかったと思うよ。だから、露骨に自分を隠すような態度をとられて

 ちょっと傷ついた。

 だから先生はよっぽど私のことを遠ざけたいんだな、ってそう思ったの」


私は一度口を閉ざしたけれど、碧は何も言おうとはしなかった。


「でも、私の病気って、すごく重たいでしょう?

 だからワガママを言えないし、しょうがないなって。

 だって、未知の病気を是非治したい って医者なんていないもの。漫画じゃないんだから。

 先生はよくしてくれたよ。」


そこまで言うと、私は完全に口を閉ざした。本音を言っているだけなのに

こんなにも心がザラつくのは何故だろう?私は、手先が侵されるように冷えるのを感じた。


「やっぱり美月は、あきらめが良すぎるね。

 高校でもそうだ。したくないことはしたくない。したいことはしたい。って言えばいいのに

 あんまり寡黙すぎるのもよくないよ」


「それが私だよ 何を説教垂れてるの」


思わず荒い口調になった。図星を指されるとムカつく、というあれだ。


「嘘だー、僕には色々なこと言うでしょ?それと同じように色んな物に要求していいんだよ

 自分を閉じ込める必要なんてないし、病気だからって遠慮する必要もない」


凜とした沈黙が、一瞬だけ。

 

「思いっきり怒って、馬鹿みたいに笑って、何をしたっていいんだよ」


碧のあっけんからんとした言葉。それは、何の苦労もせず、私の心に染み渡った。

何だか、心の塊を解された気がして。私はそっと息を吸った。

何故、碧みたいな逸材が私の側にいてくれるのか。本当に疑問である。


碧のほうへ顔を向けると、暖かいオレンジに染められた微笑みが視界に入った。

強い光の宿る瞳が、光に透かされて茶色になっている。それだけではなく

軽くて細い黒髪も、白い肌も、可愛い睫毛も。全てが暖かい光に包まれて

薄ボンヤリと調和していた。


似合っているなぁ、と思う。今の暖かい日差しとか、優しそうな微笑みとか。

碧にはとても似合う。


「碧にはごめんもありがとうも言い足りないね」


「何年の付き合いだと思ってるの」


碧は笑った。


私の視線は、空を泳ぐ。


薄い水色の空に、夕日の色が溶け込む。白い絵の具で描かれたような雲は、水が多かったらしい。

とても薄くて、直ぐ消えてしまった。

遠くに見える家々は、幸せを噛みしめているかのように静かだ。辺りに林立している木々も

囁き合うように揺れて、愛し合っている。


切ない声をあげて飛び去る鳥に、私は思いを寄せた。『幸せに生きられるといいね』と。

それほどに、私は今満たされていた。自分が今のこの景色と、一体になったかのような錯覚を受けた。


だが、一粒の不安が。

それは、空の一角の薄黒い塊。夜。

はじめは点のようだったそれは、滲むようにじわりじわりと広がって

何ものも、スッポリ包み込んでしまう。


私は恐ろしかった。私の中の黒い点は、何処まで広がったのだろうか、と。

いつ私を塗りつぶしてしまうのだろうかと。


肺が悲鳴をあげるほど、私は息を吸った。

今、この時が惜しかった。


「ねえ、碧。夜に塗りつぶされた空は、死んでしまうと思う?」


私がそう問うと、碧はしばらく考えていた。


「… …夜空と昼空とは共生しているんだと思う。

 お互い死んでしまうことはないんだよ、きっと。」


『共生』。私は心の中でその言葉を噛みしめた。決して望むものではない。

けれど極端すぎる言葉のように、安っぽくも嘘くさくもない。とても、柔らかい言葉。

 碧の全てに、私は驚愕せざるを得ない。言葉選びのセンス。思考の秀逸さ。そして、私を救う手腕。


「ねえ もう帰ろうか」


私がそう言った時、もう空は藍色に染まっていた。



私が家の扉を開けると、待っていたかのように母の腕が伸びてきた。その腕は、私を母の体に押し付ける。もう、医師から電話があったのか。母の暖かさに、香りに包まれながら私は思う。


