あの娘のはなし
SNSで簡単に意見が発せるようになったからこそ、日常生活から発言に気をつけないといけないなと感じますね。
どれだけ短い刃物でも、急所を刺されれば人は簡単に死んでしまう。
言葉も同じで、どれだけ軽い気持ちで言おうが、相手の急所に刺さってしまえば、簡単にその人は死んでしまう。
その日、親友の優花が死んだ。
私の家の近くのマンションに、救急車やパトカーが屯っていた。それを見た時から、嫌な気はしていた。
深夜なのにもかかわらず、私はサンダルを履いて、部屋着のまま、家を飛び出した。
現場に着くと、映画やドラマでしか見たことがない黄色いテープが張られていて、そのテープを乗り越えようとする人が何人かいた。
冷や汗が顬を伝った。
人混みから少し見えたあのローファーは間違いなく、彼女のものだったからだ。見間違えるはずがない。何度も目を擦った。暗いから、よく見えなくて、彼女のものに見えているのではと、現実から目を背けることに必死だった。
だが、間違いなく、そのローファーは彼女のものだった。
すり減った底、少し高い踵、そして月明かりを反射させるローファーの表面。丁寧な性格の彼女は、靴を磨くのを欠かさなかった。
「優花!」
野次馬の人々を掻き分け、最前まで行き、そう叫ぶ。
私の体は警官に抑えられて、私は泣くことしかできなかった。
「優花、優花は生きてますよね。」
泣き叫んで掠れた声でその警官にそう聞く。
「…。」
「どうして何も言わないんですか。生きてますよね。優花、きっと生きてる。」
「ご友人ですか。」
他のお偉いさんのような警官がやってきて私にそう言った。
「はい。小学校からの友達で。優花、生きてますよね。」
「もう亡くなったよ。」
周りの音が一瞬消えた。呼吸もできなくて、声も出なかった。涙が止まらなかった。きっと、涙腺が壊れてしまったのだろう。
「これを。」
その警官は私に封筒を渡した。
「本当はこういうの、よくないんだけどね。」
遺書だった。
「読んでもいいですか。」
喉から震えた声が出る。
「秘密にしてくれるなら。」
封筒を開け、中から一枚の便箋を出す。
やはり涙腺が緩んでいるからだろうか、涙が止まらない。
遺書の内容は短く、そして濃いものだった。
SNSで言われたこと、親に言われたこと、クラスの人に言われたこと、ひとつひとつが確実に彼女の心に刺さっていたそう。耐えきれなくなり、彼女は亡くなってしまった。
「君がいてくれて、優花さんも少しは楽だったんじゃあないかな。」
そう言いながら蹲る私の背中を優しく撫でてくれた。
私も何度かSNS上で傷ついたことがあります。
だからこそ、伝えたいことがあるんです。




