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沈黙のエンジニア(サイレント・エンジニア)は、四大元素の回路に、さよならを告げる。  作者: 霧ノシキ


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第10話:熾火(おきび)の真理:真実の火を掴む者


再構築されたWONDERLAND 2.0の深部、『セクタ・イグニッション』。 そこは、リサのいた焦熱の火山とは異なる、静謐で、かつ神々しいまでの「純粋な熱」に満ちた場所だった。1.0時代の遺構である巨大な動力炉が、美しくも恐ろしい火のエネルギーを脈動させている。

「……これが、本物の火。データの熔解じゃない、生命の駆動熱ドライヴそのものね」

カイは圧倒されながらも、その中心部へと浮遊した。 だが、そこには管理者以外の接近を許さない門番――巨大なガーディアンが待ち構えていた。

「ひゃうっ!? 出たー! ちょっと、いきなりレーザーは反則でしょ!」

カイは AERO-FLOWエアロ・フロウ を全開にし、空中で不格好な旋回を見せる。 「あわわわ! 当たる、当たるわよ!」 悲鳴を上げながらも、Mode: ALICE の演算は冷徹にガーディアンの攻撃パターンを解析していた。

「……解析完了。あなたの攻撃、コードが古臭いのよ! デバッグ、開始!」

カイは EXE-Cutorエグゼ・キューター を実体化させ、 AERO-FLOW による超高速機動と Mode: ALICE による精密射撃を同期させる。 「あわわ!」と叫びながら放たれた一撃は、ガーディアンの防御シールドの「最も脆弱な数理的ズレ」を完璧に貫いた。

ガーディアンがデータの粒子となって霧散する。 その跡に残されたのは、揺らめく小さな炎を封じ込めたシアンとくれないのクリスタル――。

『THERMAL-IGNITIONサーマル・イグニッション

カイがそのパックを手に取った瞬間、空間が震えた。 それは、荒々しい爆発ではない。心臓の奥まで温まるような、圧倒的で、それでいて「静かな熱」の波動。

「……温かい。リサ、これが……本当の火なのね」

カイがその真理を掴んだ、その瞬間。

遠く離れた組織『NULL COLLAPSEヌル・コラプス』のメンテナンスルームで、リサの胸が激しくうずいた。 人造の火が、本物の火の波動に共鳴し、呼応している。

「……何、これ。カイ……、君なの……?」

リサは胸を押さえ、虚空を見つめた。二人の運命の糸が、時空を超えて再び、激しく交差し始めていた。

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