「病気が悪化したわけじゃないって、先生言ってたじゃない

そんな顔しないでよ」


母は今にも泣きそうに顔を歪めていた。それは、本当に私を愛してくれている証拠であって。

そんなものを見たら、心が緩んでしょうがなかった。

私はそっと、母の背中に手を回した。全身で、母の存在を感じる。



転院するまでの日々はいたって普通だった。私は私のままだったし、みんなはみんなのままだった。

「目には見えないけど、碧の言葉はちゃんと私を変えたよ」

動物の世話係を引き受けた時、あんまりにも申し訳なくて。私は碧にそう言った。

私は動物が苦手なのだ。


すると、碧は目を丸くして

「変わらなきゃいけない、なんて思ってるの?僕は美月が楽になるようにっ、て言っただけ

 なんだけど。もし、美月が義務感を感じたなら、僕の言葉は失敗だ」

なんて言った。また、碧の言葉は私を救うのだ。


両親は毎日毎日、こちらが辛くなるくらい、心配そうな顔をしていた。母は毎日食卓にご馳走

を並べて、そして父は毎日のようにお土産と称してプレゼントを買ってきた。

『あっちの病院に行っても元気でいるのよ』とか『病気、早く治すんだぞ』とか、言えばいい

ものを。変に気遣って、病気の話には触れなかった。

そんな時、私が両親に置いた距離を感じてしまって、両親の私に伝えられない思いを想像して

しまって。私は、両親の真ん前で泣いてしまった。まるで、赤子のように泣く私は滑稽だった

だろう。


でも、それで良かった。すべてを曝け出しても良い、という意思を感じてくれるなら。

親として認めているということを分かってくれるなら。私は幸せだった。



転院三日前。

私は、落ち着かない気持ちで病院の待合室に座っていた。転院する前に、一度検査に来て欲しい

ということで駒木医師から連絡があったのだ。正直、駒木医師とはもう顔を合わせたくない。

何故、私にあんな態度をとったのか分からずじまいで非常に気まずいからだ。


周りを見るのも嫌で、私はただ地面を見ていた。

碧は懇談があるとかで、少し遅れてこの病院に来る。


「天谷美月さん 診察室にお入りください」


少々雑音の混じるアナウンスに、私は腰を上げた。

心臓が高鳴って、手が汗ばんでいる自分は、酷く臆病である。


 診察室に入ると、駒木は相変わらずの態度であった。重たい空気を、鎧のように纏っている。

私は早くも、ここから逃げ出したい衝動に駆られた。


「では美月さん 先刻申し上げた通り、検査をしますから」


「はい」


駒木は、私の返事を背中で聞いていた。軽快な足音を立てて、奥の部屋に入っていく。

その部屋からは、カチャカチャと器具を動かす音が聞こえてきた。


数分もかからず、準備は整ったようである。駒木は小さなワゴンを押し、私の前に座った。

ワゴンには、注射器と何か液体の入った容器が積まれていた。

注射針の鋭い痛みを思い出し、私の気分はより暗鬱なものとなる。


「では、美月さん どちらか片方の手。

 では左手を出していただけますか?」


私は指示通り、左手を出した。ゴム紐がキュッと結ばれて、鼻をつくアルコールの匂いが。

そしてすぐ、鋭い痛みが左手に走った。

 私が顔を歪めている間に、注射は終わったようで。止血用ガーゼの、ひんやりした感触に

そっと目をあけた。


「自分で、おさえておいてください」

 私は再度、駒木の指示に従った。彼はまた、ワゴンを押して奥の部屋に行く。


テキパキ進む様を見ていると、焦燥感が湧いてきた。今更だが、駒木に言いたいことが

口元に押し寄せてきた。けれど、情けない私は何もできないまま。心の中に鉛を抱えていた。


私は苦しい時、暖かさを求める。それは、心地よい寂しさとか思い出とか。

 私は欲求を満たすべく、診察室を見渡した。


たくさんの傷や染みがある壁や床と、ところどころに置かれる可愛いぬいぐるみと。

それは、私が小さい頃から変わらない物達。

ボコボコへこんでいるブリキのゴミ箱は、私のリクエストしたもので。

明るく笑う少女のキャラクターがプリントされている。


ここでは、優しい懐かしさが私を待っていた。それは心地よい寂しさを私に与える。

そういうものを感じると、『もういいかな』なんて。満たされた気持ちになるのだ。

私は、息を潜めるように、微笑んだ。


その時、その行為を咎めるかのように、後ろの扉が荒々しく開かれた。

私は驚いて、後ろを振り向く。

私の後ろには、細身の男が立っていた。隙のない白衣姿と、眼鏡の奥に光る警戒した瞳。

酷く近づきがたい印象を受けた。


「君が、天谷美月さん?」


「はい… …」


『この男は誰だろう』そんな疑問が先立った。男の唐突な登場と質問は、私に緊張感を与え。

私は少なからず、この男に拒否感を覚えた。そんな私の心も知らず、男は私に視線を留め

続けている。


「ちょっと 困りますよ住田さん!」

奥の部屋から荒々しい足音が近づいてきた。駒木は、『住田』と呼んだ男の肩に掴み掛かる。

駒木の表情は、怒りのせいか険しい。それと対照的に、住田は何処吹く風といった態度で

涼しい表情を浮かべていた。


「もう薬は打ったんですね? 私としては、もう彼女を連れて行きたいんですが」


「何を言っているんですか! 期日までは何もしない約束でしょう?」


おそらく私の事で争っているのだろう。しかし、何のことだかさっぱり分からなかった。

それにしても、先程打った注射のせいだろうか。2人のキツイ口調がやけに恐ろしく感じられた。

汗ばんだ手で、服の裾を握りしめる。まるで、お化け屋敷に放り込まれたかのような。

そんな感情の高ぶり方である。


「あなた 分かってますよね? この子は」


住田がそう言った刹那、駒木が押し倒しそうな勢いで、彼の胸ぐらに掴みかかる。

駒木の瞳は憤怒で見開かれていた。


「お前! どうなるか分かってるんだろうな?! 」


駒木が言葉を荒げたことに驚く。不穏な空気は私の肺にへばりついて、呼吸を苦しくさせる。


いよいよ私の心臓は警鐘音を鳴らし始めた。何かが、おかしい。私は確信した。

先程の注射、あれは何だ。私の何をどう変えるものだ?


「隠したってどうにもならないでしょう もうこっちで話はまとまってますから」


住田は雑に話を切り上げ、視線を私のほうに向けた。


「ふざけるな!!」


全身で動きを食い止めようとする駒木を、住田はいとも容易く突き飛ばした。人のぶつかる

鈍い音と、医療器具のぶつかり合う音が、酷いハーモニーを奏でた。私は吐きそうだった。

それくらい感情がぶれた。

 

それに加えて、私を覆おうとする住田の影。危険だ。私の何かが、爆ぜてしまいそうだった。


「君、自分が何だか知ってるかい?」


唐突すぎる質問で、相手の意図が読めない。私はその問いに答えられなかったのだが、住田は

構わず言葉を続ける。


「君、変だと思わないかい? 幻覚が見えて人としてのタガが外れる病気だなんて。

酷く、獣じみていると思わないかい?」


何が言いたいのか、さっぱり分からなかった。私の頭は酷く混乱していた。

まるで紐がこんがらがるように、複雑すぎた感情はよくわからない塊へと変貌する。

視界を占める住田の笑みに、喉が締め付けられた。


「おい! やめろ 本当に危険だぞ!」


焦った駒木の声が頭の片隅に届く。ワンテンポ遅れて、人の殴られる鈍い音も。


「お前、今酷く混乱しているだろう?」


その通りだ。頭の奥の方で、そう思った。酷く、変な感じがした。まるで世界を客観視して

いるような。妙に鈍く波打つ心臓。その音が私の頭に静かに息づく。


「お前はな、人間じゃないだよ  実験課程で生まれた兵器だ

それが、何の手違いか外に出ちまってなぁ… …

  おまけに養子になってなぁ。笑わせてくれるよな

おまけにバグおこして、暴走して人殺して。

お前はこの後、散々実験されて、殺処分だよ

  ってまぁ。薬が効いてるからな、何言っても無駄だけどな」


そう言って、住田は笑った。その光景が、バラバラと分解されて脳に届く。何の音か分からない

高音が私の頭を震わせていた。まるでノイズが入ったようで、もう思考することが困難だった。

じっけんどうぶつ?さっしょぶん? ようし?へいき?私には、関係 ない。


「嘘」


ガシャンと間抜けな音がする。じんわりと膝に痛みが広がった。地面が揺れる、海上に浮かんだ

かのように揺れる。


「じゃあお前、自分の顔見てみろよ」


頭皮に鋭い痛みが。グラグラして、焦点があわない。何も、わからない。


「やめろ!」


破れるような叫びと駒木の顔が一致した時。私の視界は鮮明なものとなった。



黒い目、私の目の前には黒い目があった。まるで人の目を塗りつぶしたかのような。

それは一定のリズムで、気味悪く収縮している。トン…、トン…、トン。

しばらくして私は気付いた。そのリズムは、私の鼓動とそっくり同じだった。


「あっ… …ぅ あ」


まるで飢えた化け物ように光るそれ。私の感情がぶれるたびに、動く。私を睨み付ける。

あぁ なんだこれは。 気持ち悪い、気持ち悪い。


「ああああああああああああああああああああああ!!」


壊れたヒーターが切れるように、私の理性は音を立てて失せた。



胸のむかつきと共に、目を開けた。いつの間にか意識を失っていたようである。

それにしても、何故私は堅い床で寝ているのだ。

ボーッとする頭を抱えながら身体を起こす。ぼやける視界で、薄暗いあたりを見渡した。

ここには、誰もいないようだ。


「ひっ」


何かぬるりとしたものに触れ、私の心臓は跳ねた。

暗さに目が慣れたのだろう。それが何か、目視することができた。 


血だ。

まだ乾ききっていない、血。


そう気付いた瞬間。血なまぐささと共に、先刻の記憶が押し寄せてきた。


私は先程まで診察室にいた。そこで、検査を受けていたのだ。

そこで注射をしてから、どうもおかしな感じになって。


なって?


その先がどうしても思い出せなかった。 血濡れた手が、カタカタと震え出す。


しばしの思考の停止は、私に動揺をもたらしたのだ。


また私は、発作を起こしたのか? その考えに至るのに時間はかからない。


私の頬には、嘘のような冷や汗が伝い。手先は冷たく痺れた。


自然と、身体が震え出した。気付きたくないのに、気付いてしまう。

私の腕には血が。服にも足にも。私の全身に血がへばりついていた。


「いやぁああああああああ!! 」


私は走った。わけも分からず出口を目指す。スライド式の扉に手をかける。


なんの障害もなく開いた扉の先。 


目に飛び込んでくる無数の死体。


その一つ一つに刻まれている悶絶の表情。赤黒い、穴。散らばる鮮やかな肉片。


私が、やったのだ。


私は声にならぬ声をあげ、へたりこんだ。何の抵抗もなく涙が出た。

この現実を、背負いきることができなかった。


「美月! 」


左の廊下から、碧の走ってくる姿が見えた。



それから私達は、非常階段を使い外に出た。碧は血みどろの私を見ても、動ずることなく

逃走の順序を示した。シャワーを浴びて、携帯をへし折って。

そうして私達は今、電車に揺られている。外の景色は、見慣れないものだった。

家とは反対方向に向かっているからだ。


もう、家に帰ることはないだろう。きっとのこのこ家に帰ったら、殺される。

だって私は化け物だから。


自分が害を及ぼす化け物と知っても絶望はしなかった。自殺などしたくなかった。

例え、殺人を犯したという枷が、私を痛めつけても生きていたかった。

宛てもないけれど、私は歩き続けたかった。


「もうお前なんか嫌だって、言えばいいんだよ?」


すぐ横に座ってる碧は、返事をしなかった。一体何を考えているのだろうか。

自分の正体を打ち明けた時も、碧は黙りこくっていた。


「ねえ 碧 私もうほんとに」

「じゃあこの後どうするの?」

「え?」

「僕がいなくなったら、美月はどこに行くの?何をするつもりなの?」


私は、閉口した。歩くべき道はなくて、私は丸い空間にとじこめられていた。

そう、碧が居ないと何も出来ないのだ。でも、迷惑を掛けたくないのだ。

私は俯いた。碧の瞳を、見つめ返せなかった。


「美月は僕にまで心を閉ざすの?迷惑を掛けたら悪いとでも思ってるの?

 もうそんなの散々かかってるよ。それでも美月と一緒にいたいから、助けてるんだろ

 本当に放っておいてほしいなら、その寂しそうな困り果てた顔は何?

 そんな表情しといて、何も言ってくれなかったら僕だって悲しいだろ」


碧は怒っていた。眉毛がちょっとつり上がっていた。私は、いつの間にか碧の瞳を見つめている。

この人なら。そう思えた。何回も何回も思って、更に思えた。


そっと伸ばした手を、碧は強い力で掴んだ。


「… …終点で降りよう とりあえず、乗り継いで 遠くに行こう」


転げ落ちるような、旅になる。

そんな予感が、した。



それから私達は電車に揺られて、揺られて。地に足をつけたのは、午前3時のことだった。

駅前は卑猥なネオンに包まれていて、下品な男女の笑い声があたりに響いていた。


「今日は、ネカフェ難民でもしようか」


そう言う碧の後に、私は続いた。


マンガ喫茶で、碧は熱心にネットをしていた。その後ろで、私はソファーに身体を伏す。

寝付ける気配がなかったが、とりあえず目を閉じておいた。


「美月のこと すごい大きな記事になってる。

 これで、僕たちが殺されたりっていうことは、ないだろうね」


うん、と私は小さく返事をした。


「話変わるけど 薬持ってる?」


首を横に振る。きっと、近いうちに発作が起きるだろう。次は、どうなってしまうか不安

であった。しかし、よく分からない。何故か発作が他人事のように思えた。

感覚が、麻痺しているのだろうか。


『ごめんね』と言おうとしたけど、やめた。そんなの碧はわかりきってるからだ。



2日目、私は髪をベリーショートにした。もちろんセルフ散髪だ。

碧は黒髪を金髪に染めて、UNIQLOでシンプルなTシャツを買った。もったいない、せっかく

綺麗な黒髪なのに。そう思ったが、金髪は金髪で似合っていた。

「田舎のヤンキーみたいだよ」

私がそう笑うと

「うるさいな モンチッチみたいな髪型のくせに」

と返された。『モンチッチ』それは新鮮な比喩で、私は頬が痛くなるほど笑った。

碧もそれにつられて笑う。


三日目、私達は銭湯に行った。いくら荒れた土地とはいえ、何日間も同じ場所に滞在すると

怪しまれる。銭湯を出てすぐ、私達は寝る場所を探した。しかし、簡単には見つからなかった。

1日目に泊まったところ以外は、身分証明書が求められたのだ。ラブホも同様であった。

『最近規制が入ったんだよ あんたら運が悪いね』汚い肌の女に、そう言われた。

本当だよ と心の中で頷く。


結局私達は、寝床を見つけられないまま。人通りの少ない裏路地に座り込んでいた。

人気のない所は危険だが、大通りは補導官が居る。補導されるのだけは、避けたかった。


裏路地は生ゴミの匂いがした。暗闇はどんよりと濁っていて、生を感じさせない。

けれど、静寂が私をここに惹き付ける。私は静けさを好いていた。

私の生が荒々しいからだろうか。『人は自分にない物を好むのだ』と読んだことがあったため、

そう考えてしまった。

 

今、思考はとても鮮明だった。発作が起きるんじゃないか。そんな不安も大して湧いてこなか

った。なんだかんだで、私はこの旅を気に入っているんだろう。暗転の旅だと心得ていても、だ。

 日常が、日々平坦なものだから。ではない。ここに「ないもの求め」は関係ない。

ただ単純に、碧と一緒に入られるからだ。本人には申し訳ないのだが。


私はチラリと横目で碧を見た。その奥に、一つの人影を発見する。

そのことを、私は碧にジェスチャーで伝えた。碧は、緊張した面持ちでその人物を観察し始めた

ものの、すぐに表情が緩んだ。

「ただの男だよ 商売の最中に、一服にきたんじゃない」

コソッと囁いて、その場に座り続ける。今、私達は擦れている子供にしか見えないだろう。


男は煙草の火を点滅させながら、こちらに歩いてくる。私達を見つけると、少し目を丸くした。

その場に止まって、私達をじろじろと見る。


少し不安になった。だが、碧はすかした態度でその場に座り続けていたため、私もそれの真似

をした。しかし男は立ち去らず、私達にじりじりと近づく。私達を意識しているのが痛いほど

伝わってくる。


「なんだよ」

ついに碧が声をあげた。感じ悪く男を睨み付ける。

「喧嘩できるのかな」と冷や汗が出たが、同時に碧らしからぬ言動に吹き出しそうになった。


男はそんな碧に絡むことなく、平坦な表情で私達を見ていた。

何が目的なんだ? と思わず構えてしまう。


「君達 何かわけありだろう? 髪の色、馴染んでないよ」

私と碧は顔を見合わす。次、この男がどんな行動に出るのか予想できなかった。


「寝る場所ないんだろ? うちの家おいで」



数時間後、私達はその男の家でくつろいでいた。男の名は、『田中 秀夫』というらしい。

嘘くさいと思ったが、どうでもいいのでそこには触れなかった。

 最初、碧は警戒して、田中の家に来ようとしなかった。しかし、次第に田中の無防備な雰囲気に

呑まれていき、結局ついて行くことになった。今思えば、非常に危険な行為である。

しかし田中がいい人だったので、今回は救われた。

 田中の家には私達3人以外に、いかにも水商売をしてそうな女『アヤ』と、始終ムスッとして

喋ろうとしない『佳奈子』、死んだように眠っている男『ダイ』がいた。

私は、佳奈子に目を惹かれた。堅い表情と、不健康に細い身体。それらが複雑な環境で育ったこと

を私に告げたからだ。複雑な環境には、複雑な心が付きものなのだ。


田中の部屋は、狭いアパートの一室だった。そんなところに6人も詰まっているのだから

室内の密度はものすごい。おまけに、田中の部屋は匂いこそしないものの汚い。

あちこちにカップメンの容器やらエロ本やらが散らばっており、「男の部屋」という感じだ。


「にしてもさー 何で美月ちゃん達はこんなとこ来たの?

 二人ともよく見たら、すごい上品そうな顔じゃない。可愛いし、かっこいいよ?」


「え、お 親と喧嘩しちゃって」


嘘くさいと思いながら、言った。そもそも人と喋るのは苦手なので

派手な女とコミュニケーションをとれるわけがないのだ。


「おいアヤ、詮索はなしだって」


田中はチューハイを呑みながら言う。ルーズなしゃべり方なので、全く咎めているように

聞こえない。


「アハハ、ゴメンねっ てか二人とも寝たいよね? ごめんねアタシうるさくて」


時刻は、12時を回っていた。そういえば身体が酷く疲れている。私はゴシゴシと目を擦った。


アヤも私につられて時計を見上げ、

「んじゃアタシもう帰るわ」

と唐突に言った。軽快な足音が玄関まで続き、扉の開閉音が鳴る。


アヤが立ち去り、部屋には静寂だけが残された。田中は何もなかったかのように、まだチューハイ

を飲み続けている。私の視線に気付いたのか、田中はこちらを向いた。

「電気消していいぞ」

はい、と返して電球の紐を引っ張る。カーテンが薄いものだから、完全な暗闇にはならなかった。

私はアヤに敷いて貰った布団へと足を伸ばす。そこは佳奈子の隣であった。

碧の布団は、ダイの隣に敷かれている。一応気を遣って男と女にわけてくれたのだろう。

しかし部屋が狭いため、距離は30㎝ほどしか離れていなかった。


布団に入るとき、そっと佳奈子の顔を盗み見た。彼女は前髪が長くて、顔がよく見えない。

遠くから見ると、丸い輪郭のせいで幼い印象をうけた。しかし、前髪から覗く両目はパッチリとし

ておりスーッと伸びた鼻筋も美しかった。将来、きっと美人になるだろう。

私は彼女と何か話をしたかったけれど、ヘッドフォンをつけていたのでやめた。


布団にくるまれるのは随分久しぶりな気がした。まだ家を出て、4日しか経っていないのに。

私は両親の顔を思い出し、そして自分が養子であることも思い出した。全てが嘘のようだった。

何が本当なんだったっけ。とわざと呆けてみる。

そして、それは両親の愛を否定しているのだということに気づき、胸が痛んだ。

両親を心配させているのかと思うと、更なる痛みが押し寄せる。



4日目、私は昼頃目が覚めた。碧と田中はとっくに起きていたようで、座卓を囲んで座っていた。

私の隣では、佳奈子が寝息を立てている。


「おはようございます」


私が田中に声をかけると、田中はひょいっと片手をあげた。熱心に読み物をしているようだ。

何を読んでいるのか聞かずとも、「求人雑誌」と表紙に大きく書いてあった。

だいたい社会人が、昼に家に居るはずもない。


田中の家はとても暇で、平和に時間が流れた。ここにいる四人は、無口なものだから、始終沈黙が

続いている。私と碧が話す以外、会話と呼べるものは聞こえてこなかった。


私はなんとなく佳奈子のそばに居た。彼女は、ヘッドフォンを耳から離そうとしない。きっと話し

掛けてほしくないんだろう。そう察し、無闇にコミュニケーションをとるのはやめた。しかし、

碧のもとばかり居るのも悪い気がした。変に気を使うやつだと自分でも思う。


3時頃、不意に田中の携帯が鳴った。彼はそれに対応した後、家を出て行った。

なんとなく、仕事の話だろうと察しがついた。


碧も田中の後を追うように、外に出た。「どこに行くの?」と声をかけたところ

「日用品買いに行く」とかえってきた。本当は、私がするべきことなのに、と申し訳なく思う。

まぁ、仕方がない。私の顔はテレビで報道されてしまったのだから。


家の中には、私と佳奈子の二人きりだった。相変わらず沈黙が続いたが、年下の子に気を使う

こともない。私は、アヤがおいていった雑誌に、再び目を落とした。

鬼盛り!だとかツケマ三枚重ね!だとか私には全く縁がないが、暇なので読む。


「 …ぎ」

「え?」


寝転がっている佳奈子が、声を発した。声があまりに小さいので、思わず聞き返した。


「かぎ、掛けたほうがいいんじゃない」


弱い声で、呟くように佳奈子はいう。しかし、今度は聞き取ることができた。


「あぁ 女二人だしね」


スッと立ち上がると、玄関へ向かった。ついているのは、えらく安っぽい鍵であった。ないより

ましかと、手首を回し鍵を締める。


居間に戻ると、佳奈子はヘッドフォンを外していた。先程まで私の手にあった雑誌に、目を落と

している。


「こういうの 好きなの?」


佳奈子は黙っていた。話し掛けるべきじゃなかったかな?と思った頃に、返事がかえってきた。


「お母さんが、載ってる」


え、と思わず言葉を零しそうになった。思わぬ返答である。

お母さんは、こんな雑誌にのれる年齢なのだろうか。複雑な思いが湧いて出たが、

それを押し込めた。


「何処に?」


佳奈子は、読者モデルの欄を指差した。そこには、化粧に埋れた女の顔があった。年齢は

27、8といったところだろうか。不自然な目頭と、異様に細い顎が、整形したことを物語って

いた。佳奈子の顔から察するに、十分可愛い顔であっただろう。もったいない。


「佳奈子ちゃんのお母さん、お洒落だね」


「そんなお世辞言わなくていいよ ただの下品な女じゃん」


佳奈子の吐き捨てるような口調に、思わず動きが止まった。母親にこんなことをいうなんて

酷い子。というよりも、母親が佳奈子にどんな扱いをしているのか。それが伺い知れた。

きっと物を扱うように、接されたのだろう。

佳奈子から滲み出る寂しさが、私にそう感じさせた。


私が黙っていると、再び佳奈子のほうから話しかけてきた。

案外口数が多いんだと意外に思う。


「ねえ オネーサンは、どんな辛いことがあったの?」


佳奈子は自分と私を、重ねているのだろうか。家出の原因はそれ一つではないのに。


「うん、辛いことっていうか、悪いことしちゃって。帰るに帰れないんだ」


「そんな風に見えない」


私は苦しく微笑んだ。佳奈子の歳は12、3といったところだろうか。まだ幼いのに、人を疑う

ような探るような瞳をしている。『人は、信じられない?』そう聞きそうになった。子供相手

なのに、馬鹿だ私は。


「佳奈子ちゃんは、辛いことがあったの?」


佳奈子はクルンとした瞳で、私を見つめていた。私の何かを、探っているのだろうか。

私は黙ってその瞳を見返した。


不意に佳奈子はそっぽを向いた。


「そんなのやんなるくらいあった。だから私、小学校も半分いってないもん」


そういうことを言う子供は、大抵自慢気に話すのに。佳奈子はつまらなさそうだった。

そういう時は、どんな心境なのか。日の当たる道を歩んできた私には、分からなかった。

佳奈子の暗さは、子供という可愛いらしいお面から、チラリチラリと垣間見れた。

それを酷く、可哀想に思ってしまうのだ。余計なお世話だと分かっているけれど。


「私には、分からないけど 凄く辛かったんだね」


そう言うと、佳奈子は黙ってしまった。こんな時、碧のように言葉のセンスがあればと悔やむ。

残念なことに、私の思いはミリ単位ですら、彼女に伝わってくれないのだろう。


私は弱まった眼光で、彼女を見続けていた。彼女の口が開かれる。


「オネーサンも、寂しくはない? オネーサンは、なんとなく寂しい感じがする」


予想外に柔らかい反応が返ってきて、私は驚いた。


「オネーサンは私のことをちゃんと見てくれるじゃん?会話をちゃんと考えてくれるじゃん?

オネーサンからは、なんか、いいのが出てる」


その言葉には、佳奈子の優しさ正直さが含まれていた。不貞腐れているのは外見だけ。

中身は驚くくらい綺麗で、秀麗だ。ひねくれた子、なんて思っていたことを恥ずかしく思った。


「だから、あの男の人も、オネーサンのことが好きなんだと思う」


「えっ」


固まった私を、まさに?という顔で、佳奈子は見た。


「いや碧は、そんなんじゃないな… …親友なんだけどね」


「え 彼氏じゃなかったの? でも、絶対好きだよ 」


だと嬉しいけど、と言い掛けて、これじゃ私が好きみたいだ。と気付いた。

適当な返事が見当たらないため、別の話題をふる。


「あの男の人、碧のことはどう思う?」


佳奈子は興味なさげに、目元をゆるめた。


「別になんにも

 あの人は、私のこと気にも留めてない感じだし。何か、必死になってるものがある感じ」


対した洞察力だと舌を巻いた。私より小さいのに、どれだけ人を観察してきたのだろう。

それにしても、碧が私に必死になってくれてるのに、私は何もしてないなんて。どうにも

落ち着かない。


「ねぇ オネーサン達はいつここを出て行く?」


唐突に佳奈子は聞いた。


「ちょっと、わかんないな。宛てのない旅だし。」


「行くところないの?」


「実はね」


私は頼りなく笑った。


「じゃあ、さ。もし、もしよかったらその旅に私もついてっちゃだめ?」


佳奈子の視線はまっすぐ私を捉えていた。佳奈子の瞳は、愛情に飢えていた。

断りたくない。そう思った。けれど、とてもじゃないけど、承諾するわけにはいかない。


「ごめんね 佳奈子ちゃんは、連れていけない」


そういうと佳奈子の顔はほんの一瞬、悲しみに歪んだ。そして、無表情に戻る。

この子は、こうして耐えてきたのだろうか。たくさんのことを、諦め続けたのだろうか。


「だよね もうここにも居づらいからさ、言っただけだよゴメン」


逸らす目線。早口で言い終えた言葉。佳奈子はとても素直だった。

そんな少女を私は愛しく思った。


ふいに、心がじんわりと沁みる。素晴らしい詩を読んだような、そんな気持ちになる。


佳奈子を傷つけたくない。そんな思いから、言葉が勝手に溢れた。


「私達ね、携帯も自分で壊しちゃったの。居場所がばれたら大変だから。

そんでね、私達のことはニュースにもなってるの」


佳奈子は、私の顔を見上げた。


「それぐらい大変なの だからね、加奈子ちゃんのことは連れていけない

でも 加奈子ちゃん、ケータイ持ってる?持ってたら番号教えて」


佳奈子は、チラシをちぎったところに番号を書き、私に渡した。

私はそれを小さく折りたたんで、ポケットの奥につっこんだ。


「もし、またケータイ買ったら 加奈子ちゃんに電話するね」


加奈子は深く、頷く。


しんみりとした心が、ひしひしと痛かった。

ああ、加奈子がもう少し大きくなったら友達になれそうなのに。

今更、人と繋がっていくことの尊さを知った。私は切なかった。

もっとたくさんの人に、心を開けたら。愛しさを深く知れたのかもしれない。

けれどすべては遅すぎた。


今は、佳奈子といたい。とりあえずそう思った。



私達はそのまま夜を迎えた。今日はダイもアヤも家に来ず、四人きりだった。

相変わらず田中は求人雑誌を読んでいる。佳奈子はというと、私の隣で眠っていた。

無理もない、もう夜の12時を回っているのだから。佳奈子から少し目線を外すと碧の寝顔が

目に入る。本当なら私も眠っているところなのだが、何故か目が冴えていた。布団の中で何度

も寝返りを打つが、どうにも落ち着かなかった。とりあえず、目を閉じる。


いつの間にか寝ていたのか。私は寒くて目が覚めた。そのままあたりを見回すが、真っ暗で

何も見えなかった。今は何時くらいなのだろうか。時間の感覚が全くない。

とりあえず二度寝をしようと、ずれた掛け布団を引っ張る。しかし、何かに引っかかってい

るのだろうか力一杯引っ張っても、布が突っ張るだけだった。

仕方ない、と無駄な徒労に腹を立てながら、身を起こす。そうして、迷惑の元凶へと手を伸ば

した。が、特にそういったものは見あたらない。疑問に思いながらも、更に身体ごと動かした。

何もないかのような暗闇を見る。


呼吸が止まった。


誰かがが、居る。私の心臓は急速に、動きを速めた。赤い瞳をぎらつかせる何かが、私を睨ん

でいる。ギロリギロリと動く瞳は、酷く貪欲そうで。布団を噛みしめている口は、今にも私を

呑み込んでしまいそうだ。私の全身には、滝のような汗がつたっていた。

恐い。ただ恐い。原始的感情に私は支配されていた。逃げなくては。しかし… …、

その時、私の頭に何か別の感情が湧いた。怒り。何故、私をこんな目に遭わせる?

私が何をしたのだ。

『殺してやる』

剥けた瞳を、敵に定めた。 殺してやる。


地に落ちたような感覚と共に、目を開いた。心臓が騒ぎ立てているのが分かる。

「夢… …?」

思わずそう呟いた。私は暖かい布団の中で、まっすぐに天井を見ている。

こめかみを伝う汗を震える手でぬぐった。なんて酷い夢なんだと、しばし放心した。

 それにしても、酷く気分が悪かった。悪いけれど、水を頂戴させてもらうしよう。


音をたてないように、足を床につけた。隣では、佳奈子が寝ているはずだ。そっと横目で見る。

ハッキリ見えなかったけれど、可愛い寝顔を想像し、私は微笑んだ。

 しかし、次の瞬間、戦慄した。 赤い。佳奈子の目が、赤い。


遠慮も忘れ、大きな音を立てて後ずさった。恐怖のあまり、無様に瞬きをくりかえす。


しかし、目を開けてみると、佳奈子の目は赤いどころか開かれてすらいなかった。

私は、だらしなく口を開け、呆然とする。


強く打った各位が、鈍痛に見舞われた頃。私の中で、雷鳴のような閃きが爆ぜた。

それが何なのか、しばらくはわからなかった。しかし、あやふやだったその輪郭は、次第に確固

めいたものへと変化していく。


嫌な予感。寒くもないのに、悪寒がした。 足先から気持ちの悪い何かが這い上がってくる。

逃げたい。そう思った。

まだ、力の入らぬ足で立ち上がろうとした。しかし、膝が頼りなく折れてしまう。

私は、あせった。何かが、物凄い早さで私に迫ってきていた。


困惑。恐怖。あせり。わけもわからぬまま、逃げたいという本能に従う。

足を無理矢理たたせ、無様な音を立てながら、シンクへと向かった。あちこちにぶつかる体が痛い。


いや、しかしそれより。頭が、頭が痛い。まるで押し潰されているみたいだ。


私が額に掌を重ねた時、不意に高音が鳴り響いた。それは、グワングワンと私の頭を揺さぶる。

荒い呼吸音を立てながら、あたりを見回した。誰一人として目を覚ます者はいない。

ドンッと、私の膝が床で音をたてる。床は、ゆれていた。まるで波のように。


あぁ、ダメだ。私は額に爪を突き立てた。

視界がゆらぐ、あるはずもない色が混じり合い、私の目の前で踊っている。


意識が飛んでしまう。このまま、 だめだ。


「碧!! 」


喉が千切れるほどに叫んだ。周りが、見えない。


「碧! 碧!! 」


もう一度叫んだ。 気持ちの悪い色彩が脳を侵してゆく。私の隙間に、入り込んでゆく。


床に倒れそうになった時、体が引っ張られる感じがした。


そのまま、引っ張られる。つーっつーっと滑るように。転げるように、進む。どこかに、進む。




ハァハァと荒い呼吸音と共に、私は止まった。私の右手は碧の左手とつながっている。

まだ、頭がおかしかった。脳が揺さぶられているようだった。

このまま意識が途絶えやしないかと恐くて仕方がない。


「美月、大丈夫?」


碧は、そう声をかけ、私の手を優しく解いた。その手を、固まった私の肩に優しく乗せる。

私は、上からの圧力に流され、足をたたんだ。すぐ近くに碧の気配を感じ、安心する。


何も言えない私を、碧はただ見ていた。表情はよく見えない。

ぼやける景色の奥、どす黒い電柱が立っていた。ここは路地なのか、と囁くように思う。

とうとう、きてしまったか。諦めるように、怒るように、私は思った。

佳奈子の幼い声が、私の背中を引いていた。あぁ、何処にも行きたくない。


それにしても、私の呼吸音は乱れに乱れていた。

このまま死んでしまうんじゃないかというくらい、不規則で速い。


頭のほうにも、不規則に何かがくる。気を抜いたら、自我が吹っ飛んでしまいそうだ。

恐怖、困惑、不安。他のことを考える余裕はなかった。頭を抱えて、小さくなる。

私はそうして震えていた。細い路地で、不安にうずくまっていた。


突然、ドッという鈍い音が聞こえ、顔をあげた。私のすぐ前で、碧が倒れている。

不穏に心臓が波打った。


更に視界を上にあげる。 


目のない化け物。顔全体を占める口には、鍾乳洞のような牙。


そいつが、涎を垂らして私を見下ろしていた。


ハーッ ハーッ という荒い息づかいが私の耳にまで届く。


嘘。きっと嘘。 目を限界までこじあけて、化け物を凝視した。


妙に光沢のある肌。時折ピクッと動く、口元。 手を伸ばしたら、そこにありそうな質感。


こんなもの、存在するわけがないのだ。これは人だ、人。絶対に殺してだめだ。


かみ合わない、歯の根。


化け物は、ゆっくりと私に顔を近づけた。


生暖かい息が、顔にかかる。 腐臭が鼻をついた。


牙が、頬を撫でた。プッと牙のささる感触がして、鋭い痛みが生まれた。


それでも耐えた。血が滲むほどに唇を噛んで。


すると化け物がほくそ笑んだ気がした。嫌な予感に、身を縮める。


嘘のようにあっけなく、腹にねじこまれる牙。


「え?」


一呼吸置いて、焼けるような痛みが私を襲った。


目にじんわりと涙がにじむ。


これは人ではないの?


いくつもの音を合成したような声をあげ、化け物は笑っていた。


耳が痛い。お腹も痛い。痛い。痛い。痛いよ。


もう、限界だ。 



私は化け物の腹を、えぐった。肉を削ぐように爪を立てる。

世紀末が訪れたかのような悲鳴をあげて、化け物は暴れる。

ぽっかり開いた穴から、噴水のように血が吹き出していた。

化け物は、立ち上がろうと身をよじっている。

私は更に、化け物の腹に手をつきたてた。内臓を掻き回すように、奥深くに手をねじこむ。

顔に血がつくのも構わなかった。

私は泣いていた。殺さなくてはいけないと、考えもせず思った。


痛いのは嫌だった。もう怯えるのも嫌だった。


残る化け物はあと4匹。私に、襲いかかろうとしている。

必死で走った。抉った。傷つけた。もいだ。

激しく揺れる視界だけが今で、思考などはたらかなかった。


4匹の化け物達が倒れ伏す姿を目にしたとき、私はか細い声をあげて泣いた。

人を殺してしまったのだ、と分かっていたからだ。


それにしても、腹が焼けるように痛かった。視界がぐらつくほどの激痛だ。

誠なのか嘘なのか。何がどうなっているのか、さっぱり分からなかった。


とりあえず碧の姿を求めた。頼りない声で、名を呼ぶ。

痛い、痛い。腹からは止め処なく、血が溢れていた。


薄暗さに包まれた路地は、血と死体が広がるばかりで、碧の姿が見あたらない。


それでも名を呼んだ。


すると、暖かい手が、私の肩に置かれた。


碧だ。やっと来てくれた。安堵に満ちた表情で後ろを振り返った。


私の真ん前にいる、顔のない化け物。首の切断部は、ピクピクと引きつり、私の吐き気を誘う。


「ひっ」


反射的に、腹に手を突き刺した。 生暖かい感触。


そうして、私は霧が晴れたかのような感覚に襲われた。


「み づき… …」


聞き覚えのある声にハッとした時。


私の右手は、碧の脇腹へと繋がっていた。


跳ねる、心臓。


これは現実?


汗が、滝のように溢れ出た。


苦しそうに歪む碧の顔。身体を支えられなくなった碧は、私に寄りかかるように倒れた。

ズブズブと鈍い音を立てる接着部。私の腕は血塗られていった。


「いやぁあ… …」


私は地面にへたりこんだ。

味わったことのないほどの絶望。碧の腹から血が湧き出すたび、深まるそれ。


「ごめんなさい、ごめんなさい。 死なないで」


うわずった声で、私は請うた。碧は何も言わず、苦悶の表情を浮かべていた。

額には脂汗が。口元には一筋の血が。足下には嘘のように大きな血だまりが。

取り返しが付かないことを、私が一番わかっていた。


「美月 いいから 右手、抜いて」

 

碧はか弱く私の右手を掴み、自分の身体から引き抜いていった。

とても言葉にできないような生々しい音。今にも叫び出しそうな碧の表情に、私は震えた。

ズルン… … と肉の溶けるような音がして、腕がすべて引き抜かれる。

ぽっかり開いた穴を隠すように、碧は身体を丸めた。


「碧、碧 ごめんなさい ごめんなさい」


碧はそっと顔をあげた。微笑む顔は、蝋のように白く、命にタイムリミットが設けられたのだと悟る。

言葉にできぬ思いを、私は抱えていた。嘆く、嘆くしかなかった。 


「美月 ここ 離れよう」


碧は傷を押さえながら、一人で立ち上がった。私の手を引く力はもう無いのだと知る。


私は碧の後を追うように、立ち上がる。


ふらつく身体に疑問を覚える。そしてすぐ、答えは見つかった。


腹にはナイフで刺されたような、傷跡が刻まれていたのだ。



私達は足を動かす。光に向かう虫のように、死に場所を探している。


もう、逃げてはいないのだ。


転げ落ちるような旅になるだろう。


はじめに、そう予感していた。 


転げ落ちるところまで、落ちた。 もうこれ以上、下などない。


神様。後は、私達に素晴らしい時間をください。


私は、殺人を犯してた挙げ句、一番の恩人も、死の淵に立たせてしまった。


私は、極悪人だろう。


どう言葉にすればいいのか分からない詫びの気持ちを、抽象的な神に捧げる。


抱き留めたいほど愛しい時間を、優しい色彩に彩られた時間を


この両手で抱えることができますように。


私達は夜風のように、暗闇を、静寂の中をそよいだ。


    

そうして私達は、枯れた下水道の中に転がり込んだ。


手を堅く握りあい、横たわる。


包まれるような、この感覚。狭い空間。なんて、死にちかい場所だろうと感嘆した。


横を向けば、碧の顔が見える。碧は穏やかに微笑んでいた。


「もう ごめんはいいんだよ」


碧はいう。私のことを、分かり切っているのか。


やっぱり碧は最高だ。秀麗で、綺麗で、優しくて。


碧なら、きっと幸せになれたのになぁ。そう思うと涙が頬を伝った。


いつの間にか、手先や足先の感覚はなくなり、嗅覚もなくなっていた。


聴覚と視覚も、既にぼんやりしている。


碧の輪郭が次第にぼやけ、心が軋んでいく。


私は手を繋いだまま、碧に体を寄せた。近づく碧の瞳。弱く呼吸をする口。


そういうものを感じていたかった。


仄暗く、闇に落ちてゆく碧の瞳。


それを見ていると、自分の心臓の鼓動が弱まっていることに気付けた。


私は、碧の瞳を見続けていた。おのずと涙が溢れる。湧いて止まらない。想い出が、思いが。


まだ碧と紡いで行きたかった人生。 ごめんね、碧。心の中でひっそり謝った。


「美月」


碧の小さな声が、暗闇に浮かんだ。私の掠れた返事がそれをおいかける。


「僕は、同情なんかで美月と一緒にいたわけじゃないから」


黙って碧の顔を見つめた。碧の瞳には涙が浮かんでいた。


「僕は美月が好きだったんだ」


碧の、涙に濡れた頬に手を置いた。


「私も碧が好きだよ」


私達は、優しく唇をあわせた。


黒く塗りつぶされていく意識。


碧と、同じ時間を抱きしめていたなら。


「私」という存在は、豊かさの中で溶融していった。

佳奈子との会話の部分が、上手く描写できなかったな

と感じています。

主人公の心の動き、この場面はどう魅せたらいいのか。そういうものをうまく書くことができませんでした。

アドバイスを頂けたら幸いです。


拙劣な文章ですが、二人の深いなか。切なさ、愛しさなど。

何か感じていただけたら幸いです。


辛口でもいいので、評価、感想ともに頂けると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリー構成が好きです。 [気になる点] 所々で見られる不思議な改行は、主人公の気持ち表現するためでしょうか?だとしたら、少し読みにくいところもあるので、――や……をうまく使ってみてはど…
2014/08/01 18:54 退会済み
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